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【マンガ業界Newsまとめ】このマン2023発表に見るコミックのDX、NHKで縦読み漫画特番 など|12/18-82

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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このマンガがすごい!「光が死んだ夏」「天幕のジャードゥーガル」が今年の1位に

業界の師走の風物詩「このマンガがすごい!」のランキングが発表されました。オトコ編1位は『光が死んだ夏』オンナ編1位は『天幕のジャードゥーガル』です。

それぞれ、KADOKAWA「ヤングエースUP」、秋田書店「Souffle」連載のボーンデジタル作品になります。「このマン」は、編集部から選ばれた漫画識者と言える選者がアンケート投票することによって受賞作品が選定されます。わたしも今年で選者3年目なのですが、本当にある日ぽーんっと連絡をいただきまして、受諾するとそれ以来毎年呼んでいただいておりまして、毎年秋になると楽しく頭を悩ましています。

投票する人たちの中に知り合いもいるので、その雰囲気でおしはかると、自分が投票した作品がランキング選外だったりすると、選者として力を疑われる気がして、なるべくランキングに入る作品を当てに行くような会話をしたりしてます。

そうした傾向があってか、いわゆる強い編集部の、紙コミックスが沢山売れる作品が強かった傾向があった印象なのですが、去年の『ルックバック』以来(これはちょっと別格な気もしますが)、ボーンデジタル作品が上位ランクに出て来ていることが、一つの変化なのかなぁと思ったりしました。

ボーンデジタル作品は、雑誌によるリアル書店向けプロモーションが行き届きにくく、リアル書店では売れにくくなる傾向があったわけですが、最早、紙コミックの売上は、ファンから見た時のマンガの価値との関連性が下がってきているのかもしれません。また、紙書店側もボンデジ作品の入荷に対して、十分に準備が出来るようになったとも言えるかもしれません。2019年にコミックの紙と電子の売上が逆転して、もう4年目の冬となりますしね。

私自身の毎年の投票は、おとこ編に投票する5作品は全くもって個人的趣味のためいつもランク外なのですが、おんな編は上位入賞作品を1本だけ投票するという状況が数年続いております。来年も呼んでもらえるかなぁと毎年思いながら、自分の趣味を投票し続けておりますw


小学館、週刊連載に準備金200万円 新人漫画家を支援

個人的に今週気になったNewsでした。

少年誌・青年誌の連載準備金ですが、よく聞く相場は100万円というところでした。これが今回、サンデー・スピリッツの2誌で200万円にするということで倍増です。これは、これから連載しようという新人作家にとっては助かる施策ですし、モチベーションも上がると思います。

Wサンデー現編集長の大嶋さんは、副編集長時代にはサンデーうぇぶりを立ち上げるなどしました。スピリッツの石田編集長は、スペリオール編集部在籍時には編集部内にてガラケー時代からのデジタル担当だったとか。2人ともデジタルに明るい編集長のため、現在の環境に敏感に反応しているようにも思います。

10年近く前、当時まだ名前も決まってなかったマンガアプリ立上げ担当者の方から「どうしたら新人作家を獲得できますか?」というレクを依頼されました。(この時期結構多かったんです)そこで、大手週刊誌では連載準備金に100万円渡すことがありますと説明したところ、メールですぐに「準備しました」と連絡が来ました。あれは今も続いているのかなぁと思い出しました。

好況が続き、なおかつWebtoonの新興勢力も増え、力のある作家さんは取り合いになっています。こうなると作家への還元も増えているということで、元竹書房の竹村さんもこんな記事を書いていました。

作品の源泉になる作家さんに、還元が増えるというのは良いことだと思います。


首都圏情報 ネタドリ!

記事「手塚治虫『どろろ』を縦読み漫画に 手塚るみ子さんに聞く」

ついにNHKが特番一枠でWebtoonを「縦読み漫画」として特集をしました。業界内としては、メディアドゥ社が手塚プロなどと開始した『どろろ』の事例を中心に、手塚プロ関係者として手塚るみ子さんなどを取材した形です。

一先ず、一般の方向けの内容というつくりで、さわりの部分を取り上げたという所でしたが、NHK+で12/23まで配信がありますので、まだの方はチェックをです。

以降今週もWebtoonのニュースが色々ありましたので続きます。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

英国エコノミストが、ウェブトゥーン市場の急成長と、日本のマンガ市場が元気が無いとか、読み手が高齢化しているという記事を出したというものです。実際のエコノミストの記事はこちら。

ただ、こちらで出ている日本漫画の市場規模が¥265bn=2650億円で前年比2.3%減とあるのですけども、これは日本の紙コミック市場を恐らく指していると思いつつも、好調な電子コミックの数字がすっぽり抜け落ちたりしているようで、ちょっと解像度の低いデータのようです。

韓国メディアでは、同様にこの英エコノミストの記事を取り上げるところもありつつも、、、

そんなわけないでしょうにということを、韓国ネットユーザーは言ってるという記事もあるなど、まぁ色々と温度差があるようです。


担当している仕事ですので、宣伝入りますが、コミチのサイト上にて「ウェブトゥーンの最前線」というコラムの連載を開始しました。ライターに、日本のWebtoonに関するライティングでは屈指の飯田一史さんをお迎えし、Webtoonの現場を良く知る人をインタビューしていきます。

第1弾は、RED7のイ・ヒョンソク氏です。『俺レベ』はじめ、実績は言わずもがなですが、新人作家がWebtoonに挑戦することが一番大事ということを言い続けている方でもあります。今回のインタビューも「わかってる感」の強い、地に足の着いたお話をしてくださっています。年末年始にかけて、上中下の3編構成公開の予定です。お楽しみにです。


紙本のECやリアル書店取組と、電子書籍両面に力を入れているhontoでも、Webtoon閲覧を、セルシス社のビュアーで開始とのこと。


海外ニュースでもあるのですがこちらに。

現在、多くの現場で話題になっている、サイマル配信などに関わっていくAI翻訳について、韓国でも力を入れる企業が続々出ており、ここではメタファー社による翻訳システムで「2週間かかった翻訳を10分以内に終わらせますが、完成度はより正確です。費用も少なくなります」とあります。


こちらは、TBS、NAVER、国内スタジオからSHINE Partnersによる「Studio TooN」のWebtoon制作を紹介しています。韓国側の採用募集では、思いのほか多くのクリエイターの応募があったことや、韓国クリエイター事情などが書かれています。現地の雰囲気が判る感じで面白いです。


国内News

恐らく、現役漫画編集者でもっとも有名という状況になりつつある林士平さんのインタビューです。

ジャンプ+は現在、バズることが日常的な媒体になりつつあると。なるほど、それは強いですね。週刊少年ジャンプが653万部売れていた時代も凄かったですが、Webやアプリがそこに近づきつつあるということなのでしょうか。

私も先日忘年会で、2人の編集者さんと林さんの話で盛り上がったばかりです。


こちらはそのジャンプ+の立役者のひとり、ジャンプ+副編集長籾山さんの記事です。

先日、ジャンプBOOKストア!がクローズした当日の、ジャンプ+編集長細野さんのツイートでも触れられていましたが、やはりジャンプBOOKストア!の存在は、ジャンプ+が成功していくまでの手順として重要な位置づけだったのですね。

Web施策によるバズる作品の増加や、サイマル配信強化に至った経緯など、ジャンプ+の力が伸びていった過程が書かれています。先の林さんの記事と合せて読むと良い記事かと思います。


そのジャンプ作品の翻訳をてがけているというMediBang社による翻訳サービスのリリースです。ジャンプ+の海外版MANGA Plusの対応などに、社内で30名のスタッフ、関与人数で実に200人の翻訳/写植スタッフを抱えているのとのこと。

もともと、無料の作品制作ツールMediBang Paintを皮切りとした同社は、17か国語に対応し、2021年で86%が海外のユーザーであったというリリースもありました。


一方で、セルシス社のマンガ制作ソフトCLIP STUDIO PAINTも有料ツールとして2500万本の累計出荷本数に到達。こちらは日本の漫画家さんの指示を受けて75%が国内ユーザーとのこと。


マンガ作品を毎日連載などで紹介する、マンガチャンネルを持つSmartNewsが、2022年のAwardを発表。マンガ出版社からは、秋田書店の「マンガクロス」が選ばれました。

私はこの担当者でもあるのですが、昨年30周年を迎えた『バキ』シリーズの配信が、ちょっと他に類を見ないくらい沢山読まれまして、今回の受賞になっています。マンガクロスのような作品認知を主目的とするWebサイトにとって、こうした外部メディアに作品提供し、新たな認知をとっていくことは強力な手段ですが、一般的にもなりつつあります。


メディアドゥ社の運営するNFTプラットフォーム「FanTop」上にて、日本文芸社作品『リバーシブルマン』の第6巻を、作者公認で二次創作する権利「公式二次著作権」のNFT商品として販売とのこと。新しいです。

昨年、メディアドゥ社から買収された同社ですが、事務所もメディアドゥと同じビル内に移し、こうした連携が増えていくと思われます。


老舗電子書籍プラットフォームのBookLive社も、従来「BookLive!コミック」としていた、電子コミック配信サービスを「ブッコミ」と改め強化していくもののようです。オリジナル作品を強化していくという所でしょうか。


海外News

台湾マンガの取組のリリースです。台湾もTAICCAという枠組みで、台湾作品の進行に力を入れており、その動きが活性化しています。


こちらは、ジャンプ+の英語版MANGA Plusとはまた違う、北米法人BizMediaUSによる取り組みで、これまでジャンプ作品のサブスク読み放題サービスを1.99$/月でで提供したものを2.99$に値上げするというものです。


CoolJapanではなくYourJapnでと言う記事には大きく首肯します。自分で自分のことCoolというのもちょっとですしねぇ。


AIイラスト・画像生成関連

作品の著作権に非常に厳しいディズニーや任天堂などの、AI画像生成のモデルになるデータを、無理やり配るというものなのですが、攻撃的過ぎてこれどうなるんでしょうか。


一方で中国では、AI生成マークの表示を義務付けるとのこと。新しい分野については、返ってちゃんとやるかたちになっていくのか


これは、今後議論され続けるでしょうねぇ。


これはエモいですね。亡くなられたクリエイターの作品の続きがこうしてできてしまう気もしないでもありませんが、ネタとしてエモい。


これもアニメの他、色々なシーンで使えそうです。キャラを生み出す土壌の日本では特に。


記事のみ紹介

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今週は、歌手の水木一郎アニキ、声優でボヤッキー他の八奈見乗児さん、漫画家の聖悠紀さん、御厨さと美さん、ひるなまさんなど、訃報が続きました。それぞれの方が亡くなられた時期はまちまちなのですが、それにしても、巨星が次々堕ちていく時代の流れを感じます。全ての方にR.I.Pです。
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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。

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