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【マンガ業界Newsまとめ】2023年コミック市場2.5%増6937億円、電子コミックは7.8%増、PwCC調査マンガ・アニメ波及市場6.5兆円、伊藤潤二凱旋! など|3/3-143

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

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2023年コミック市場は6937億円 前年比2.5%増と6年連続成長で過去最大を更新 ~ 出版科学研究所調べ

毎年2月後半の風物詩、出版科学研究所の「出版指標マンスリー・レポート」(旧出版月報)による、前年2023年国内コミック市場規模がレポートされました。サマリー以下です。

2023年マンガ売上
全体:6937億円(前年比2.6%
紙雑誌:467億円(同7.4%
紙コミック:1610億円(同8.2%
電子コミック:4830億円(同7.8%増
 コミック全体に対する電子コミックの売上は約7割


hon.jpより https://hon.jp/news/1.0/0/46520

2023年コミック全体としては2.6%増。紙関連は引き続き下がりつつも、電子コミックがそれを支えた構図は近年と変わらない流れです。

2021年まで、数年間20~30%成長が続いた電子コミックですが、2022年で前年比8.9%増と伸び率半減となりました。この伸び率が今年どうなるかと注目されるところでしたが、今年は7.8%増とギリギリ1割弱で踏みとどまった形です。

出版科学研究所のデータは、取次ルートや出版社、プラットフォームなどからの聞き取りなどでの調査のため、純粋なデジタル化された紙と同じ版型のマンガの現状と言えると思います。

近年伸びていることが指摘されている、海外コミック市場の売上や、出版社の好決算の中で存在感を示すライセンスビジネスの売上はここには含まれていません。重要な指標であることは変りませんが、近年存在感を増やしているIPビジネスという観点では、マンガや関連性の強いラノベを起点としたIPビジネスの指標としては、情報不足ということは否めなくなってきました。

とはいえ、世界でも有数というかダントツの規模感を誇る日本のコミック市場の現状は、踊り場を迎えつつも以前成長中というところで、日本のコミックは歴史的観点で言うと1995年(Wジャンプ発行部数ギネス記録の年)の第1次ピークに対して、第2次ピークの円熟期に入ったと言えるでしょうか。


2020年のマンガ・アニメなどの波及市場規模6.5兆円

PwCコンサルティング、エンタテイメント&メディア業界の国際競争力強化・経営高度化を目指し、産官学連携を推進する専門組織を発足

PwCコンサルティング合同会社は「エンタテイメント&メディア・インダストリー・イニシアチブ」という組織を立上、調査レポート「メディアミックスのパワーと可能性」を発表しました。

レポートによると、2020年のマンガ、アニメ、ゲーム、アプリゲームなど主要4分野の起点となる市場規模3.3兆円に対して、「広告」「イベント」「娯楽用機器」「グッズ」などの周辺産業規模を加算すると、6.5兆円にのぼるとのこと。

PwCコンサルティング社サイト「メディアミックスのパワーと可能性」より
https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/publications/report/media-mix.html

2010年前後に、経済産業省が「コンテンツ産業レポート」として、十数兆円の市場規模を算出、公開しました。(当時は、聖地巡礼を踏まえた旅客産業など、かなり広範に数字が作られていました。算出方法がかなり違いそうです。経産省は「関連産業」でPwCは「波及」ですし)以来、こうした周辺全体を捉えた市場調査はなかなか行われて来ませんでしたが、グローバルでもメディア産業のレポートを行ってきたPwCがこうしたレポートを出した形です。

ひとつ前の記事で、国内コミックの売上規模の話題がありましたが、こちらのレポートではマンガを原作として、アニメやゲーム、アプリなどに展開した市場規模を算出しているということになります。ひとつの有用な指標になると思います。

なお、この取組のリーダーで同社パートナーの森祐治氏は、日本動画協会が発表する「アニメ産業レポート」の中で、長年海外市場パートを担当されてきた方で、本レポートの情報強度はかなり高いものと考えられます。

余談ですが、わたしも20年くらい前にこのPwCコンサルティングという同じ名前の会社にいました。会社には色々あって中の人は100%入れ替わっているのですが。エンタメ分野の調査とは、当時からは考えられないことしてますね。私の専門は、金融ビッグバン下における米国会計基準の日本企業導入で、その中でもほんの一部分の担当でした。もうなんも覚えてませんw


ホラー漫画家・伊藤潤二の大規模個展が世田谷文学館で、『富江』『うずまき』の原画や描き下ろし作品

ということで、マンガ業界の中では「どうも伊藤潤二作品がアメリカでカルト人気らしい」などと良くはわからないまま噂されていたものが、「NetFlixが映像化するらしい!?」となり、とんとんと来まして、ついに凱旋帰国という流れですね。世田谷文学館は、浦沢直樹展はじめラスボス感のある箱です。

これはすごいですよねぇ。カルト人気作品は過去他にもあったと思うのですが、やはり配信プラットフォームが発展してからこっち、こういう早くて大きな展開のダイナミックさ、スピード感が上がったように思います。

次は、西村ツチカ作品とかいいかがでしょうか。すごいと思うのですが。


国内News

賞金総額1億円、テーマが45個とすごいことになっている新人賞を、ヤンジャンが開始しました。ちょっと紐解きます。

出版大手3社の新人賞の中で各社が持っている看板になるものは以下です。

小学館「小学館 新人コミック大賞」対象:全漫画編集部(近年変化あり)
講談社「ちばてつや賞」対象:ヤンマガ&モーニング(青年誌)
集英社「手塚・赤塚賞」対象:週刊少年ジャンプ起点の少年誌第3編集部

ということで、実は集英社ヤングジャンプを起点とした青年誌第4編集部は看板となる銘入り新人賞を持っていませんでした。この括りには、ウルトラジャンプ、グランドジャンプなどの青年誌陣が入ります。(こう見ると少年マガジンも持ってないですね…)

『キングダム』『テラフォーマーズ』『ゴールデンカムイ』『推しの子』など、近年の大ヒットを擁する集英社青年誌陣ですが、今回は将来を見据えて大型新人賞を作ったという経緯かと思います。何か象徴的な賞の名前なんかも検討されたんじゃないでしょうか。ちなみに『テラフォーマーズ』はウルジャンで連載開始し、途中からヤンジャンに移籍するなど連携しています。

環境を俯瞰して見ると、電子コミックが堅調で出版社の枠組みにとらわれず活躍する漫画家いたり、Webtoonブームで多くのクリエイター(漫画家に限らず)が、仕事を得やすくなり、クリエイター探しはどの分野でもひっ迫しています。そうした文脈もあるのだろうなと思います。


メディアドゥグループで、世界最大級のアニメマンガコミュニティ「MyAnimeList」が4億円の増資を行いました。

ちょっとユニークなのは、出版社であるコアミックス社がかなりしっかり出資してそうな座組というところでしょうか。『北斗の拳』『シティーハンター』などで積極的に海外進出している同社方針の延長線上にありそうです。


マッグガーデンが「MAGKAN」をリニューアル、システムにコミチ社のコミチ+を導入しています。

マッグガーデン社は出版社の中でもユニークな関西拠点「関西事業部」を持つ企業です。東京で運営するのが「マグコミ」関西で運営するのが「マグカン」で、今回はこの関西側のサイトがリニューアルしました。ドロンジョ良さそうですね。


music.jpのエムティーアイ社が、コミック.jpの姉妹サービスとして「コミック.jp ポップ」を開始とのこと。『ワタサバ』などDPNブックス作品が読めるようですね。MTI社とDPNブックスの関係性を公にしたリリースは、知る限り初めて見ました。関係性の情報も同時に解禁でしょうか。


グラフなどから、ピッコマとの間で売上に差が出ているようには見えますが、そうはいっても他サービスからは抜きんでて着実に売上を重ねていることがわかりますね。


セクシー田中さん関連

今週、新しい大きな動きはなかったようですが、小学館相賀社長から正式にコメントが出るなどしていました。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

先日『神血の救世主…』で、月刊流通額1.2億円を達成したことを発表したNo9社ですが、今回はカヤック社から1億円調達&業務提携とのこと。カヤックグループの中では「カヤックアキバスタジオ」がWebtoon事業を行っており、その辺りとの連携とのことですね。


株式会社二葉企画は、マンガの版面制作をする製版事業等を行う企業で、Webtoonスタジオというよりは、既存の出版社との取引が多い会社の印象ですね。

その同社がWebtoonの着色を請け負うカラースタジオを設立とのこと。恐らく出版社向けの営業はかなり浸透していると思うのですが、より物量の多そうなWebtoonスタジオへの営業はこれからでしょうから、スタジオの皆さんは問い合わせてみると良いかと思います。


先週「IP開発トータルパッケージ」を開始と、プレスリリースを出していたindent社ですが、早速booklistaSTUDIO作品に関与したようです。具体的に連携している複数の会社名も出ていますね。


Webtoonと横読みマンガとの原作契約の両者において、かなり具体的に踏み込んでつづられています。少し前に事案があったので、そのあたり意識されているようですね。


韓国のWebtoonクリエイターへの支払いでとられる、MG(ミニマムギャランティ)による支払いについて詳しい記事です。日本の横漫画だとMGを使うケースは少なく(一部電子コミックでは、ちらほらありましたが)そのあたり詳しく書かれています。日本の原稿料のようでいてちょっと違います。


最近結果を如実に出し、Webtoonスタジオとして頭角を現しているNo9社ですが、クリエイターの雇用形態が他社とかなり違うという意味でも攻めています。

作品クレジットからは、神血などの原作を担当する専属クリエイターの江藤俊司さんの名前は見ることができるのですが、記事のマイキーさんこそ、国内のプロアシ界では知る人ぞ知る名人で、そのマイキーさんがNo9で専属的に働いているということは、各方面驚かれたところだと思います。これまでの業界では、まず表には出てこないレアキャラで、私も驚きました。

ということで、ちょっと書いてある文章以上にハイコンテキストな読み方も出来てしまう所ですが、なかなか読めないというか聞けない話だと思います。

こういった話は、リアルやSkypeとかDiscordみたいなクローズ空間に限ったものでしたが、clubhouseが出来たあたりから、聞こうと思えば聞けるところに出始めましたね。マイキーさんの話などは、本当にそうそう聞けないようなお話だったと思うのですが。ともかく貴重です。はい。

しかし、記事の遠藤氏や、別事業部の工藤氏も取締役の荒井氏も、みんなだいぶ若い頃から知ってはいますが、すごいことになってますね、No9。


海外News

むかし、クランチロールの無料会員が1000万人、有料会員が100万に届くかどうかという頃「北中南米のオタクの人数は1000万人で限界」じゃないかみたいな話を聞いたことがあったんですが、NetFlixも勘定に入れると、もうそういうレベルはとっくに突破している感があります。

「米Z世代はハリウッド映画よりアニメを観ている? コロナ禍、リアクション動画ブームで人気加速」という見出しも含め、興味深い記事です、アニメはどうなっていくんでしょうね。


昔から、なんの前触れもなく唐突にある地域のレポートを発表し、それがまたちゃんと良く出来ているという、良いんだか悪いんだかわからないことで定評を得ていたJETROのランダムレポートですが、今回は韓国2強PFについてです。

相変わらず良く書けていますが、JETROにしてはライトな内容です。しかし数字の引き方などが流石のまとまり具合なので、韓国のWebtoon情勢を説明する際に、有数の引用元になる良い記事じゃないかなと思いました。


同じくJETROなのですが「トルコは米国に次ぐ世界2位のドラマ輸出国といわれるコンテンツ大国」という一文から、講談社のマンガ原作ドラマが作られたことに触れていますが、これです。これがJETROの価値ある所です。私はトルコがそんなにエンタメ重要国だということを全然知りませんでした。トルコと日本のIPホルダーは仲良くすべきですね。


漫画というより、お国のバンドデシネによる、美術工芸品のように美麗な作品を尊ぶお国柄のフランスにおいて、スナック的消費感の電子マンガは売れないだろうということが業界筋の定見でした。

ここは伸びている見解と、フランス人は本を紙で所有したいという旧態な意見と、両面散見されるようになったのですが、本記事では後者のようですね。Ki-oon社はフランス有数のコミック出版社なので、むべなるかな。


コミックシーモアのソルマーレが北米で運営する「MangaPlaza」が1万$(約150万円)の記念セールとのこと。日本での規模感を考えると、まだまだ実験中というところでしょうか。

興味深いのはランキングで、TL、BLが人気みたいですね。わかるような気もします。


*: ここから海外記事を多く紹介します。自動翻訳などご活用ください。

タイトル訳:2024 年 1 月 CIRCANA BOOKSCAN - 大人および子供向けグラフィック ノベル トップ 20

アニメが1月から放映された「俺だけレベルアップな件」ですが、北米でのコミック単行本の売上が上がっているようです。これはYEN PRESS(KADOKAWAの米国グループ企業)ですので、日本でもKADOKAWAから発刊されているカラー単行本のことでしょう。

ICv2記事より

チェンソーマン、呪術に続いて俺レベ各巻売れてるみたいです。
結果が出てきたようですが、これを見るとWebtoon映像の海外進出時は、紙コミックの翻訳版が間に合ってる必要があるということになりますかねぇ。それはなかなか重い前提やもですね。


タイトル訳:コミック業界が逆風に立ち向かい、ComicsPRO 2024 で団結

「(北米の)グラフィック ノベルの売上は減少しており、強力なマンガですら減少傾向にあります。消費者が高齢化し死に絶えているため、」という一文がありました。

文脈的には、日本の漫画というよりはマーベル/DCを中心としたアメコミを指しているようです。米国アメコミ界隈の動きとして、興味深い記事でした。


タイトル訳:マーベルコミックがMCUに登場するたびに

MCUとは「マーベル・シネマティック・ユニバース」のことで、最近主流となってきたアヴェンジャーズ的なクロスオーバー的作品の、主に映像作品を指すようですね。

MCUが映像でヒットしたのは良いのだけど、原作のアメコミの立ち位置がヒーローたちのおまけ(イースターエッグ)話のようになってしまった。というところでしょうか。ありそうな話です。


タイトル訳:「ゲートキーピングは関与しない」: ノーフォーク オリジナル インディー コミック エキスポがアートを主流に

「アメリカの俺たち」みたいな方々が、頼もしく話しています。逆にいうと、日本はなにをするにしてもまだまだ自由なんだろうなと思いました。


libroさんの北米まとめです。
先のYenPressの詳報や、俺レベの制作ドキュメンタリー、YOASOBIの米国展開など、興味深いお話し多しです。ピックアップしてない記事沢山ありますので、こちらもぜひ。


AI・画像生成関連

日本のエトラ社、GAZAI社、韓国のAIベンチャー Brain Venturesと、Webtoon関連でAI事業進出のニュースが出ています。韓国BV社はもう韓国でかなり実績がある会社みたいですね。

何と申しますか、実務寄りのAI事業も増えてきましたね。


鈴木みそさんのAIマンガです。面白かったです。私のx(旧ツイッター)などのイラストもみそさんです。


パブコメ結果発表ですね。約2.5万件コメントがあったとか。著作権者を不当に侵害しない方向性で声明が出ました。そうなりますね。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

3月コミック、原作ラノベフェア@LINEマンガ

FLOS COMIC 6周年フェア@LINEマンガ

Webtoonようのアセットのセールです。珍しい


記事のみ紹介


告知関連

スペイン語圏で大人気の『ニワトリ・ファイター』複製原画展@渋谷
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主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
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今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


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