見出し画像

文学フリマと純文学

 文学フリマ発足の背景には大塚英志の発言に端を発する純文学論争があったと言われる。けれど現在の文学フリマは特に純文学というジャンルに拘らない、というか、普通に純文学ブースよりもエンタメ小説、詩歌句、評論などのほうが存在感が大きく、コミケやコミティアではどうしても傍流になってしまう活字系同人誌が一同に集まるオルタナティブとしての即売会……という趣が強い。

 活字系の同人誌そのものが漫画系・イラスト系同人誌に比べると売れにくく……というか漫画系・イラスト系同人誌が特異的に流通が巨大過ぎるのだけども……更に純文学ブースとなると他のブースより人通りが乏しくて、新規サークルさんなど思ったより売上が悪くて早々に撤収してしまったりする場合もある。地方の文学フリマなら気楽に会場全体を回れるので見知らぬ人達に立ち寄って貰える確率も上がるけれど、より規模が大きな文学フリマ東京ともなると来場者もほぼ狙い撃ちでサークルを回るようになるので、サークルの知名度や事前の宣伝、他サークルとの付き合いの広さ、ブース設営の上手さなどが大いに売上に影響してしまう。純文学だからって孤高に甘んじていたら誰も寄ってくれない。無精な私でさえちょっとは頑張る。

 文学フリマは在野の純文学作家にとっては稀有な流通の場ではあるのだけど、一方でアマチュア純文学が直面している流通の弱さ、単純な読者獲得の難しさを思い知らされる場所でもある。私だって、もう十年近い長年のサークル活動で顔を覚えて下さった常連さん達の御厚意があって、やっと十五冊から二十冊の売上を確保している状況だ。

 下手をすれば身内に閉じ籠ってると言われかねないと思っている。わざわざ「雑文学」なんて言葉を捻り出さねばならなかったのも、私が文学フリマの純文学ブースという「場所」に依存してしまっている現状が前提にある。

 人付き合いが得意ではない、宣伝も得意じゃない、ブース設営のノウハウもない、しかもジャンルは読まれない売れないと揶揄され続けてる純文学。そういう新規のサークルさんにとっては、文学フリマですら充分に高いハードルだろうなと思う。そういう新規の純文学作者でも参加しやすい「場所」があるといいな、とは思う。例えば、サークル参加を躊躇ってる作者でも気軽に参加出来る、開かれた公式アンソロジーを企画して、経験豊富な代表者がブースで販売するみたいな……誰か遣ってくれたりしませんかね?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?