見出し画像

母との思い出の道を20年ぶりに歩いてきました。

私の母は片足が義足です。幼少期に事故で失いました。ついでに片腕も。
私はそんな母の長女です。
石川県で生まれて、生後1ヶ月で父の故郷、栃木にやって来ました。
私達家族が栃木に来た頃は、身体障害者の雇用があまり無く。加えて男気を見せたかったクソ親父が母の就労を阻止したため、母は専業主婦でした。

私のあとにも男の子2人に恵まれ、賑やかな家族となっていきました。
でも、身体にハンディがありながら、子育てするのは本当に大変だったろうなと、今も思います。

そんな母は、時間があるとよくお散歩に出かけてくれました。当時出だしたばかりのシニアカーで。今はおじいちゃんお婆ちゃんが買い物とかで使う3輪電動バイクです。
母は義足のため長時間歩けなかったので。

母が膝に末っ子を乗せて、私はてくてくあるいて。

ずっと、この川沿いの景色を眺めながら歩いていきます。
田舎なので、コンビニに行くのもあるいて1時間。
そんなちょっとしたお買い物ついでのお散歩。

春は山桜の桜吹雪、あぜ道にはタンポポやヨモギの新芽が沢山。
小鳥が鳴く練習をしていて。ぎこちないホーホケキョに笑ったり。

夏は木が大きな木陰を作ってくれて、涼しい風を感じながら。隣に流れる川の音もさらさらと。

秋は、夏の木陰だったところに、たくさんのドングリが転がります。
踏んづけると、パチパチと音を立てて弾けてく。

冬は寂しい風景ながら、焼畑や焚き火の煙の匂いが仄かに感じられます。静かな散歩では、母のシニアカーの走行音だけ。
たまに途中の自販機で買ってくれた温かいココアは、幼い私には贅沢品だった。

小さな団地を仰ぎみるように伸びてる道。
その団地にはお友達がいて、季節を問わず、走り回った道。

それから約20年。

息子とお散歩してきました。曇り空。
先の夏の大雨で、根っこがあらわになってたりして、全く一緒の景色ではないけれど。

とてもとても、懐かしかった。
ワクワクするような、シクシクするような感じ。

母は、どんな気持ちでお散歩してたのかな。

この道の先には見事な枝垂れ桜が咲きます。
咲く頃にまた、息子を連れて、母も連れて、行こうかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?