虚構怪談話-イタズラ-
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これは私が保育園の頃の話なんですけど。
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その日は、久しぶりに祖母の家で過ごすことになっていました。
二階建ての家;今は一階と二階にそれぞれ祖父母と私たちの両親の二世帯で住んでいますが、当時は一階に曽祖母、二階に祖父母が住んでいたんですよ。
「ばあば!」
「来たんでー」
そんな玄関での簡単なやり取りの後、祖母は二階ではなく一階に通してくれたんです。
-なんでやろ?-
そして一階のリビングには…曽祖母がいなくて。かなり戸惑いましたね。
「ばあちゃんは?」
「今はな、病院」
ちなみにこの頃、私は曽祖母のことを“ばあちゃん”、祖母のことを“ばあば”と呼んでいました。
高校生の今でも祖母のことは“ばあば”呼びです(笑)
閑話休題。
この日は残暑が厳しかったので、水羊羹とポカリをおやつにテレビを見て過ごしていました。
そんなとき、
『ガチャリ』
玄関のドアが開く音が聞こえた気がしたんです。
まぁ、テレビに夢中だったのでそこまで気にするつもりはなかったんですよ。
「ただいま」
聞こえたアルトソプラノの声は母のものでした。
思わずテレビを消して玄関まで迎えに飛んで行きましたね。
ママっ子だったもので。
コアラのように母に抱きついた私の背中を軽く叩いた母は、「ただいまー」と私をそっと離すと、リビング横の台所に居る祖母のもとへ行ってしまいました。
玄関に残された私は台所から聞こえる祖母と母の話し声を聞いて「長くなるだろうな」と、再びテレビを見るためにリビングへ戻ったんです…が、
『ガチャッ』
またですよ。
玄関のドアが開く音が聞こえたんです。
思わずUターンして玄関まで様子を見に行きました。
でも…
誰もいませんでした。気のせいだったのかもしれません。
「どしたん?」
不思議そうに尋ねながら玄関まで歩いてくる祖母と母の姿を見ながら、ほんの出来心ですが大人たちを怖がらせてやろうと思ってしまったんですね。
ニヤけている顔の力をスッと抜いて、誰もいない“ところ”を指さして、私は言いました。
「女の子がおる。おかっぱの、赤いスカートの」
我ながら、大胆なウソだったと思います。それを聞いた祖母は笑いながら「ろーたすちゃんを攫いにきたんちゃうで?」と脅してきました。ノってくれたのは嬉しかったのですが。
二日後。
曽祖母は亡くなりました。
当時の私は気にも留めなかったのですが、母や脅してきた祖母さえもこう言うようになりまして。
「ろーたすちゃんが見た女の子は、ばあちゃんをお迎えに来たのかもしれないね」