見出し画像

流通の「場所」

 私の個人文芸サークルはとても弱小なので、文学フリマではせいぜい十冊程度、良くて二十冊程度しか売れない。そもそも純文学ブースは売上が良くないと言われるが、それでも人気のサークルとなるとかなり集客があるので、純粋に私のアピール不足なのだろうとは思う。

 しかし見方を変えるなら、一ヶ所の売場で、かつ一日で十冊も売れるというのは結構なことなのだ。書店では、当然ジャンルにも依るけれど、最初の一ヶ月で数冊売れればそれで上々、次々押し寄せる新刊に場所を奪われ、十冊どころか五冊も売れないうちに売場から消えるというのは珍しいことではないという(これは某書店員による証言)

 全国各地の書店全てを足し合わせれば何千部もの流通になるが、一つの書店で、かつ一日で十冊も売れたら余程のヒット商品だ。書店の流通に乗る、というのは数の勝負を仕掛けられるという意味で強大ではあるけれど、アマチュア作家でも参加出来るうえにピンポイントでそこそこの売上を見込めるという意味では文学フリマだって充分強い。

 文学フリマなら、純文学プースに紛れ込めば、純文学を読み書きしてる読者にぶらっと何となく立ち寄って貰える可能性がある。しかし特に異世界転生ものなどのファンタジー・ライトノベル優勢な小説投稿サイトでは……普通のライトノベルですら「#非なろう系小説」なんてタグでアピールを行うぐらいなのだから……純文学はどうしても目立ちにくいし、noteなんかと比較しても見知らぬ人達にぶらっと立ち寄って貰えるようなシステムではないらしい。勿論それ故に、投稿サイトの環境に上手くフィット出来れば、とんでもない数の読者を獲得出来るかもしれない。

 自分の作品が読まれるに相応しい「場所」を探すこと。勿論「場所」を自ら創ってもいい。個人では限界があるけれど、それなりの規模の「場所」が盛り上がれば外側からの注目も集めやすい。例えば投稿サイトの隆盛の恩恵を余り受けられない純文学にとっては、文学フリマは直接読者を獲得出来る稀有な場所だ。大手純文学新人賞に応募して受賞したり、大手の文芸団体に所属して転載という形で文芸誌デビューしたりという従来の筋道とは別の、もっと直接的に読者を獲得して、かつ空間的にも盛り上っていけるような「場所」は可能なのかどうか……

 まぁ、私の場合は、それ以前に執筆の遅さをどうにかしなければならないんだけど、面白い「場所」があったら教えて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?