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傘子の思い出2

梅雨に入り、私の傘美は忙しくなりました。。

「ネエ、、もう傘子さんの首が折れてから3回忌ね」
こぶ茶を口にしていた私は思わずこぼしそうになりました。

今まで、一言も傘美は傘子の話題に触れていなかったので、私の心は動揺しました。
何事も起こらない、無事平穏な傘美との生活が一挙に崩れさる思いがかすめました、、

「傘子を殺したのは、杖の代りに使っていたからだろう !」

警察の再三にわたる尋問に耐え、結局 台風による不慮の事故 として逃れる事が出来ました。

傘美は、傘子の事はまるで知らない筈なのに。。。
まさか私が傘子を、杖の代りに使っていたなんて知るはずもありません。
返答に困っていた私を見抜いてか、傘美は続けて言いました。

「私の足も随分錆びてきたわ、、ほら。。それに、、、」
傘美は、何故か私に体の不調を訴えました。

「な、何言っているの、、まだまだ君は美しいよ」
そう言いながら、私は心の奥底にしまいこんでいた ある計画 を思い浮かべてしまいました。。
実は、来週の火曜日は 燃えないゴミの日 なのです。
これは隣の叔母さんから聞いた確かな情報で、 傘美が調度入るくらいのダンボール箱を用意していました。

「どうしたの、なんか顔色がわるいわ」
「どうも昨日食べた、特上うな重 1500円也 が原因らしい・・・」
「ソウ・・・・」
何時もなら、  「 そんな豪華なもの食べるからよ」 ト言う明るい返事が返ってくるのが、なぜか返って来ませんでした。

「傘美、、 今度 地下街でも散歩しようか、、 」

傘美は、 すなおにゆっくりと首を縦に振りました。。

後日、ゴミ山の中からダンボール箱に入っていた首が折れた身元不明の傘が発見されたと新聞に載っていました。

雨の振る日、、傘をさしていない男、、それはきっと私です。。

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