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土に学ぶ、プロジェクトのつくり方/自然栽培とファシリテーションの関係

はじめに

こんにちは。内村です。だいたいうっちーだったりうっちゃんだったりします。あと百姓だったりファシリテーターだったりもします。

はじめてのnote記事となる今回は、自己紹介を兼ねたファシリテーションの探求記事です。

いまの自分を形作る根幹になっている個人的な経験と、そこから気づいた土と人の関係性について考察してみたいと思います。

有機農業に憧れて

「方向性の違い」というバンドみたいな理由で大学院をドロップアウトしたぼくは、環境問題への興味から、有機農家さんを中心に全国の農家で住み込みの仕事をしていた。

最終的にたどり着いたのが、岩手県花巻市にある自然農園ウレシパモシリというところ。ここではパーマカルチャー自然栽培の手法を取り入れて、野菜、米、鶏、豚などを幅広く扱う複合的経営を行っていた。

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パーマカルチャーもぼくにとってはすごく重要な概念だったので紹介したいところだけど、ここでは今日の主題に強く絡む自然栽培の方について少し説明したい。

植物は「育てる」のではなく「育つ」自然栽培の在り方

自然栽培とは何かをごく簡単に説明すると、
「何も持ち込まない」
農法のこと。

農薬や化学肥料はもちろん、有機農業で使われる堆肥も使わない。要は、植物が育つためには「その場所で生産されたもの」だけがあれば充分で、広い牧草地の草を食べた牛の糞や、他の田畑でつくられた植物堆肥は、必要ないどころか病虫害の原因になる、というのが基本的な考え。

庭先にある柿や栗の木を考えてみてほしい。肥料や堆肥をあげたことがない、放置された木では収穫できないのか?決してそんなことはない。

実りの少ない外れ年もあるけど、採りきれないぐらいたくさんの実りが得られる年もきちんとある。このことが「何も持ち込まなくても植物は育つ」という事実を示している。

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だからといって、自然栽培の場合は放任するわけではない。「栽培」という言葉を使っている通り、耕したり、排水を良くしたりといった働きかけを行う。土づくりを進めていくことで、植物はしっかりと根を張り、肥料をあげなくてもきちんと育つようになる。

つまり、「肥料を与えて作物を育てる」のではなく、「作物が自分で育つための環境を整える」のである。

「肥料を与えて作物を育てる」ことの裏側には、「作物は肥料を与えないと育たない」という暗黙の常識、思い込みがある。この常識に疑問を持ち、種が持つ力を信じて発想の転換を図るのが自然栽培の在り方。

あと、肥料も農薬もまかなくていいうえに、土づくりが進むほど病害虫が減っていって、雑草も減っていく農法なので、めちゃくちゃ楽になるやり方でもある。余計なことはせずに質の高い結果を得られる、ここも結構大事なポイントだと思う。

自然栽培農家とファシリテーターは同じことをしている

自然栽培を実践してその考え方を身につけていくなかで、ふと、大学生の頃に受講したファシリテーション講座のことを思い出した。
ファシリテーションの要点は、「相手のことを信じて自発性を促す」ことにある。細かく指示を与えて相手を動かすのではなく、相手が本当は何をしたいのか?という点にフォーカスして、相手が自発的に動くための環境を整えるのである。

あれ、これって自然栽培と同じでは?

このことに気付くと、数珠つなぎ的に色々な相似が見えてくる。
例えるなら、種は行動の源泉となるアイディアであり、作物は人々の行動、プロジェクトである。そして、プロジェクトは人々の関わりによって生まれる。つまり、土は人々の関わり、コミュニティである。

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プロジェクトを農業に置き換えていくと

この相似形を利用して、良いプロジェクトの成果=収穫物を得るためにはどこにフォーカスすればいいかを導くことができる。

自然栽培的に考えると、良い実りを得るためのアプローチとして①土づくり②種づくりという2つがある。
①土づくりはつまりコミュニティのことなので、人々の関係性の質が高まればおのずと成果も出る、ということになる。これは、ダニエル・キムが提唱している「成功の循環モデル」とも合致している。

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関係性の質を高めるための方法として、ファシリテーションワークショップは(正しく扱えば)大きな力を発揮する。


もう一つの②種づくりについても考えてみよう。
自然栽培では、よそから持ち込まれた種や品種改良による新しい種よりも、その土地に昔からある在来の品種がよく使われる。そして種を自分で採って翌年また使うことで、その場所に適した種へと進化していく、という考え方をする。
これを人に応用するとどうだろうか。

種とはアイディアのことである、という仮定のもとに話を進めていく。
「在来の種」は、「その地で昔から培われてきた文化や知恵」と置き換えることができる。
また、種が得られるのは成熟した実からである。成熟した実、すなわち投げ出さずに最後まで取り組んだプロジェクトの成果からは、より洗練された未来へのアイディアが得られるのではないだろうか?そして、これを継続していくことで、アイディアは研ぎ澄まされていく。

まとめ:土から学ぶプロジェクトの育ち方


1.アイディアはよそから持ち込んだ全く斬新なものよりも、地域の文化をよく活かしたものを選ぶ
2.順調にいかなくても最後までとりあえずやってみないと、次への種は生まれない
3.継続することでアイディアはその環境に順応していき、人々の関係性もより深まる
4.良い成果を出すためのアプローチとして、トップダウンの組織構造よりも、主体性と関係性の質を高めるファシリテーションの手法を取り入れる


以上の信念に基づいて行動することで、成果の質はより良く、労力はより少なく、種まきできる範囲も広がっていく、という仮説を立てることができる。

こんなのめちゃめちゃ理想じゃないですか。時間はかかるかもしれないけど。

ただ、あくまでも仮説なので、検証して仮説を更新していくのが大事。もしこの仮説に共感してくれた人がいれば、ぜひ一緒に実験をしてみましょう。

おわりに

最初の投稿なので短めにしようと思ったらがっつり長めになったので今日はこのあたりで。じゃあ肥料は何に例えられるの?とか、水はどう?とか、「土に学ぶ○○シリーズ」はまだまだあるので、折をみてぼちぼち書き留めていきます。

それではまた。



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