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#33 築地は市場とがんセンター。1日1日、あるがままを受け入れて生きること

腸炎を原因とする急激な体力落ち込み等々の紆余曲折の末、放射線治療の”仕上げ”に、無事、3回のRALS(ラルス)を受けることが出来た。
当初のスケジュールは、低すぎる血圧や免疫抑制などの体調不良で施行の許可が下りず、流れてしまったのだが、放射線科のドクターのご尽力により、一週遅れでリベンジが叶った。

ラルスは、身体の中に針を刺して、そこから、超至近距離から高エネルギー放射線を、腫瘍目掛けて照射する、チョット恐ろしい日帰り手術。コレについては、国立がん研究センター病院で受けるのが最善の選択肢、とのお話をドクターから頂いて、コチラ(東急沿線)の病院に入院中のまま、がんセンターの治療が受けられるよう、諸々を整えて頂いたのだった。

国立がんセンターは、築地市場の目の前にある。
2016年4月、豊洲移転前の築地市場でホンモノのセリを見学することが出来た。
ビジネススクールの先輩に、仲卸のご関係の方がいらして、その方のゼミにお邪魔させていただき、一般人は入ることができない時間帯、エリアまで見られる超ラッキーチャンスを頂けたのだった。


午前3時。真っ暗なうちに場内へ

豊洲移転が決まり、その問題点(漏水とか、現場感のない店舗設計で、スペース的に包丁が引けない、とか)が噴出し、議論も紛糾していた頃だ。小池都知事の、「築地は守る、豊洲を活かす」という謎めいた表明があったのは翌年の2017年。訪れた築地場内は、もの凄い活気だった。

ズラリと並んだクロマグロ。マグロ、マグロ。冷凍マグロはゴロリゴロリ。
鳴り響く鐘。
真っ暗なうちから、白々と夜が明け始める間じゅう、ずっと走り回っている謎の乗り物。なかなかのスピードだ。ボヤボヤしていると、轢かれそうになる。


後ろに荷台のついた不思議な乗り物の名前は、ターレット。



マグロのセリは迫力満点だった。鐘の音、怒号のような大声。場内所狭しとズラリと並んだ巨大マグロ、行けども行けどもマグロ、マグロ、マグロ。生マグロは黒々と並んでいる。冷凍マグロは、いささかぞんざいに、ゴロゴロと横たわる。
セリが始まると、みるみるうちに、これまた謎の、バールのようなものに引かれて、マグロが消えていく。


行けども行けどもマグロマグロマグロ ただいま目利きタイム
そろそろセリがはじまるのか、場内のボルテージが上がってきた


冷凍マグロは、ただひたすらに横たわる…

しらすのセリも見せて頂いた。
コレって、同じセリなの?と目を(耳を)疑う。あまりにも静かだからだ。それぞれ升に山盛りのしらすが、活発に取引されているのだが、目利きの職人さんも、ひたすら物静かに検分なさっている。こちらのセリ場は研究室みたいだ。

マグロの方は、祭。祭のクライマックスだ。
扱うものが違えば、自ずと、アプローチは変わるのだ。

広大な場内の壁面は、緩くカーブしているのだが、コレは、昔、場内の敷地にはぐるりと線路が敷いてあっだからだという。貨車が乗り入れていたのだ。物流の大動脈が汽車だった頃から、この市場は、この場所にあって、巨大なエネルギーを放出していたのだ。

未明に始まった見学ツアーも、太陽が昇り、世の中が動き出した頃、建屋の屋上に上らせて頂き終了。場内全景を目に焼き付けた。
巨大なスーパーマーケットチェーンなどによって、物流革命が起き、仲卸業界はピーク時の四分の一に縮小してしまったことをこのツアーを案内くださった仲卸会社の方が話してくださった。
東京都は、この築地市場について、その優れた立地に見合う活用が出来ていない、との課題を指摘し、ココは解体して、その後、もっと収益の上がる土地活用を考えることを決めてしまった。
築地市場の建物の老朽化や交通の利便性などの問題も、もちろんあっただろう。しかし、この活気に溢れ、歴史を生き抜いてきた築地市場を更地にしてしまって、本当に良いのだろうか、、、という気持ちがずっと拭えないでいたのを、今でもよく覚えている。 
それから程なく、小池都知事が、築地は守る、と言った、その、守ったものは、守られたものとは、一体、なんだったのだろう。

さて、見学ツアーの興奮冷めやらぬまま、皆んなで場外のおすすめのお寿司屋さんに直行した。ツアー終盤からお腹の虫が鳴りっぱなしだったワタシには、たまらない美味しさだった…。

さてさて。
ラルスは何処へやら。
築地市場の思い出を書き始めたら止まらなくなってしまった。
それも、今朝の穏やかさのおかげだろう。
こんなに素敵な思い出なのに、手術に向かう日、更地になってしまった築地市場を目にした時には、全く、忘れてしまっていた。
同じ景色でも、明るい色彩か、暗く沈んだ色調に見えるのか、
それもココロ一つが決めているのだと、気付く。
一日一日を、あるがままに、あるがままの色彩で受け入れて生きよう。

写真は、夢のような築地ツアーの最後、
建屋の屋上から見下ろした築地市場。
左手奥の方を見ると、なるほどたしかに、緩くカーブしているのがわかる。
ココに線路があって、汽車が乗り入れていたことの名残だ。そして、今。ココは、外科の手術痕みたいな更地になってしまった。
しかし、場外の、美味しいお寿司は健在だ!!
回復して、食べに行くのが楽しみだ。


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