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【マンガ業界Newsまとめ】音羽と一ツ橋が新人漫画獲得でついにコラボ など|9/1-016

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。趣味でやっているもので、SNSでシェアや感想いただけると、とても嬉しいです!

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DAYS NEOは、漫画編集者と作家がオンラインで出会うことが出来るマンガ投稿サイトです。

これまで、講談社の全編集部の他、同じ講談社グループの一迅社や、電子書店のBookliveなどが参加していましたが、今回は白泉社のヤングアニマル編集部が参加しました。

これは、音羽グループ(講談社を中心に護国寺周辺に分布)の施策に対して、一ツ橋グループ(小学館を筆頭に、集英社、白泉社など神保町を中心に分布)の出版社が乗るという形で、グループの壁を超える大きな動きと言えます。

もともと、ジャンプとマガジンの協力など、グループを超えた協力も過去に多々ありますが、これは新人漫画家獲得という重要かつ定常的に継続する活動による取組ですので、元々のサイトの趣旨もあいまって、大きな動きと言えましょう。今後の広がりに期待です。

なお、このDAYS NEOを運営しているのは、講談社のクリエイターズラボという部隊です。NEOの他には、出版社がゲーム作りに取り組むことで話題となった、ゲームクリエイターズラボや、漫画家の健康管理のための仕組みを構築するなど、クリエイター支援の取組を専門で行っています。


同じく新人獲得の取組として注目を集めたのが、ジャンプ+編集部林士平氏がツイートしたことから話題となった、マンガのネーム制作Webサービス「WorldMaker」です。

これは、頭の中にある物語、つまり脚本となる文章を入力すると、マンガそのものではなく、マンガの原型となる「ネーム」が出来上がるというものです。

この内容そのものはかなり画期的なもので、自分なりに考えたことをまとめてツイートしてみました。

このサービスは、ツールとしてはマンガを作るためにあるものですが、これに紐づいた新人賞の存在など、新人漫画家獲得の方法のひとつにもなっています。

電子コミックの台頭でマンガの販売の形は大きく変化していきましたが、制作の方法論や新人獲得の手法なども、こうして進化していっているのが、正に今という2つのニュースでした。


こちらは飯田一史さんによる、講談社の「週刊少年マガジン」と「アフタヌーン」が共催している「漫画脚本大賞」の記事です。第5回の応募には1656本応募とのことですが、通常100本も応募があれば十分なマンガ賞で桁違いの数を集めています。

こちらも漫画原作者を集め、デビューに向けて育成することに主眼を置いた賞で、半端な応募を抑制するために企画書を用いるなど、ユニークな取り組みを紹介しています。


先の「WorldMaker」にも通じるのですが、総じて漫画原作者を沢山育てようとしている動きが増えてきているようです。これは良い原作を手に入れるということと同義で、いわゆるなろう系の小説の原作を獲得してコミカライズしていく行為も、広く言えば同義です。

まず、大きな狙いとして、集英社林さんや講談社土屋さんなども話している通り、面白い作品をつくるために、多くの作家に作品を作ってもらうことが何よりの目的の入口になるかと思います。

そして、こうして自分たちの取組で、いわゆる生え抜きの作家と作った作品は、自社でコントロールできる版権ということで「自社IP」と呼ばれます。これは企業にとって大きな利益を生み出す可能性が、他所から原作を得て制作した作品に比べると、企業としては取り回しがしやすく、また収益性も上がります。

いずれにせよ、こうした新人発掘や育成の取組は、豊潤なるマンガ市場の基礎となる取組であり、好況なマンガ業界の次への布石として、機能していくことを期待したいところです。


こちらは、内容というより書き手の方が珍しいので取り上げさせていただきました。電子コミックサイト「マンガ王国」を運営するビーグリー社のCEO吉田仁平さんによる、縦読みマンガについての記事です。

ビーグリー社と言えば、ガラケー時代から「まんが王国」を運営し、bbmf、menuと社名を変えながらも、一貫して電子書籍事業を続けている企業です。

長く続くことから、元ビーグリー社のスタッフが各所で活躍しています。その横のつながりは膨大なものになっており、電子コミック界隈に強い影響力を持っていると、雀荘で聞いたことがあります。

さて、記事としては縦読みマンガと横読みマンガについて、成り立ちやその違いなど、平易でわかりやすい文章で書かれています。そして最後に『THE TOKIWA』という日本テレビ系で番組での、新人漫画家発掘ドキュメンタリーを紹介されています。

これは違うようですが、他にも芸能人が原作者になっての漫画制作など、TV番組とのコラボがここ数年増えています。こうした、作品作りそのものがショーとなる、プロセスエコノミー的なものも増えてきているようです。


絶好調ジャンプ+編集長の細野さんの記事です。特に驚いたのがこちらのくだりです。

「SPY×FAMILYや怪獣8号、ダンダダンといった人気作の更新日は1日の閲覧数がその作品だけで100万を超え、アプリ利用者が増えるが、他の日はそこまでいかない。全ての曜日に閲覧数が100万を超えるヒット作を連載することを今後の目標にしている。現在は人気の漫画を優先的に表示するUIを採用しているが、ここも改善することでヒットを生み出す余地があるかもしれないと研究している」

前半ですが、つまり3作品は連載更新のたびに100万PVを記録しているということが毎週続いているということですね。これは100万部超えの雑誌と何ら変わらない力ですね。

現在、紙の漫画週刊誌で100万部を超えるものは、週刊少年ジャンプただ1誌なのですが、そこにこのジャンプ+の力も加わるわけで、その実力はやはり凄いものがあります。

後半のUIの部分も興味深く、これはいわゆる雑誌の持つ「新しい作品と出会う」機能を強化するということなのでしょう。

今は、SNSなどでバズった作品が拡散するという現象が、もはや日常的に行われていますが、こうしたアプリがより強くなり、いわゆる回遊が起きて新作が拡散する仕組みが出来れば、これは新しい雑誌の形と言えるのではないでしょうか。


急に毛色の変わった話題ですが、私が注目している動きの一つがプレスリリースになっていたのでご紹介します。

まず、このリリース内容を要約すると、

違法アップロードされた同人誌作家の作品に関して、同人誌の作品をデジタル販売するエイシス社が、累計680万件の削除要請をしました。

というものになります。これを紐解いていきます。

まず、エイシス社は「DLSite」というアダルト作品を中心としたデジタルコンテンツ販売サイトを運営しています。そして、このサービスに作品を提供するクリエイターは、いわゆる同人作家です。

その多くは個人クリエイターで、例えば自分の作品が違法にアップロードされていたとしても、これを訴え、削除したりするなどの作業に時間を割くことが難しい方々です。

また、海外の海賊版サイトに掲載されるケースなどの場合、そもそもそれに気づくことすら難しいというケースもあります。

そして、もう一つ。同人作品と言えば2次創作も多く見られます。同人誌のデジタル化の流れで、DLSiteなどでもオリジナル作品の比率が以前にくらべると増えているのですが、それでも2次創作作品は並列して販売されています。

この2次創作の同人作品が違法アップロードされている場合、元ネタになってるいわば「1次」に当たる作品の著作権は、もちろん同人作家にありません。同人作家はあくまで、「1次」のネタを元にパロディとして同人作品を作ったかたちです。

しかし、作品を無断掲載された同人作家は、これを止めることが出来る判例が出ています。

ということで、この無断転載されている同人作品に対して、削除や検索除外という働きかけをすることは可能と考えられています。

ここでは、エイシス社がこれまで、主に2つの事をしてきたとあります。

一つは、GoogleへのDMCA申請です。これは作品AをGoogleで検索した際、その作品の違法アップロード先が検索結果に表示されないようにするというものです。DMCA take downなんて言い方もします。なにか強そうでカッコいいです。

もう一つは、違法アップロードサイトへの削除要請です。これは、文字通り違法アップロードをしているサイトに警告を発するのですが、その際に、その連絡を放置した場合なんらかの法的措置などを行うと添えるのが定型です。法的根拠と強気が必要なアクションです。誰でも気軽に出来るものではありません。

私も以前こうした事案に関わったのですが、そうした警告がしっかり入っている場合、案外削除要請を受け入れる海賊サイト運営者も多いです。無法者ではあるが、力は受け入れるということですね。正に海賊です。マンガ的な意味で。(あとその時思ったのは、海賊サイト運営者も案外ちゃんと問合せメールを読んでるだなと。無視するのが普通と思い込んでました)

また、このサービスは同じ同人系のデジタル販売サービスである、FANZA同人でも行われています。こちらは説明の時点でFANZA専売(その作品をFANZA内でしか販売しないこと)の作品に限り、削除要請支援を行っていると書いていますね。

この両社のサービスそのものは、新しいものではないのですが、このサービスを企業が行う目的は、クリエイター囲い込みです。そのためのクリエイター向けのサービスということですね。ただ、こうした現場で良く見られることですが、運営されてる方の中には、純粋に自分たちが好きな・お世話になってるクリエイターの為にと考えて行動している人もいると思います。

なお、ここでは同人作品周りの事例を紹介しましたが、商業作品に関しては、出版社などで多くの削除申請を行ってもいます。その辺りは以下の動画に詳しいです。

本日の記事は、多くが作家を集める施策として行われているものでしたが、そうした創作に関わる施策の他にも、作家の健康管理や、この海賊版削除要請など、出版社やプラットフォームは、作家を集めるために多くの取組をしている。ということをまとめたご紹介でございました。


気のせいかもしれませんが、クリエイター向け施策、直言すると「漫画家を集める施策」が増えているような気がします。もともと出版社はそうした活動を常時行っているのですが、少なくともニュースの数は増えてます。

電子コミック周りの好景気をうけて、次の一手としても直近課題としても、良い作家が媒体に集まるよう各社はより努力をし、投資をしていく流れですね。

会計的観点でビジネスのバリューチェーンを書くと、一番大きい単位は、
購買→製造→販売
となります。

新人発掘は「購買」、つまり仕入れに当たる作業なのですが、そう考えても極めて重要な工程だと考えます。

それにしても、トップにさせていただいたDAYS NEOへの白泉社の参加もすごい(私の目線で見ると、とても良い一手であり手順)ですし、ジャンプ+林さんのWorldMakerは、ほんとに世界を創ってしまいそうで、イノベーティブです。

好況におごらず次々と新しい手が出てくるというのは、業界の先も楽しみだなと思います。みんなほんとに、緩まないでどんどん手を打っています。

それだけ、売れ行き云々とは関係なく、作品を創るという行動は人を突き動かすんだろうなと改めて思います。そうした方たちの積み重ねが、沢山の面白い作品の存在に繋がり、今のマンガ業界の好況となってきたのでしょう。

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