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【マンガ業界Newsまとめ】2022年の電子コミック8.9%増、出版市場全体2.6%減。各社の米国市場進出 など|1/29-87

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。基本毎週日曜夜更新です。

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2022年紙+電子出版市場は1兆6305億円で前年比2.6%減、コロナ前の2019年比では5.7%増 ~ 出版科学研究所調べ

毎年1月25日のお約束、出版科学研究所調べの前年出版市場推定販売金額が出ました。

2022年は巣篭り需要が2021年比で落ち着いてきたタイミングで、紙と電子をトータルした金額は前年比減の2.6%の1兆6305億円でした。紙は6.5%減、電子は7.5%増となります。

コミックスの詳細は2月25日のコミックス推定販売額発表を待ちますが、紙雑誌、書籍に加え、紙コミックスも2桁減とのこと。

電子出版全体では、前年比7.5%増で、同推定販売額初の5000億円台に乗りました。雑誌、文字ものは落ち込む中、電子コミックが8.9%増の4479億円となっており、項目別で言うと唯一の増加を見せ、電子出版全体を底上げしました。

ここ数年おおよそ20%成長を続けてきた電子コミックですが、伸び率そのものは落ち着きの兆しはあるものの、出版市況全体が巣篭り特需の翌年の結果という煽りを受けている見方もあります。

また、以下の記事にも続くようなマンガ・Webtoon両面で海外向けに販売を目指す動きや、出版社のライセンス収入重視へのシフト、マンガ雑誌のWebシフトなど、マンガを取り巻く売上の指標そのものが変化している過渡期にあり、単純に国内のみの漫画の売上の動きだけに注視せず、冷静に見極めていく必要のある数字かなとも思います。


米国市場に進出する各社の動き

アムタス・めちゃコミックの「Comicle」

大手電子コミックプラットフォーム「めちゃコミック」のアムタス社が、米国向けコミックアプリ「Comicle」のリリースを発表しています。

国内プラットフォーム企業の海外進出と言うことで言うと、先行して「BOOK☆WALKER」「コミックシーモア」アプリ提供ベンダーの「Link-U」の他にも、各社がオリジナルコミックを携えつつ展開するなどで目立ってきています。北米では、紙のコミック売上も伸びていますが、電子コミックの市場として国内企業による北米進出が強化・整備されて行っています。

ソラジマ「SORACOMI」も北米展開

Webtoonスタジオとして作品制作を積極化している同社ですが、自社のオリジナル漫画アプリ「SORACOMI」を2023年1月にリリースしています。自社オリジナル作品を自社翻訳で直接展開しているとのこと。

2024年には、インドネシア・フランス・スペインなど多言語展開を予定しているとのこと。

先行する韓国大手、ネイバー、カカオも鎬を削る

先行する韓国大手2社も北米でユーザー数を拡大しています。すでに、MAU(月間アクティブユーザー数)で、1000万に迫るサービスもあり、北米におけるWebtoonの認知向上、ユーザー数拡大を進めています。

韓国プラットフォームの海外進出については、日本国内における関係性から、この展開によって日本国内で結果を出した国産Webtoonがこの動きを通じて売上に繋がっていくことも、これから起きていく未来として想定されています。この辺り、海外勢PFと国産PF双方の展開により、一筋縄ではいかない中でも市場開拓に向かって行く流れになりつつあるように見えます。


ウェブトゥーン制作の最前線第2節:フーム/ARC STUDIO編開始。前編:ヒットするウェブトゥーン作りに必要なものとは?公開

コミチ社で取り組んでいる「ウェブトゥーン制作の最前線」コーナーに最新の第2節前編を更新しました。第2節は『月光彫刻師』や『テイミングマスター』などで、黎明期のヒット作品を作ったARC STUDIOのイ・ドギョン氏からお話をうかがっています。

前編では序段として、マンガとWebtoonの違いについて語っていただいています。中編、後編と続きますが、1週ごとに3本公開予定です。

同じ飯田一史さんライティングで、現代ビジネスにて韓国ウェブトゥーンの実情関連の記事を前後編で出されています。韓国コンテンツ振興院による「ウェブトゥーン企業実態報告書」「ウェブトゥーン作家実態調査」とのこと。

前後編一連の記事となっておりまして、後編最後までしっかり読むと、韓国の実情についてより解像度が上がる構成となっております。


国内News

少し前の記事なのですが、今週みつけたので良い記事なのでご紹介です。
TBSラジオで昨年9月『正反対な君と僕』を連載中で、昨年『氷の城壁』の連載を終了した阿賀沢紅茶さんのインタビューが、一つ目の記事では文章に、二つ目はラジオのアーカイブとして残っていました。

話題にもなっている新連載『正反対な君と僕』(ジャンプ+連載、横マンガ)とともに『氷の城壁』(マンガMee等連載、Webtoon)についても書かれています。

Webtoonでヒット作を出したのちに、横マンガに戻りつつも、その違いについて言及されており、とても興味深い内容になっています。関係者ご一読を。


エイベックスとジャンププラスのコラボ。「PROJECT COMUC」とは「物語と絵」を繋ぐプロジェクトとのこと。


こうした記事で、紙の雑誌部数減をジャンルの低迷というような説明をする場合、現在ほとんどのマンガ・Webtoonのジャンルにおいて紙雑誌の部数は売上とは相関しないことも多いかと思います。ただ、この記事で一理あるのは、確かに「少女漫画」のジャンルにおいては、読者が幼年女子に絞られ、紙雑誌部数がジャンルに影響を与えているのは確かかなと思いました。

かつて「少年漫画」とジャンルされたものは、年齢も性別も大きく飛び越えて現在広くヒットしています。他方「少女漫画」の在り方は、デジタル化後どうするべきかは大きな課題ですね。
ですが、少女漫画作家さんが別ジャンルに移籍して食べていけているという話自体は、良いんじゃないでしょうかとは思います。


コミケが50周年に向けて、少しずつ一日の入場者数上限を上げて行く努力をしていることを、共同代表の市川孝一さんがインタビューにこたえるかたちです。コツコツやられていることが読み取れます。

コミケは最早、国内有数のイベントとして、同人誌という枠組みを超えて注目されておりますしね。大変なご苦労であろうと推察します。


表題だけではなかなかピンと来ないリリースではありますが、
「fantia」(とらのあな)「PixivFANBOX」(pixiv)「PATREON」(北米)などの、ファンがクリエイターに直接課金できるいわゆる「支援サイト」における、クリエイターの運用をサポートするサービスを開始したというリリースです。

表に出ている情報の中では、とらのあなが昨年、多数のリアル店舗を閉店しながらも、通販及びfantiaの成長により、リアル店舗展開時をしのぐ売上とあげたと報告しています。

このジャンルは、見えにくい中でも伸びつつづけており、多くのクリエイターにとって、新たなファンとの接点であり、収入に繋がっています。

約3年間蓄積してきた確かな運用ノウハウ
支援サイトが今ほどの規模で広がるずっと前からクリエイターの支援サイト運用をサポートしてきたことで、数多くの効果的な施策やノウハウがございます。

https://openlabplatform.com/service

という説明もあり、実際にこの成長する「支援サイト」を知り尽くしたサポートが得られるとのこと。新しいジャンルにおける餅は餅屋ですね。


viviON社のリリースが続いています。

一つ目は、いわゆるファン投票型の作品アワードなわけですが、作品ではなく投票するユーザーへのインセンティブとして1000万ポイントが準備されてます。アダルト作品中心になるところでSNS投票となるとなかなか難しいのではないかと思いきや、Twitterで検索するとすでに沢山ツイートされています。 設計が上手いですね。

2つ目は、オリジナル作品の映像化です。昨秋の『全力で、愛していいかな?』ドラマ化発表に続き、今回は『バックステージ・イン・ニューヨーク』という作品のドラマ化とのこと。

もともと長い間アダルト作品中心で運用してきた「DLSite」は、近年「comipo」というリブランディングで、非アダルト向けの販売サービス拡大や、オリジナル作品施策をとってきたわけですが、こうした一般向け作品の映像化も進んでいるようですね。

エディア社の決算報告ですが、グループ企業の一二三書房のラノベ、コミックスが新刊点数を大きく伸ばし、売上も伸びたとのこと。わけても、

特に電子書籍の伸びが著しい。上述の新刊の増加に加えて、「ピッコマ」内に「コミックポルカ」と「コミックノヴァ」のチャンネルを開設したことが奏功し、売上の底上げにつながったとのこと。縦読みフルカラー版コミックも開始した。

https://gamebiz.jp/news/363247

とあり、昨年ピッコマが開始した「チャンネル機能」が売上に奏功したという、オープン情報としては初の打ち出しかなと思います。やはり、ユーザー数の多いピッコマの作品紹介力は強いようですね。


海外News

端的に言うと、韓国でも『SLUM DUNK』の映画の影響でコミックスも好調とのことですね。


ウェブトゥーンが伸びていくにつれ、同様に海賊版の問題は韓国でもあがっています。


AIイラスト・画像生成関連

AI画像生成については「トレパク」問題が多く話題になっています。

ひとつ目の記事は、福井健策弁護士による法解釈。ふたつ目は赤松健議員による現状解釈や法改正への考えについてまとめられています。現状把握するにあたり両方とも良い記事と思いますのでご一読ください。

特に、2つ目の記事の最後にある赤松健さんの動画は、30分以上とちょっと長いのですが、良くまとまっているうえ、専門家による画像生成の実際の動きのプレゼンなどわかりやすいので、情勢理解におすすめです。


いらすとやさんの絵柄で画像生成することで話題となったAIピカソですが、有料で使い放題というサービスを開始しました。機能は記事の通りですが、価格設定が、週単位と年単位だけの2種類と言うのが、サービス提供側としては面白いなと思いました。


マンガ制作においても、背景用の元データ制作などでも期待されるところもあるAI画像生成ですが、3Dモデル生成の機能も続々出ています。今回アドオンの対象となったBLENDERは、セルシス社の行った漫画家向けの調査でも、CLIPSTUDIOの素材に次いで、漫画家に多く使用されている3Dツールですが、ここでも任意の3Dデータをつくるツールとして紹介されています。


最近話題のChatGPTですが、小説づくり、物語づくりに寄与するやもと言う記事です。大きいのは、マイクロソフト社が巨額の投資を同サービスに対して行っており、Google検索以上の成果を創作者と言うかユーザーにもたらすかもしれないということに言及しています。


記事のみ紹介


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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。

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