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日野啓三


 平林たい子文学賞、芥川龍之介賞、泉鏡花文学賞、芸術選奨、谷崎潤一郎賞、伊藤整文学賞、野間文芸賞、読売文学賞、日本芸術院賞を受賞、芥川賞の選考委員にも選ばれている、まさに文壇の重鎮、と書くとなんか如何にも凄そうな気がしてくる。Wikipediaから引っ張ってきた作家・日野啓三の華やかなる受賞歴である。

 ……日野啓三って、そもそも皆さん御存知です?

 詳しくはWikipediaの当該ページを確認して頂くとして、作家・日野啓三は内向の世代に属し、1966年にデビュー、75年に芥川賞を受賞。その後も息の長い活動をしており、既に還暦を迎えているはずの90年代に伊藤整文学賞、野間文芸賞、読売文学賞と著名な文学賞を獲得している。詳しい文壇事情なんかは全然知らないが、恐らく純文学作家として「成功した」キャリアの一つの好例だろうと思う。

 ……しかし、私達は日野啓三という名前を聞いてもいまいちピンとこない。現代においては知名度の高い作家とはいえない。有名な代表作があって、現在でも新潮文庫なんかで本屋に並び続けてるわけでもない。一応講談社文芸文庫で復刊されたりはしているらしいので、全く流通してないってわけではないのだろうけど、新しい読者が進んでそれを探し当てようとする機会は多くはないだろう。

 私は「文壇的評価」という虚しい響きについて考えてしまう。あれだけ沢山の文学賞を受けたのだから、日野啓三は間違いなく文壇的には成功した作家だったはずだ。しかし、文壇での成功が、後世の世間の評価まで保証してくれるわけではない。文壇を離れたら、彼は今やほぼ忘れられかけた目立たない作家に過ぎなくなってしまう。

 さてこれもWikipediaからの引用。芥川龍之介賞、女流文学賞、平林たい子文学賞、紫式部文学賞、川端康成文学賞、芸術選奨、紫綬褒章、野間文芸賞、読売文学賞,旭日小綬章,谷崎潤一郎賞、泉鏡花文学賞を受賞。特に谷崎賞は2019年、泉鏡花賞は2021年と、まさに現役で高い評価を受けている作家でもある。さらに勲章まで受勲した、そんじょそこらの芥川賞作家では到底太刀打ち出来ない立派な文壇的キャリア。そう、私は、実は、知らなかったのだけど、きっと文芸に詳しい皆さんならば当然名前を知っているはずだろうし、既に読んでらっしゃるだろうし、最近文庫化もされてたので本屋でも見掛けたし、うん。

 ……村田喜代子さんって、皆さん御存知です?


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