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数学ダージリン 毎週ショートショートnote

「貴方は特別ね」
「なぜ?」
 
僕は冷やしていたダージリンをグラスに注ぎ、彼女にすすめた。
湯温も茶葉の量も正確に、勿論、湯量も蒸らし時間もだ。僕は彼女との最高の時間を過ごした後に最高のダージリンティーを出す。世間は僕を至極変人のようにいうけれど、最高の証明を日常で確かめてもらえることは至幸だ。

「貴方は数学者だけれど、とても情熱的よ」
彼女は僕がさっき愛した唇で紅茶を含み、喉を鳴らし味わった。
「それは君が最高だから」
「私が?」
「そうだよ」
「それを数学的に証明できる?」
「難しい問題だな、わかりきった事象を証明するのは実はとても難しいんだ。そのダージリンが最高なのも同じようにね」
「正解があるのに?」
「そうだね」
「つまんないわね」
「なぜ?理由が聞きたいね」

「貴方は常備のダージリンの缶を二つにした。それだけの分私を求めるって、それだけの事よ」
「それは証明じゃなくて……」
 
彼女の甘く香り立つ唇はまた僕の言葉を止めた。


完410


椎名林檎 長く短い祭


たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「数学ダージリン」に参加させていただきました。
ああ、紅茶が恋しい。紅茶よ、紅茶……

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