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良い感じだった女の子を心苦しくも振った話

20代前半の頃、とある同級生の女の子と付き合いそうだったけど、すんでのところで付き合わなかった。その子は明るくてコミュ力が高く、誰とでも楽しく喋れる快活な女の子だった。季節で喩えるなら夏みたいな。だからここではナツと呼ぶことにしよう。ナツ自身も季節の中では夏が1番好きと言っていたことだし。

そんなコミュ力の塊みたいなナツと陰キャの僕。本来なら決して交わることのないが人間がたまたま仲良くなって「良い感じ」になった時の話。そんな明るい女の子と仲良くなるのは僕にとって極めて珍しいことだし、ナツを振った理由が僕の今の恋愛観と繋がっていることもあって、この投稿に当時の出来事や当時僕が思っていたことを綴ってみる。


僕とナツが仲良くなったきっかけの詳細は省かせてもらうけど、かなり大雑把に言えば「僕とナツは同級生で、ある年度の始めから接する機会が増えたことで仲良くなった」という感じだ。春から夏くらいまでは他の同級生も含めて複数人で遊ぶこともあれば、時々二人で出かけることもあった。

夏には二人で花火をしたことも覚えている。今振り返ってみれば、この頃にはナツは僕のことを好きだったんだと思う。というかそもそも、気がない相手とは2人で花火なんかしない。事実、結果的に僕はナツを振ったわけだけど、僕もナツに対してそれなりに好意を抱いていた。

ナツが僕に好意を打ち明けてきたのは秋頃のこと。きっかけは僕とナツが初めてサシ飲みをしたことだ。どういう流れだったかは覚えてないけど、僕らは2人で飲みに行くことにした。こじんまりとした居酒屋のカウンター席で飲んだんだと思う。

「良い感じ」の異性と飲みに行けば何かしら発展するもので、僕らの関係もこのサシ飲みをきっかけに変化することになる。具体的にこのサシ飲みで何をしたのかと言うと、「付き合う前特有のちょっととしたイチャつき」だ。会話中にちょっと突っ込みを入れながら肩のあたりに少し触れるとか、一緒にメニューを見ながらとかちょっと肘のあたりが触れ合うとか、そういった古典的なやつだ。

居酒屋でまぁまぁ飲んで酔っ払った後、僕らは帰路についた。僕はナツを家に送って行くつもりだったんだけど、2人ともそこそこ酔っていたし、居酒屋とナツの家の間くらいの位置に僕の住んでいたアパートがあったから、流れで一旦僕の家で休憩することになった。付き合う前の女の子を家に連れ込んだ形になる。連れ込むつもりはなかった。

元々家に連れ込むつもりは全くなかったとはいえ、一人暮らしの自分の家に女の子が上がるとついつい下心が出てきてしまうのが男というものだ。僕はナツと家のコタツで横並びになりながら、居酒屋でのイチャイチャの続きを始めてしまった。ナツの手の甲の上に僕の手のひらを乗せたり、ナツの腰に腕を回したり、頬と頬をくっつけたり。さっきよりも進展したイチャイチャをした。

正直そのままキスをして流れで抱いてしまいたかったけど、共通の知り合いもいる女の子を付き合う前に抱いてしまうと、僕がクズ男であるという噂が流れてしまうかもしれない。それは癪だと思ってキスをする前、理性がギリギリ保てている間にイチャイチャを止めることにした。マッチングアプリで知り合った女の子だったら、確実に何も考えずに抱いていたと思う。

イチャイチャを止めた後、酔いが少し引いてきたあたりで、僕はナツを家まで送って行くことにした。ナツの家までの道中に何をしたかは覚えていない。とりあえずなんとか理性を保ってちゃんと送って行くことができたのだけは確かだ。この日はこれ以上の出来事はなく終わった。

その翌日。夕方くらいにナツから連絡が来ていた。

「今日ずっといろいろ考えてたんだけど、翠くんと話したいから明日とかちょっとだけ会わない?」

他にももう少しメッセージが来ていたため、ナツが僕に会う目的は「僕とナツが付き合うかどうかをハッキリさせたい」ということだと察した。おそらくナツは「昨日あんなに恋人みたいな感じで触れてきたってことは、これから付き合うってことで良いのかな」みたいに考えたんだと思う。僕もナツのことは結構良いと思ってはいたから何回も2人で出かけていたわけだけど、一晩じっくり考えた末に僕はナツとは付き合わないことを決意した。

ナツを断ることにした理由は、僕がナツに話したエピソードに対するナツのリアクションにある。そのエピソードがどんなものかを詳しく書くと個人が特定されそうだから詳細は伏せるけど、簡潔に言うとYouTuberがやっていそうな素っ頓狂なことを仲の良い友人とやった話だ。僕が嬉々としてその話をナツにした時に「えー、意味わかんない。それの何が楽しいの?」みたいに軽くあしらわれたことがあった。このことが僕の心に引っかかっていたため、僕はナツと付き合うかどうかを真面目に考えることにした。

20代前半で交際するということは、多少なりともその相手と結婚する気持ちがあることを意味すると僕は思っている。今ここでナツと付き合ったら、いずれはナツと結婚することになるかもしれない。結婚する可能性も含めた上でナツと付き合いたいだろうか。

僕は何歳になっても、たとえ誰かと結婚したとしても、YouTubeの企画のような突拍子もないことを友人と続けていきたいと思っている。結婚した後、結婚相手に「今度の休みに大学時代の友人と〇〇企画してくるね」みたいに言う度に、「意味わかんない」みたいなリアクションをされ続けたら僕はどう思うだろう。もしナツと結婚したら、こういったことが少しずつ積み重なっていって、ちょっとずつ結婚生活への不満が溜まっていきそうだ。それならナツとは付き合わない方が良い。そう思った。

僕は別に結婚相手と一緒にYouTubeの企画みたいなことをしたいわけじゃない。ただ結婚相手には、僕がそういったくだらないことを楽しいと思う人間であるということを理解してほしいだけだ。僕の奇行エピソードに対して「男子ってほんとバカだよね〜」くらいの感じで受け入れてくれるだけで十分だと思っている。

こういったことを一晩しっかり考えてから僕はナツに会った。そして自分の思っていることを正直に伝えた。ここに書いたほど詳細ではないけど。実際にはこんな感じのことを言ったんだと思う。

ナツとは一緒にいてすごく楽しいし、ナツのことを好きな気持ちもあるから付き合いたい気持ちがないと言ったら嘘になるんだけど。でもこの歳で付き合うとすると結婚する可能性も少し考えないといけないと思ってて。昨日の夜にいろいろとじっくり考えたんだけど、ナツは僕が結婚したいタイプとはちょっと違っている気がしたんだよね。だから、ごめんね。

もったいないとは思いつつも、僕はナツを振った。そこそこ好きな女の子を振るという決断は正しかったんだろうか。


ちなみにナツとは今でもインスタで繋がっているんだけど、ナツのストーリーには今付き合っている彼氏とのデート写真が頻繁にアップされている。幸せそうで何よりだ。そう思いながら同時に「インスタのストーリーに彼氏の写真を上げるタイプの女の子とはやっぱり合わないだろうなぁ」とも思った。

僕の過去の決断はきっと間違っていない。


こうやって振り返ってみると、めちゃめちゃ楽しい恋愛だった。ナツ、僕の青春の1ページになってくれてありがとう。

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