見出し画像

【マンガ業界Newsまとめ】累計1400万部「サバイバルシリーズ」アニメ化へ、人はなぜリツイートするのか? など|2/18-141

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

――― 


学習マンガ「科学漫画サバイバル」シリーズがTVアニメ化決定

シリーズ1400万部超えという、学習マンガ史上驚異的なヒットを積み重ねているサバイバルシリーズのテレビアニメ化です。朝日新聞出版刊のこのシリーズは、韓国原作で、シリーズ刊行15周年を迎えるとのことですが、この機にアニメ化されるようです。

映像化前から、絶大なキッズ認知を持ってるこの作品、出来次第では長く愛されるキッズ向け長寿アニメになるんじゃないでしょうか。

なお、この「科学漫画サバイバルシリーズ」が、どのように売れて来たかという点について、以下昨年11月のIMARTセッションにて、同作担当者の他、小学館「歴史探偵コナンシリーズ」KADOKAWA「角川まんが学習シリーズ歴史編集部」などの担当者も集まり詳しくディスカッションしてもらいました。

 *: 筆者の関わるイベントです。
 **: イベントの配信視聴は有料です。ただし、サイト下部にある協賛企業・団体(日本漫画家協会・日本アニメーター・演出協会含む)の方は無料で視聴可能です。自社内での視聴のご案内をご確認いただくか、どうしても判らない場合は、IMARTまで視聴方法をお問合せ下さい。会社名のドメインが入ったアドレスでお問い合わせいただければ視聴方法(団体所属の方には、団体でのご案内)をご案内します。

それにしても、シリーズ1400万部は凄いですね。日本以外の国でも支持を得ているようで、世界ではもっと巨大なシリーズとなっているようです。そのあたりも、IMARTで詳しく語っていただいています。


“なぜ人はリツイートするのか?” 旧Twitter社直伝! バズる投稿の仕組みを分析した資料が発掘されてXで話題に

(これまでTwitter上でリツイートと言っていたものは、現在はリポストと変わったと思うのですが、ここではレポートの原文ママ記述します。)

毎日2億人以上が利用し、その中でも日本は世界2位の利用規模があるというx(旧Twitter)。中でも1リツイート以上あったツイートの中で、1300RTを超えるものは、0.1%なのだそうです。

そんな0.1%の壁を超えるために一番大切なのは「熱量」とのこと、その熱量の6つの形「直観」「知識」「主張」「納得」「声援」「欲求」の6つを、更に16の感情で切り分けで分析しています。

1/1000ですか。私は十万程ツイートしてるはずですが、1000を超えたのは多分2‐3回程度だったように記憶しています。とはいえ、業界ネタを基盤とする私のTwitterは、あまり一般向けの所作になっていないということなんでしょうね。

その他、画像や映像の効果、ハッシュタグ、拡散スピードや時間帯、フォロワー数についてなど、様々な分析をした力作の資料でした。


「セクシー田中さん」関連

「セクシー田中さん」について日テレが声明 特別調査チームを設置へ 小学館なども協力

公式の動きとしては、日テレの特別調査チーム設置と、そこに小学館の協力も入るとのことで、リリースされました。

周辺の記事

弁護士ドットコム記事では、放送倫理・番組向上機構(BPO)への意見が多いことが触れられています。今回の件が、かなり大きくなっている証左ですね。先の日テレの特別調査チームは、社内組成組織のようにも見えるので、第3者性が低いのではというSNSでの声もありました。

BPO案件となると、このあたりの調査チーム報告内容と、外部からの指摘について、しっかりしたやり取りが出て来るのではというところです。


漫画家まわりでも派生した話題に

里中満智子先生、森川ジョージ先生など、日本漫画家協会の幹部の皆さん含め、お話しされています。全体で3時間と長いです。1時間20分台あたりの、森川先生、里中先生の話は、必見だなと思います。

皆さん、はっきりしっかりお考えやメッセージをだしていらっしゃいますが、文脈をしっかり読み取っていただきたいので、私としては切り抜いて書かないことにします。ご覧ください。特に1時間20分あたり以降です。

新條先生の一連のお話は、新條先生としてのご主張そのものは、ご指摘はその通りの部分もあると思います。後に続いた紅林さんと矢野さんのnoteも秀逸でした。こういうことが無ければ出てこなかったものでしょう。

ただ「搾取」「悪しき慣習」といった強い表現に、強い反発がありました。紙のコミックに限らないデジタルの現場にもいる見えにくい裏方さんたちが、私のSNSのTLにはおり、一様に悲しみを持って新條先生の主張を受け止めていました。意図しているのなら止めはしませんが、関わる人が全て見えてない構造を切れば、傷つく人は必ず存在し、対立を煽ります。

デジタル時代の新しいプレイヤーと出版社では、持ってる機能が違うため、料率も、実務内容も、版権まわりへの対応の練度や体制も、ブランド力も、新人作家へどれだけ投資できるかなど、さまざまに変わります。どちらの実務もある程度知る身としては、これは優劣の問題ではなく、単に著者側の選択の問題でしかないと思います。

私がこの業界に入って最初の仕事はトキワ荘プロジェクトという漫画家支援の仕事でした。そのため、ビジネスの場でも普段から基本的にクリエイター寄りでものを考える癖がついています。そのうえ、当時新條先生が出た本も自分の企画で作りました。お世話にもなっています。(7年前に離職)

ですので、常ならあまりこうしたことには触れないのですが、今回のこの件に限って、今このタイミングに、そうした強い言葉は、ただただ危ないと感じています。指摘内容そのものは良くて、言い方の問題です。これが、どう危ないかは、むしろ、先にご紹介した動画で、森川先生や里中先生が、万感込めて話してくださっています。

ネットは扇情的になりがちで、燃料が投下されると巨大な集団ヒステリーに繋がることを、我々はもう十分に経験し、痛ましいことがあったばかりだと思います。意図されてないこととはいえ、これをこの冷めやらぬ渦中でまた繰り返すことは、どうかお控えいただけますようにと切に願います。


国内News

シーモアにて、芳文社の新レーベルスタートです。
芳文社の既存レーベルとは、ちょっと違う方向性ですので、女性に強いシーモアでの企画となったというところでしょうか。


マンガBANGのAmaziaは、2024年1Qで損失計上をしています。昨年10月に、Web版マンガBANG!を「マンガBANGブックス」としてリニューアルしており、その投資タイミングなのかなと推測します。


この注目のされ方、増えましたね。
韓国Webtoonやその派生が世界中でローカル局も含めて映像化されたという、ビジネス環境もあると思います。これは、Webtoon効果にどっちかというと乗っかったタイミングですね。日本の漫画原作が面白いということ自体は、昔から自明だったとは思いますが。


日販×エブリスタの取組。
エブリスタは現在メディアドゥグループの企業で、そのメディアドゥはNFT関連ビジネスFanTopなどでトーハンと連携しています。


少年誌・少女誌の編集者とは相いれない発想とは思いますが、青年誌以上の年齢帯だと「専門性がありSNSでも存在感がある編集者」みたいな人がいても良いかなと思いはします。

「食」「ファッション」「生きづらさ」みたいな生活ジャンルから「なろう系」「ミリオタ」など作風関連まで色々。メイドなら負けないとかもありかも知れない。作家さんとの出会い方が難しくなるやもですが。


この、作家の作風を見て合ってる媒体を紹介する東西さんが以前からやられているサービス、なかなか真似できないと思うのですが、今回「マンガ進路相談室フロン」ということで、サイトと新サービスとして立ち上げられたとのこと。

東西さんは、本当に沢山新しい漫画を読まれているので、新人や中堅ベテランも含めて、参考になると思います。


去年は激減した東京都の不健全図書指定。2か月連続で指定ありとのこと。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

ウェイブ社のstudio73が、Webtoonレーベル「フラオト」をスタート、これが『中華風ロマンスファンタジー』とのことで独特のテイストを持っています。海外に注力する作品ということなのでしょうか。


株式会社 読売広告社による地元の魅力を発信するプログラム「JIMOTOON(ジモトゥーン)」提供開始とのこと。海外のWebtoonだと、LGBTQの問題発信とか、戦争経験者のPTSDの治療的な意味であったり、あまり商業的ではない文脈でWebtoonが使われていたりして、こういう創作のみではない試みは面白いと思うのですね。


海外News

*: 外国語記事を紹介するため、本文は自動翻訳などご活用ください。

タイトル訳:2022年のウェブ漫画産業収入が1兆8290億ウォンに達し、新記録を樹立【韓国-韓国文化体育観光部】

2022年のマンガ(Webtoon)産業収益が、1兆8290億ウォン(約1829億円)で、前年比16.8%増とのこと。同時に、実際のWebtoonのビジネスプレーヤーが国に求めるサポートが列記されており、

・通訳と翻訳のサポート(53.9%)
・海外のバイヤーとディストリビューターとのネットワークの構築(46.7%)
・国際市場調査の実施と市場情報の提供であった。 (41.8%)
・海外のマーケティング専門家の研修とサポート (38.2%)

とのこと。数字もすごいですが、要求もなるほどですねと。

(今週発見した記事ですが、プレスリリースは1/18のようです)


NAVERが今年夏に米国で上場するため、新規株式公開の引受先、いわゆる主幹事証券をゴールドマンサックスと、モルガンスタンレーにするとのこと。米国上場ですから、証券会社も米国でということは妥当ですね。

その際、時価総額で30億~40億ドル(約4500億~6000億円)の評価額で最大5億ドル(750億円)の資金調達を目指す可能性。とあります。この規模感で言うと、ピッコマが2021年に調達した600億円というのは、物凄く大きかったと言えますね。こうしたものは、ミニマムで言いますので、もう少し大きい動きになるかもしれません。


カカオは、売上が14%増、営業利益が11%減で、特に利益面でWeb小説配信や音楽配信の業績不振から減損発生での赤字転落とのこと。その中で、Webtoonなどのコンテンツ部門は20%成長とのこと。


タイトル訳:北米での可能性を引き出すことを目指すタパス、第一回ロマンス Web 小説コンテストの受賞者を発表

カカオも、NAVER同様クリエイター集めに積極的です。


最近、韓国でも目立ってきた海賊版対策ですが、大きな違法サイトのサービス停止など、きっちり追い込んでいるみたいですね。


タイは日本から見ても漫画ファンが多く、わけてもBLに強いため、タイで作られた原作のNetflix映像なども出ていますね。そんな中、韓国Webtoonの利用率が半分に達するとのこと。タイでのローカルドラマ化も増えてるとのこと。


先日インドネシア企業との提携を発表したKADOKAWAですが、その売り方は紙とのこと。インドネシアの2億人を超える人口に期待するとのこと。


【筆者メモ】:今週は、英語ニュースのほとんどが韓国系Webtoonのニュースでした。ところで、俺だけレベルアップのアニメの評判がずっと気になっており、ニュースは探すのですが、評判的なものはありませんでした。

英語圏最大のマンガ・アニメのコミュニティサイトMyAnimeListによると、『俺だけレベルアップな件(Solo Leveling)』のスコアが8.64(2/18時点)

色んなランキングがある中で、放映中アニメのランキングでは、トップをフリーレンとして、7番目という評価のようですね。


AI・画像生成関連

AIで作品をということですと、先日『ブラックジャック』が復活して話題になりましたが、今度は松本零士作品ですね。999に出てたクローンがやっぱり思い出されますねぇ。

野沢雅子さんの出てる動画、ちょっとくるものがあります。


DLSite上で、AI生成を利用したコーナーを新設とのこと。落としどころなのでしょうね。この形増えそうです。


Bookliveのクリエイター向け総合プラットフォームサービス「Xfolio」では、ざっくり、AIなどで生成されたコンテンツの投稿・販売を禁止とのこと。


色々と書いてあり勉強になるのですが、これからなんだとも改めて思います。


世界で一番普及しているであろうペイントソフト、MicroSoftペイントへのAI導入ですが、名前が決まって「Cocreator」とのこと。日本語版は、まだみたいですね。


今週ものすごく話題になったのが、このAI生成による動画生成「Sora」ですね。大量の信じられないクオリティのAI動画が投稿されました。

ゲームのプレイ動画も作られちゃうんですね。そのうち、実況も作られたりして。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

長編読切大バズから、単行本化、映像化と、2020年代ならではの電撃的な展開でしたね。すごい仕掛けでした。ヒット実績のある作家でなくても、こうしたことがあれば面白いのですが、新人が長編読切を描こうとする創作活動が泥沼になりがちなので、やっぱり実績のある作家のほうが良いのかどうか。


記事のみ紹介

タイトル訳:韓国のウェブトゥーン業界が AI イノベーションを採用


告知関連

「映画を早送りで見る人たち」と同じ、光文社新書より、共同通信記者の小川悠介氏によるWebtoon関連の本が出ています。現場のインタビューが多いので「2023年時点でWebtoonの現場がどう思って仕事してたか?」という意味で、良いまとめになっていると思います。記事もありました。


『縦スクロール漫画の教科書 プロに学ぶ構図・着彩・演出の基本&上達テクニック』発売。
著者は編プロのサイドランチ社さん。
本を描くのは、作家探索に有効な施策と思われ。


―――

主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
マガジンx(旧Twitter)のフォローしていただくと、更新情報が届きますので、よろしくお願いします。

今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


この記事が参加している募集

業界あるある

Twitterもやってます!フォロー、よろしくお願いします! https://twitter.com/t_kikuchi