可愛くいたい妻の鬼嫁日記。
妊娠がわかったとき、私は彼と私との関係が変わってしまうのを心配した。
母になっても女性として見てもらえるのか、今まで通りラブラブでいつづけられるのか、と。
それはどちらかというと「彼の私への愛情や接し方の変化」をおそれるものだった。
だけど私はいま、変わったのはむしろ私の方だと認めざるを得ないような気がしている。
ああ、以前なら彼が体調を崩せば「大丈夫?」と心配して声をかけ、甲斐甲斐しく世話を焼く…というほどではなくとも、とにかくやさしく接してあげたいと思っていた私なのに。
いまや彼が熱を出したり疲れて動けない、となると私の心にはこんな思いが浮かぶようになってしまった。
「はあ~?動けないですと?まーた私がひとりでぼうやのことも家のことも1人でやらなきゃいけないじゃない!(イライラ)」
そう、私のなかでは
「彼が体調を崩す」=「2人で背負うべきものが全部私にのしかかる」
という等式が成り立つことになり、
彼への心配よりも
「おかげで私があれもこれもやらなければならない」という苛立ちが先立つように……
あれ。
もしかしてこれって、いわゆる鬼嫁というやつ?
ずっと可愛い妻でいたーい♡なんてスウィートなことを思っていたのに、もっとも「可愛い妻」から離れた存在、つまりは鬼嫁に近づいている…?
そんな自分に気がついて愕然とした次第なのです。
本当は、大切なパートナーが体調をくずしたらいたわりの心をもって最大限優しく接するべき。
というか相手がパートナーでなくたって、目の前に体調不良でつらそうなひとがいたら精一杯やさしくする、それが人ってものでしょう。
それなのにいつの間にか、一番大事な人にそれができない私になっている……涙
そんな軽いショックを抱えていた折、ちょうど子どもがいる女性たちで集まる機会があったので勇気を出して口に出してみた。
彼に優しくできないことへのすこしの罪悪感、いつしか変わってしまったらしい自分へのもやもや。
それらを打ち明けたら「ひどい妻」なんて思われるかもしれないけれど、その場にいた全員が誰かの母であり妻だから、なんとなく口にしやすかったのだ。
「じつはいま彼が体調を崩していて…」
そうおそるおそる切り出した私を待っていた反応は、だけど正直想像していなかったものだった。
私が話し終わるやいなや、というより話し終わる前に
「旦那が体調崩すと『あんたなに勝手に体調わるくなってんの?!』って思うよね!」
「うんうん、わかる。体調わるいアピールされても『あーはいはい』って聞き流すわ~笑」
と、私を上回る夫への手厳しさ&共感の嵐が沸き起こったのだ。笑
先輩ママたちの力強さ(?)よ…!!
そのあとも続く続く、
「旦那に体調を崩されるとしわ寄せがこちらにくる」とか「育児やらやることがあるのに旦那の面倒まで見てられない」といった、夫たちが聞いたら涙目になりそうな妻たちの本音トークの数々。
極めつけは3児ママの「私なんて旦那の保険金の額を言ったら友だちに『あんた旦那殺す気でしょ!』って言われたわ~!笑」であった!ひえ
「風邪気味の夫に優しくできない私、ひどい妻なのかもしれない…」という私のちっちゃな罪悪感など、もう瞬時に吹き飛ばされてしまった。
なんなら「こんなことで罪悪感を感じるなんて、私って乙女だなあ」とまで思えてくる、鬼嫁疑惑はどこへやら。
この日私が得た貴重な学び。
それはひとりだと思い詰めてしまうようなことも、笑い話にしたら心は軽くなる、ということだったのでした。
また後日、別のママたちの集まり。
とある女性の「旦那が風邪ひいて、楽しみにしてた週末の予定がパーになってん~」という愚痴。
「うちの旦那、ちょっと体調崩すとあり得へんくらい頻繁に熱測るねん。ほんま5分ごとくらいに確認するの、意味わからんやろ?
『あんた測りすぎや。そんなにすぐ測っても変わらへん』って言っとったら最近は前ほどは体温計出さんくなってな。
熱測るときも『あ、これは今これこれこういう理由で測ってんで』って毎回説明してくるようになったわ。笑
このまえ母親にこの話したら『あんた旦那にそんなことしたらあかん、可哀想や!』って言われたわ~あはは!」と。
その場にいた別の女性も
「うちの旦那もな、私が『ちょっと体がだるいかも』って言うとすーぐ『俺もやねん~』って便乗すんねん。
なーにが『俺も~俺も~』だ。
ほんで旦那が熱測るやろ?36度台しかなくて大したことないやんって思っても、『俺平熱35度台だから、36度台だと微熱やねん~』なんて言うねん。
いま私が体調よくないって話してんのに、便乗してくんな思うわあ」
関西弁で繰り広げられる率直で軽快なトーク、そこにリズムよく合いの手を入れるほどの力量が私にはないのでほぼ聞いているだけだったけれど、心のなかでは密かに感動していた。
年齢も、子どもの数も、性格も違う私たち。
しかし妻たちは「夫の体調不良」に関してここまで同じ思いを抱えて生活しているのか…!
そう思うとなんだか感動すら覚えたのだ。
とくに「体調不良に便乗問題」は私もよく感じており、彼には悪いけれども大いにうなずきたいところ。
幸いなことに健康体で大体いつも元気な私だけれど、たまに「寝不足で頭がいたい…」と漏らす時もある。
それを夫に言うと、なぜか高確率で「僕も~」と返されるのだ。
……はい?
いま私がつらいという話をしているのに、それは少しのねぎらいの言葉がほしいからなのに、「僕も~」って逆に自分がいたわられようとしてない?と若干苛立ってしまう、心のせまい私。
そして実際に「ねえ、今は私がいたわってほしいの!」とジャイアンよろしく直接的にいたわりを彼に要求してしまうことすらある。笑
もちろん彼には彼なりの苦労があり、私からは見えていない大変さがあるはず。
だから私が弱音を吐けば彼もいっしょに弱音を吐きたくなるのかもしれない。
「私ばかり/僕ばかりが大変なのではない」とお互い理解して、いたわりあうこと、それがきっと家庭円満の大きな鍵なのだ。
……それは頭ではわかっているつもり。
ただ、つねにそのように大らかな優しさを心に湛えていることが難しいということも、赤ちゃんとの暮らしで感じている。
そんなときに救ってくれるのは目の前にいるパートナーではなく、それぞれの持ち場で奮闘しているママたちなのだと思う。
よく「女性は結婚したら/子どもができたら変わる」というけれど。
自分がいざその立場に置かれるまでそのことがよくわからなかったけれど。
もうこればかりは仕方ないのだ、こちらだって体は一つ、自分と子どもと夫、みーんなお世話するなんていまはちょっと無理な話。
夫には「自分のケアは自分でしてね♡」というしかない。
だけどそれは私が鬼化したという個人的変化ではなく、言うなれば環境のなせる仕業。
だってちょっとあたりを見回せば、同じ現象がそこここで起きている。
そう思えたら気が楽になる。
大事なのは、彼にやさしくする余裕がないのは手のかかる赤ちゃんが増えたことによる物理的なキャパシティの問題であって、彼へのやさしさ、ましてや愛情が減ったのではない、ということ!
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