見出し画像

【マンガ業界Newsまとめ】ピッコマがマンガ雑誌とユーザーをマッチング「チャンネル」開始 など|8/14-064

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

―――

「作品とユーザー」から「レーベルとユーザー」のマッチングへ ピッコマから好きなレーベルの連載が読める!8/10(水)〜ピッコマ「チャンネル機能」アップデート

ピッコマが、レーベル(マンガ雑誌)とユーザーのマッチングをおこなう「チャンネル」という機能を開始しました。

これまで、基本的に個々の作品を販売することに特化してきたピッコマですが、今回は、双葉社「漫画アクション」「月刊アクション」、新潮社「バンチ」、少年画報社「ヤングキング」などといった形で、いわゆるマンガ雑誌単位で「チャンネル登録」ができるというもののようです。

ユーザーから見たときは、『達人伝』や『ぼくは麻里のなか』という作品が「漫画アクション」という雑誌の作品とわかるようになるわけですね。

本日現在で『達人伝』を例に取ると、単行本31巻で186話までが既刊となるわけですが、187話~194話まで、「単行本未収録作品」がピッコマ上で課金すれば読めるという仕組みになっているようです。

つまり、自社マンガアプリやWeb上などで連載している作品と同じように、連載作品の新話がでると、単行本未収録であってもピッコマ上で読めるという機能ですね。この機能そのものは、ピッコマでもLINEマンガでも機能としては既にありましたが、ここでは雑誌で括って読めるということです。実質ピッコマ上で雑誌が最新話を連載していると言えましょうか。

また、これまでのピッコマだと、ひとつの作品を1話読み終わると近しい作品がリコメンドされてチェーンするという形でした。チャンネルに雑誌が登録されると、チャンネルのトップページで最新話がリコメンドされます。最新話が出た際、最新話は有料のままですが「待てば無料」の範囲が1話分広がるといった具合に、通常のWeb雑誌とはまた違った「連載」の形態になっているようです。

これは以前、韓国経済新聞でカカオピッコマの金在龍氏が説明していた「ピッコバス」というサービスが具現化したものかと思われます。その際の簡単な内容紹介は当時の当まとめでも触れました。

当時の記事を振り返ると、今回の「チャンネル機能」は機能実装としてはまだ序盤で、ここからレビューやキュレーション、個人への展開などまだまだ打ち手が計画されていそうです。

現在、国内のマンガアプリないしは電子コミックプラットフォームNo1と目されるピッコマ上で、各出版社の漫画誌が掲載されるということになるわけです。

これを出版のデジタル化前に当てはめると、日本一大きな書店チェーンの雑誌コーナーに、各出版社のマンガ雑誌が並び、読者がそこで多くのマンガと出会っていた状態に近い形となるといったところでしょうか。


Amazonが「Jコミ」モデルを採用? Kindleストアで「広告付き無料マンガ」が提供開始

電子出版大手のamazon-kindleストアで、作品を読む際に広告が出る代わりに、その作品をブラウザ上でのみ無料で読めるという取り組みが始まりました。

現在、主に双葉社の『鈴木先生』『じゃりん子チエ』などの分冊版が、全巻分ではなく数巻分までこの「広告付き無料マンガ」として読めるようになっています。

記事中では、マンガ図書館Zと同じ機能とありまして、確かに単行本単位だとそうなりますが、ビジネスモデルとしては、広告を出しながら作品を読ませるマンガアプリとも同じ形になりますね。

恐らく、kindleについては、電子書籍を購入したら、スマホ内のkindleアプリにダウンロードして読むことが通常の流れ化と思いますので、「ブラウザで読めば無料」ということが一般のユーザーに上手く伝わり、作品が増えていけば良いプロモーションにはなるのではないでしょうか。昨今の広告売り上げの低調さを考えると、どちらかというとPRに寄るかなと思いました。

しかし、前のニュースの「ピッコマ-チャンネル機能」も、この「amazon-広告付き無料マンガ」も、スタート作品に双葉社アクション系が必ず掲載されてますね。双葉社さん動き早いです。担当者の方の顔が思い浮かびます(笑


「アイシースクリーン」がデジタル化 CLIP STUDIO PAINT EX 月額利用プランで無償提供開始

アイシースクリーンと言えば、アナログでのマンガ制作の要のひとつ「スクリーントーン」の最大手企業です。マンガ制作のデジタル化が進む中で、その売り上げが縮小するなどして、影響力が下がってきました。

ここでは、アイシースクリーンデジタルということで、作画ソフトCLIP STUDIOの中で、このICのトーンを使用できるようになったようです。

デジタル黎明期には、ペンやインク、用紙にこのスクリーントーンのように、アナログ制作に必要なメーカーは、対立気味の関係性であることが目立ちました。漫画家自身もそういう指向の方も多かったように思います。

しかし、時代が進み世代も変わり、何より電子コミックの売上が紙コミックを凌駕するようになり、制作や販売の現場も変わっていっています。

最近では、電子書籍とリアル書店のコラボも以前以上に増えてきました。制作現場でも、この例のように、アナログ時代の資産がDXして変容していくことも自然な流れと思います。

個人的には、アナログ制作というかトーンを使用し続ける作家さん自体はいなくならない気もします。こうしてデジタル・アナログ両方のビジネスを専門業者が併用して維持してくれれば、多様な作品の漫画文化もまた維持されていくのではないかと思います。歓迎したい動きです。


【ミニ特集】:海賊版のお話

今週は、海賊版の記事が多くて方向性も多岐に渡ったため、ミニ特集にまとめました。

「マンガ イズ ビッグビジネス!」国際化する海賊版サイト問題、対策チームに半年密着したNHK記者が語る3つのキーワード

7/19に放送されたNHKクローズアップ現代の「『違法漫画サイト』を摘発せよ!密着“デジタルGメン”」ですが、中国で実際に海賊版を運営していた男のもとまで取材をしに行きインタビューを取るという気合の入ったものでした。

この制作に携わった方と記事ですが、なるほどなと思ったのが、このNHK田畑記者のいう海賊版サイトの変容です。それが、

「ウチ→ウチの時代」:国内で運営し、日本人が読む
「ソト→ウチの時代」:海外で運営し、日本人が読む
「ソト→ソトの時代」:海外で運営し、国外の人が読む

https://natalie.mu/comic/column/488090

ということで「確かにな」と思いました。

ただ、「ソト→ソト」のサービスは昔からあり「FAKKU」→「Komiflo」と言った成人向けマンガサービスの内外の動き、アニメでもCrunchRollのように、いわゆる白転したサービスは今も稼働してたりはしますね。

なので、海賊版対策の取り締まりについて、そうしたフェーズの推移があるのであろうと理解は出来るかなと思いました。


海賊版サイトを発見するサービス登場 集英社の実験で削除率2倍に

大日本印刷(DNP)が英国企業と連携し、海賊版サイトや掲載作品を自動的に検出し、削除申請を行うまでの流れをサービスとして提供し、実験では削除率が2倍になったということです。

サービスで具体的にどうするかは記事に無いのですが、このDNPが連携したMUSO社のWebを見ると、膨大な量の海賊版データを見つけて来て削除申請するなどできるツールを提供し、IPホルダーの売上アップに貢献。というようなことが書かれていました。

記事のほうでも、単に海賊版削除だけではなく、海賊版をどんな人が見てるかというユーザー情報も提供するとありますね。それは良い形だなと思います。


漫画の海賊版被害 深刻なダメージを受けているのは有名作品だけではない

こちらは中小出版や、もう少し小さく作家本人レベルでも、海賊版の被害を受け、場合によっては海賊版業者からおかしな商談に呼ばれますというお話です。そうそう、そういう良くわかんない業者が変な提案してくることありますよねと、業界の人ならうなずくところが多いのではないでしょうか。

海外とひとくちに言っても200を超える大小の国々に事細かく対処するなど、規模が小さい企業や個人にとっては現実的ではありません。

ひとつ前のニュースでは、このDNPの仕組みなら中小出版も海賊版対策を安価に対応が可能という話でもありました。

クールジャパンなど、役に立たないことにお金を投じるくらいなら、こうした現場に生きたお金を投じて欲しいなと思うのでした。


違法アップロードへの対策活動に関するご報告:エイシス

こちらは、DLISiteを運営するエイシス社がここ数年続けている、同人作品をDLSiteに掲載しているクリエイター向けの海賊版対策サービスのレポート2022年版です。

DLSiteに掲載する作品は同人作品がほとんどで、そのクリエイターはほぼ個人です。そうした方々は、なかなか自作の海賊版に気づいたり、対策をすることが難しいため、DLSiteに作品をアップしているクリエイターに限り、こうした対策をエイシス社が行っているというものですね。

ただこれ、同じレポートの2021年版と比べると、DMCA申請や削除要請の累積数があまり伸びていませんでした。その代わりなのか、ユーザー申請の件数が増えたりしていました。また、ユーザー翻訳による世界展開サービス「みんなで翻訳」の話題など、取り組み方も時代とともに変わってきているようですね。

このあたり、どう変わっているのかエイシスさんから聞くと面白い取材が出来そうだなと思いました。どなたかよろしくお願いします。


組織に頼らず「マンガの自由」を守る 比例候補最多得票の重み

そうした海賊版への対策の積み重ねや人の営みの中から、業界を代表して赤松健さんが国会議員になられてこれから活動されていくわけで、頑張って欲しいですね。それにしても、比例候補最多得票はすごいですよね。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

今週から、新規参入の他Webtoonの新たな動きもここに括ります。

『DLsite comipo』縦読みフルカラーコミックのラインナップに初となるTL、BL作品が一挙追加! まとめて読める10話パック&お得なクーポンも登場

DLSite comopoのレーベルで、TLとBLの作品がウェブトゥーンで合わせて25作品リリースとのこと。レジン作品を中心に韓国クリエイターの作品が目立ちます。

競合のFANZAはEROTOONのレーベル名で、男性向けアダルト作品を同じくレジンを中心に提供を受けていますが、男性向け、BL、TLとジャンルは違えどレジンの作品から一先ず入ってくるというのが、成人界隈では型になりつつありますね。

このあたり、今後のオリジナル作品の投入もあるかと思いますが、ひとまず投入後の売れ行きなど傾向を見ていく形になりましょうか。


MUGENUP、Webtoonの着彩工程における受託制作事業を開始

かねてからWebtoonクリエイターや編集者などを募集していたMUGENUP社ですが、Webtoon制作工程で課題になりやすい着彩工程について受託事業を開始したとのこと。

このMUGENUPに加え、フーモア、No9(サーチフィールド)など、多くのクリエイターを抱えゲームイラストを制作していた会社が、Webtoonスタジオに進出していることが目立ちます。(ウェブトゥーンカオスマップより)

しかし、この3社にしても、Webtoon事業へ進出するにあたり、それぞれ、着彩(MUGENUP)、強い原作作品を起点にWebtoon制作請負(フーモア)、独自の制作体制でオリジナル作品製作(No9)と、似た業態からWebtoonに入って、それぞれ違う展開の仕方をしておりますね。

多くのスタジオが生まれている界隈ですが、こうした住み分けは今後進んでいきそうです。


海外News

NAVERの2022年第2四半期決算の記事が先週から多数出ています。特に、NAVERとしてのWebtoonに関するビジネス内容を公表したということで、そこに注目が集まっています。

韓国で919億ウォン、日本で1124億ウォンとのことで、ebookjapanを入れると、本国より日本のほうが上回るのですね。また、日本も含めて全体とすると営業利益は赤字を示しているのですが、これは戦略的投資部分(新規ユーザー獲得や、クリエイターを育てるなど)があってのこととして、現在20%の営業利益を示す韓国のような状態にゆくゆくなっていくと言っています。

また、一連の記事を見ると、ebookjapanの規模感や提供コンテンツにNAVERは強い期待を持っていることが見て取れそうです。


韓国においても、Webtoon制作用のツールというかサービスとして、背景画像を提供するようなものが始まっているようです。CLIP STUDIO ASSETみたいな形ですね。


フランスのBLがついにイベント化したということで、ほぼ日本のオンリーイベントを開催する同人誌作家さんの勢いそのままに、フランスでも日本BLに影響を受けた方がBLイベントを開いているということのようですね。

この記事では、LGBTQまわりの当事者の方がどうBLコンテンツと接するかというあたりも書いてあり、興味深いです。


インド初のコミックショップはアメコミ中心のもののようですね。インドにおいてもコミコンインド(COMIC CON INDIA)というようなイベントは行われてまして、コミコンはアメコミ中心の開催になっているようです。


開催そのものは、今年5月から7月にかけて行われたもののようですが、サウジで日本アニメ系のイベントが開催されたとのこと。その中で、アニメイトが臨時出展し、臨時出展とはいえ、池袋のアニメイト本店(ビル一本分)と同じ面積の大きな出展をしたというのですね。

ガンダムやゴジラなどもありますが、多くは漫画原作のアニメ中心ですので、可能性を感じますね。常設施設の話は以前からありますが、最近の動きを見ると具体化は近いのかもしれませんね。


国内News

ここ数年相変わらずのアルファポリス好決算で、第1四半期ですけどまた過去最高の19億円売り上げたとのこと。

ちなみに、このアルファポリス社は「決算説明資料」に具体的な作品名や表紙が並んで、部数などの情報と一緒に出ていてにぎやかで面白いので、業界の方は読むことをお勧めします。



DNP系のhontoが丸善ジュンク堂と座組を作り、海外向けの越境ECをやるというニュースです。越境ECというくらいですから、これは紙の本のお話ですね。やはり、日本語で、しかも紙で欲しいというニーズは海外にも強くあるんですね。

こうした作品の輸出については、海外版権調整の難しさからシンプルに輸出することが難しく、割と並行輸入・輸出業者をかませるケースが多かったのですが、どうにか越境ECの仕組みをつくって正規販売化していくのだと思います。送り先の現地とのライセンス調整は色々大変だとは思うんですけどね。


「フルカラーコミック」という銘で、Webtoon作品のフェアが行われていて、良く見ると「Webtoonを紙コミックにした作品のフェア」ということですね。

先日アニメ化が発表された『俺だけレベルアップ』ですが、紙コミックはKADOKAWAから出ています。他にもcomico時代から含めて、KADOKAWAから出ているWebtoon単行本も多く、こうしたフェアになっているのだと思います。


私もここ2年選者に選んでいただいている「このマンガがすごい!」の記事です。

なにげなくwalkerplusに載ってますが、このマンのライバルになる賞は、現在絶賛集計中の「次に来るマンガ大賞」で、これはKADOKAWA主催なので、この取材が今出る点は興味深いところでした(「次来る」はダヴィンチの運営ですが)

割と選者としてわたしも気になるのが、

一方で、今後も考え続けなくてはいけないテーマは、「オトコ編」「オンナ編」という区分のあり方だ。

https://www.walkerplus.com/article/1016043/

というくだりで、昨今の社会情勢を考えると呼び方もどうかという点もありますし、投票する際に自分がどっちで行くかすごい迷うみたいなこともあります。(選者は、最初に自分がどちらに投票するか運営にお伝えします。)

個人として、私に女性向けマンガ情報を期待する人は少なかろうと、毎年「オトコ編」を選ぶのですが、女性向け作品で面白いものが推薦しにくくなるので、今年なんかはここの選択が苦渋の決断でした。

ただ、土岐さんのおっしゃる通り、少女マンガの読者数の問題はしかりで、ある出版社では売上ベースで、男性向け:女性向け=9:1みたいなケースもあったりします。そう思うと、この出し方は必要かもしれませんね。個人的には納得できました。


最近ニュースに出ることが増えた「とらのあな」ですが、ついにエコノミストで記事になっていました。店舗を減らしてるが、ECやウェブサービスの売上がそれを補って上回る勢いで伸びてるとあります。DXというより環境適応と書いてますね。なるほど。


記事のみ紹介

告知関連

8/15より、コミチにてDMM-GIGATOON Studioとコラボで「縦読みマンガ大賞」を開催、募集開始しました。

https://comici.jp/stories/742dec1ad68b6

それに伴い、8/15の17時半~より、以下の配信勉強会をします。
終了後はアーカイブ配信します。

横描き漫画家がウェブトゥーン作家になる方法


8/4に開催した、KADOKAWA 「タテスクコミック大賞コミチ支部」オンライン勉強会レポートを公開しました。
こちらも、アーカイブ動画を既に公開済みです。

8/25(木)19:00~ IMART:アニメをいかに見るか、いかに語るか@ロフトプラスワン 

日時:2022年8月25日(木)19:00~20:30
会場:東京都 ロフトプラスワン
登壇:イシグロ キョウヘイ、藤津亮太
モデレーター:数土直志

―――(編集後記)

今週、コミケがあるからか2次創作系の話題がSNSに多かったですね。今年も夏い暑だなぁという内容が年中行事のようでありました。

そんな中で、最早定期とも言える感じですが、知財弁護士として名高い福井健策弁護士が二次創作についてツイートしていらっしゃって味わい深いです。

この件につきましては、コミケ3銃士ことフデタニンさんがもう10年以上前につぶやかれた以下ツイートが全てにして完全なるお言葉だと思いますので、額装して気球か何かで飛ばして知らしめたい気分です。日本中の脳内サイネージをジャックしたいくらいです。

―――

主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!


現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチに関するお問い合わせは、こちらまで。

著者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


この記事が参加している募集

業界あるある

Twitterもやってます!フォロー、よろしくお願いします! https://twitter.com/t_kikuchi