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【マンガ業界Newsまとめ】「DLSite」サービス開始26年目の集英社コミック販売へ「とらのあな」通販1000億円へ など|10/2-071

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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電子コミックストア「DLsite comipo」で集英社コミック2万冊以上の取り扱いがスタート。シリーズ既刊のまとめ買いで何度でも使える60%オフクーポンも配布中

老舗コンテンツダウンロードサービスの「DLSite」が、集英社のコミックを販売開始しました。wikiによると、パソコン通信時代に猫耳画像のDL販売を開始したのが1996年とありますので、ネットでコンテンツを販売するようになってから実に26年目にして、恐らく初の集英社電子コミックの販売開始になります。少し解説します。

(以下のコメントは取材や事実確認をせず、著者の実務経験等からの推測のみで記述しています。業界の一般論位に見ていただきたく、間違いがあったらごめんなさい。必要に応じ訂正いたします。)

現在好況の電子コミック市場ですが、電子書籍プラットフォーム(以降PF)からの目線で見た際に、商品群としてもっともインパクトがあるのは集英社の電子コミックです。作品ラインナップ、ヒット作品数、巻数(アイテム数)、そして話題性、あらゆる面で最強の一群です。

DLSiteはサービス開始26年、会員数620万人(2021年発表)という、老舗かつ巨大なPFなわけですが、ここまで力のあるPFがなぜ集英社作品の扱い開始がこのタイミングなのかと推測すると、それは一般向け作品に対する成人向け作品と同人作品の課題と考えられます。

電子書籍PFを開始する際、「今日から始めるので集英社さん、作品を扱わせてください」というわけにはいきません。小さな事業者であれば、事務コストの問題などで、精緻な事業計画を求められます。

また、成人向け作品を前面に押し出すサービスの場合は、一般向け作品との厳密な作品の並べ方の切り分けが要求されます。同人作品を扱う場合、正規作品と2次創作が並んで表示されるような事態も、出版社の忌避するところです。

DLSiteは成り立ちの性質上、成人向けや同人作品が主体となるWebサービスでした。そのため、大きな会員数があっても、一般向けの大手出版社作品を販売開始するのは難しかったかと思います。

しかし近年DLSiteは、もともと運営していたエイシス社とは別に、一部販売や制作機能を「viviONグループ」と銘打って再編し、マンガアプリ「DLSite comipo」という別のPFを立ち上げることによってリブランディングしました。このサービスは、マンガアプリである性質上、もとより一般向けのPFになります。

今回は、元々のWebサービス「DLSite」ではなく、マンガアプリ「DLSite comico」上における集英社作品の取り扱い開始をリリースしています。恐らくこれは長年の念願だったのではないかと推測されますが、26年の歳月と、近年のリブランディングの動きを考えると、関係者の方々には感慨もひとしおではないでしょうか。620万人の会員数を考えると、新たな商圏の出現ということで、大きな動きだと思います。


閉店の一方でオンライン事業の流通総額は社内初の300億を突破! 絶好調の「とらのあな」通販、本を通じてクリエイターとユーザーを繋げるための戦略とは【前編】

近年、30近くあった店舗を1店舗まで縮小し、一方で通販とfantiaの2つのネットサービスで、売上を落とすどころかアップして300億円企業となったとらのあなの、代表取締役鮎澤慎二郎氏のインタビューです。

記事では、通販サイトの大幅リニューアルなどに触れています。2022年の通販売上は164億円とあり、100億円前後を推移していた数年間から、直近3年で大きく成長しています。

また、その先の目標として売上1000億円を目指すために事業の構築をし、システム改修や採用など進めていたことが語られています。エンジニアの採用については、虎の穴ラボ株式会社という別会社を立上げ、店舗小売りを主体としたグループ内に、エンジニアがスムーズに採用できる手段を講じるなどが注目されています。

後編では、クリエイターサブスクとして急成長中のfantiaについて触れるようです。


『カノジョも彼女』作者、「書店特典のイラストは基本的に原稿料が出ない問題」解決に向けた実験が話題に

出版社からマンガ単行本が発刊される際、とらのあな限定、アニメイト限定、など書店それぞれに対して、特典イラストなどが付くことがありますが、このイラスト制作費は業界慣習的には、制作費無料のケースが多いとされてます。(そうではないパターンも一部あり)

認識としては、販促活動の一環ということで、最終的に単行本売上の底上げにつながるので、無償で出版社が漫画家に働きかけられていましたが、漫画家のヒロユキさんが、この特典イラストをヤフオクで販売することで、見事に金銭的メリットを作ったということですね。

ヤフオクともなると、ビジネスとしてはもう定着しており、多くの人が抵抗なく使えますので、あとは出版社との契約ごと次第ですね。少なくとも、ヤフオクでこのイラスト購入に注目した人は、書店の特典を欲しくなりますよね。個人的には、良い効果が多くてデメリットが少なく、これから増えそうだなと思いました。ヒロユキさん、さすがです。

これ、そのうちNFTになるのもありそうですよね。もうちょっとNFTがヤフオク同様に枯れてきてくれれば、ありなんじゃないでしょうか。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

ブックリスタ社のウェブトゥーンスタジオ「booklistaSTUDIO」が、集英社ののライトノベルレーベル・ダッシュエックス文庫の作品を原作としたWebtoonの制作・配信を開始とのこと。

先日、小説プラットフォームBookBaseとWebtoonスタジオKnockToonの提携も発表されましたが、Webtoonの原作調達や制作連携に伴う動きは、各所で様々な展開が増えそうです。今回は、大手出版と新興スタジオのコラボということで、このあたりは老舗ブックリスタのスタジオらしい動きと思います。


こちらは、マンガ動画のYoutubeチャンネル作品を原作としたWebtoon展開です。原作側は新興(AnyMind Japan社)ですが、制作側のスタジオはKADOKAWAタテスクコミック編集部ということのようです。Youtubeマンガ動画はユーザーが若年なので、Webtoonの読者層に合いそうというところでしょうか。


中国でWebtoon制作の活動をしている浅野龍哉さんらが、作った縦スクロール漫画の描き方本です。若い方が作っているものとして読むと、石森章太郎先生が出てきたり、花の24年組の話が出てきたり面白いです。良く見ると、監修・シナリオ大塚英志さんとあり、なるほどそういう文脈かと思いました。

何度か紹介しましたが、本格的な縦スクロール漫画の教本は、2015年にcomicoが出したもの以来、決定版が出ていない状態です。そこに向けて、出始めたところかなと思います。


セルシス社から、既存の版面マンガのコマを再構成し、演出付きでWebtoon化して表示するツール、その名も「KOMATOON」が発表されました。これは、上記リンク内で動画でサンプルを見せているものがイメージしやすいので是非見てください。

こうしたいわゆる「縦化」のツールは、パッケージとして外販されない、インサイドツールとしては数社が既に開発していましたが、自動化したパッケージはセルシス社が初出しということになりそうです。クリスタを開発している同社の動きを考えれば、納得できるところです。


海外News

かねてから提携している、NAVER系WEBTOONとセルシス社のCLIP STUDIOですが、今回は「WEBTOON CANVAS」というNAVERの提供するセルフパブリッシングPFへ、クリスタから簡易的に作品アップロードが出来るというもののようです。

以前、日本の出版各社の原稿用紙のフォーマットをクリスタが準備しているというnoteを書かせていただきましたが、WEBTOONの場合はネットへアップすることが前提ですので、自動的にサイズを変換してアップするなど、また別の機能が実装されたということになりますね。


集英社のゼブラックや、海外向け配信MangaPlusなどにシステムを提供するLink-U社が、自社サービスComilkey上に、同じく集英社のマンガMeeの作品提供を開始とのこと。少女漫画での海外進出の提携は珍しいですね。


一番上はアフェリエイトサイトなので消えてしまうかもしれませんが、香港に本社のあるGlobal Info Research社が、コミックの「自己出版プラットフォーム」のグローバル市場調査レポートを出しています。

おっ?と思ったのは、主に対象にしているサービス一覧で、「Comixology, KindleComicCreator(Amazon), Webtoon, Tapas, Graphicly, Ubuildabook, GlobalComix」と、主に米系か韓国系のサービスのみがリサーチの対象になっています。マンガの調査ですが、日本のものが調査対象に入っていません。

国内だと、ジャンプルーキー、LINEマンガインディーズ、Pixvなど新人が投稿する場は多くあるのですが、いずれも新人の登竜門的なもので、販売サイトとしての機能がメインではありません。

国内で作家が個人で販売できる場としては、FANZA,fantia,DLSite,といった成人向けが圧倒的です。実は筆者の所属するコミチはまさにこの一般向け漫画の領域をやっているのですが、ここはまだこれからというところです。

同リサーチのサマリーも情報が無く、市場規模の情報などは現時点では出ていません(そんなに大きくは無いんでしょうね)調査閲覧料金は、3480ドルから。見てみたいですが、ちょっと、いやだいぶ高いですね。


国内News

ピクシブ社が、投稿された漫画が編集者の目に留まりデビューに繋がる「Pixivコミックインディーズ」のβ版を公開しました。これまでも、投稿サイトやインディーズサイトの作品を見て、編集者が声をかけるというサービスはありましたが、ここでは編集者がスカウト機能でクリエイターに声をかけるなど、出版社と漫画家が繋がりやすくなるようです。


マンガやアニメ原作のミュージカルが公演され人気を博す、いわゆる「2.5次元」が注目されて久しいですが、ミュージカルは2000年の14億円に対して、2018年で226億円と、実に15倍以上になっているとは、かなり大きくなりましたね。


マツコ会議で紹介されるなど、最近各所で注目されているトキワ荘プロジェクト運営のLEGIKAによる「多摩トキワソウ団地」の記事です。運営1年でプロ漫画家を輩出したのですね。

以前私もこのトキワ荘PJの運営に関わっていたのですが、現在運営に関わっているインタビューを受けてる菊池蓉子さんとは、特に血縁などの関係は無く、たまたま同姓でしたというだけでございます。

3年ルール、良いですよね。入居している漫画家さん達にも、運営にも、引き続き頑張って欲しいです。


有料記事なので途中までですが、『ONE PIECE』は、ギネス記録である5億部の単行本売上の他にも、アニメにゲームにグッズと、とにかく様々な展開がありますよね。このグッズまわりの数値がしっかりと統計が出ると、また見えてくる景色が変わってくるように思います。


AIイラスト・画像生成関

今週も、AI画像生成まわりの記事は非常に沢山ありました。コメント軽めで駆け足に紹介します。

米系サービスなのでアメコミ画風ですが、やっぱりこういうマンガを作るの出てきますよね。日本も近々、でしょうか。


制作面で、2次元画像から3Dモデルが生成され、即レンダリングできるもののようですね。これ一つとってもマンガ制作の現場には革命的です。


グラフィックノベルは、米国ではマンガと近接するジャンルで、作りもマンガに近いですが、そこに使用するイラストをAIで作り、著作権登録が出来てしまっているとのこと。

「あくまで AI を著作者とすることを拒否したのであって、AI を使用して作品を制作した人間を著作者として認めないわけではない。」ということになるわけですかと。


沢山ツールが出来ると、優劣や向き不向きは出てきますよね。AIイラストがあることが日常になる日が近いのでしょう。


中国のバイドゥのサービスは、アニメ絵に強いとのこと。2つ目の記事では、同じバイドゥ社が「Simeji」というサービス名でローンチしており、こちらは日本語入力で使えるようです。


プロの画像を参考に出来るとなると、こうして特徴的な画力を持つクリエイターさんは大変ですね。心中うかがいしれませんが、心安き日が早く来ると良いのですが。


記事のみ紹介


告知関連

100点以上の生原画も!『大乙嫁語り展』/京都国際マンガミュージアム

期間:2022年09月16日(金)~2022年12月26日(月)
時間:10:30〜17:30(最終入館 17:00)
場所:京都国際マンガミュージアム
良いですね。非常に良いですね。行きたいです。拝観は有料です。


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現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチ+は、来年に向けて大型受注を複数控えていて、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当)などを募集中です。これから、サービスが大きく広がっていきます。一緒に働きましょう!詳細は以下より。

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