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【7FATES:CHAKHO】仁王山のボム岩に登ろう!【聖地巡り】

どこぞの掲示板みたいになってしまったが、表題のとおりである。

下に見えるのが虎の耳部分だ

ついに、本物のボム岩に登ってきたぞ!!

『7FATES:CHAKHO』では、ジェハが生まれ育った場所であり、「影の世界」からボム族がやってくる「門」でもある仁王山イヌァンサン(인왕산)。なかでもボム岩は、物語の根幹にかかわるキースポットだ。

LINEマンガ『7FATES:CHAKHO』1話 より / こんな立派な階段はなかった

韓国現地には、モデルになったと思しき同名の岩がある……となれば、行きたい気持ちは膨らむ一方。だが、麓の仁王寺イヌァンサ禅岩ソンパウィならともかく、ボム岩はあまり観光客が行くような場所ではないようで、情報が散逸していた

そこで、この記事では、備忘録も兼ねて、「こうやってボム岩まで行ってきたよ」のお話を順を追って書いていきたいと思います。

2ヶ月ほとんど引きこもり&山登りは初めて……な筆者による、体当たりのボム岩レポとなります。ボム岩に登ってみたい方はもちろん、登山気分を味わいたい方まで、広くお楽しみいただけますと幸いです。

(というか『CHAKHO』抜きにしても、めちゃくちゃ景色が綺麗だったので、ひとりでも多くの人と感動を分かち合いたい……;;)




事前準備

事前申込などの準備は特に必要ありません。

主な持ち物は以下のとおりです。

  • 水分

  • おやつ

  • 履き慣れたスニーカー(あればトレッキングシューズ)

  • 動きやすい服装

  • 帽子(日陰はほぼありません)

動きやすい服装で、両手を空けて、荷物をできるだけ少なくすればまずは問題ないかと思われます(たぶん普通の山登りですね……)。

山中には売店がないので、おやつや水分は事前に購入しておきましょう。トイレもないです

また、日本の山と違って岩肌の上を歩くため、岩に砂利が積もってとても滑りやすい。手をついてしまう場面もしばしばあった。スニーカーでも無事に帰ってこれたとはいえ、ちゃんとした登山靴があればもっと安心できたのだろうな……とは思う。

以下のサイトでは、コースごとに難易度をつけて紹介してくださっていますので、なんとなくイメージがしやすいかと思われます。

周囲の登山客を見た限りにはなりますが、ボム岩を超えて山頂を目指すのであれば、もう少ししっかりとした装備(グローブ、ステッキなど)が必要になるようです。


アクセス・周辺の観光スポット

ソウル地下鉄3番線독립문トンニンムン」駅が最寄駅となります。
麓にある仁王寺山門までは、ここから15分ほどかかります。

周辺には、清からの解放を広く知らせるために造られた独立門や、日本統治時代に独立運動家が幽閉されたことで知られる西大門刑務所歴史館があります。どちらも韓国の独立に深く関わる場所であり、(薄っぺらい言葉になってしまうのが悔しいですが)日本人としては考えさせられるものがありました。

また、一駅先には景福宮国立現代美術館(ソウル館)をはじめとして、多くの施設が点在しています。もしこちらに訪れる機会があれば、すこし足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


いざ、仁王山!

前置きが長くなってしまったが、ここからは、実際に辿った道のりを写真付きで振り返っていきたい。

仁王山のハイキングコースは色々あるようだけれど、私はまっすぐボム岩まで向かえるルート1を参考にした。以下の4つのスポットが目標となる。(※サイト内で紹介されている独立門は、仁王山とは逆方向になるため注意)

①仁王寺一柱門

仁王寺イヌァンサ

禅岩ソンバウィ

④ボム岩(虎岩ボンパウィ

案内板はあまりないけれど、道中では、現地の方ともしばしばすれ違った。道がわからなくなったら、思い切って尋ねてみてもよいのではないだろうか。ほとんどの方は快く教えてくださった。 (私は韓国語ができないので、上記のスポット名を連呼するだけだったが、それでも)


①トンニンムン駅〜仁王寺一柱門まで

まずは、最寄りのトンニンムン駅から、仁王山一柱門を目指そう

駅の階段を上がって地上に出ると、左手に車道を挟んで大きな広場西大門独立公園)が、右手には背高く立ち並ぶ集合住宅が見える。その背後にそびえ立つ岩山こそが、これから登る仁王山だ。

訪れたのは5月末ごろだったが、青々とした新緑と、グレーの岩肌のコントラストがとても美しかった。見上げているだけで気圧されそうな、威容。

仁王山が見える方向へ進んでいくと、集合住宅同士の玄関をつなぐ、なだらかな坂道へと出る。仁王山を右手にしながらどんどん登る。

時々頭上を見上げると、「인왕사イヌァンサ(仁王寺)」と書かれた標識を見つけることができた。

斜面に沿って、何度目かのカーブを大きく曲がると、坂の上に色鮮やかな朱色の山門が見える。仁王寺の入口、一柱門に到着です。

見た目以上にすごい坂だ

色合いや造形がどこか沖縄の建築に似ている……と感じたのは、おそらく琉球文化のルーツが朝鮮半島(をはじめとする東アジア)にあるからだろう。


②壁画と山寺建築の美——仁王寺(イヌァンサ)

門をくぐると、まずとんでもない角度の斜面に歓待される

自動車がパワフルに坂を駆け上がるさまを横目に、砂にまみれた敷石を踏み締めてえっちらおっちら登るのだが……、何を隠そう、仁王山登り、初の転倒はここでした

まだそんな……山らしい山でもないのに……。

坂をあがるといくつか石段が伸びているが、ここでは正面のものを登る。左右を色とりどりの壁画に挟まれる道だ。観光サイトでもよく写真付きで紹介されているスポットである。

いつ描かれたものかは定かでない(調べきれなかった)のだが、墨で引かれた線がすごくいきいきとしていて、目を奪われた。

わたしが普段好んで見るのは、「余白の美」をよしとする日本画ばかりなのだけれど、隙間なく緻密に描きこまれた壁画は、むしろその密度でこちらを殴りつけてくる。

木々も、山も、海も——どれもが力強くうねり、混ざり合う。まさに大いなる自然の力を思わせる壁画の数々を見て、ここ仁王寺が、国家守護のために建立された、韓国の聖地だということを実感させられた。

さて、ブロックパズルのように組み合わされた山寺建築にほれぼれしていると、右手に国師堂が現れる。

中にも入れるらしいが、入口がわからなかった

リンクによれば仁王寺は、「山岳信仰と仏教とが結びついた信仰地」らしいのだが、いきなり伽藍らしい伽藍が現れて驚いた。しかも色鮮やかな朱・青・緑色で、小さなパーツのひとつひとつまで絢爛豪華に飾られているとなれば、もう圧倒されるしかない。想像するだに恐ろしい、果てしない工程。こんなものが、人の手で作られたというのだ。

美しく荘厳な仁王寺だが、実は廃寺や焼失を経験しており、今見ることのできる建築群は1910~1942年に再建されたものだという。

上記の方が、韓国在住中に聞いた現地のお話などと合わせてまとめてくださっているので、訪問前に一読しておくとより楽しめるかもしれない。


③信仰の集まるところ——禅岩(ソンパウィ)

いくつか分岐があるが、すべて左へ進む

国師堂の目の前にある石段を登り、左向きにぐるりと回り込みながら進むと、長い階段が現れる。

階段の先に見えるのが禅岩(ソンパウィ)だ。

仁王寺やこの先の虎岩とは違い、四方が囲われているので、正面切って階段で登っていくことになる。巨大な奇岩に見下ろされながら、脚を動かすことになるのだが……ここに階段を造った人たちは、きっと禅岩のことを心から畏れ敬っていたのだろう。

禅岩は別名「祈子巌キジャアム」とも呼ばれ、古くから、子宝に恵まれたい婦人達がここで祈りを捧げたという。この日も熱心に参拝する人がいたため、禅岩の写真は撮っていない。

長い年月を経て風化した、穴ぼこだらけの奇岩。その前に、板張りの足場がある(雨風にさらされて、すっかり色が抜けてしまっていた)。

岩の前には賽銭箱も置かれており、参拝客が残して行ったのであろう溶け残りのろうそくや、果物などが供えられていた。ちょうど僧衣を着た方がいらしたので、ウォン銭を入れさせていただき、簡単にお参りをした。少しでも、ここを通過させていただく礼儀となっていれば良いのだが……。


④ソウルを見下ろす虎——虎岩(ボンパウィ)

実は、禅岩を過ぎると坂はゆるやかになる。その代わり、道がだんだん道らしくなくなってくる。たとえばこんな風である。

木々の間に石段があるのがわかるだろうか

岩やね……。

禅岩を通り過ぎたところに人がいたので、「あの……ホランイ……」と訊くと不思議そうな顔をされてしまった。慌てて「ボンパウィ」と言い直すと、腑に落ちた顔で、青々と茂る松の間を指さし、「Have a nice day!」と見送られる。

上の記事によれば、「今ポピュラーに使われるのはホランイ」だが、「古くから用いられてきたのはポム」ということなのだそう。『CHAKHO』のモデルになったと言われる『檀君神話』でも、虎は「ポム」と書かれている。

左上に見える石舞台めがけて進む

松の間を抜けて、階段上の石に足をひっかけながら前へ進む。案内板もフェンスもないけれど、この道で合っているそうだ。落ちたら死ぬなあ……。

右手の岩にはハングルで何か書かれており、参拝客がいるようだ

雲ひとつない晴天で、身体中から汗が噴き出た。ちらりと見える地上が遠い。

それでも、脚を止めずに進んでいれば、いつかはたどり着くものだ。息も絶え絶えなところですれ違ったおじさんに、「ボンパウィ……」と尋ねたら、ぴかぴかの笑顔で「이(これ)!」と背後を指さされた

うおお……!!

うおお…………!!!!

虎の背中を登れるようになっている

うおおおお!!!!

ボム岩の背中から見下ろす絶景。360度の圧巻のパノラマたるや……。空が近く、地面が遠い。吹き抜けていく風が涼しく、とっても気持ちよかった。

ハルの背中か……これが……と思うと、なんだか胸がいっぱいになる。

LINEマンガ『7FATES:CHAKHO』2話 より

『CHAKHO』の中では、ボム岩の封印を解かれたあと、フポ率いるボムたちが新市へと駆け降りていく様が描かれる。フポはここから、新市を眺めていたのだ。

まさにソウルを見下ろすようなボム岩からの景色は、自分が悪役のトップになった気分で、なんだか妙にそわそわした。

遠くに見えるのは南山タワーですね。本当に快晴に恵まれた……。

体力・装備の問題もあり、わたしはここで引き返してしまったのだが、頂上を目指して登っていく登山客もちらほら見受けられた。

ボム岩より先の道のりについては、下記のブログで詳しく紹介されている。


さいごに

「『CHAKHO』の舞台になったボム岩を見に行きたい!」という、ただそれだけの気持ちで計画した山登りだが、景色も文化財もすばらしく、韓国旅行一の思い出になった。

「右」「左」すら言えない韓国語レベルで、ろくに遮るもののない日光に炙られながらガンガン岩肌を突き進んだことは、かけがえのない経験だ。

今回の記事を通して、「ボム岩まで行った気持ちになれた」と思っていただけたら(そしてあわよくば自分も行きたいと思っていただけたなら)、こんなに嬉しいことはない。

なお、コネスト韓国旅行の口コミでは、冬に仁王山登りを決行した人もちらほらいたものの、禅岩より上は積雪がひどいそうだ。残念だけれど、旧暦1月16日に合わせてのボム岩巡礼は、避けたほうがよいかもしれない……。

疲労によりピンボケしている

初夏の仁王山は、薔薇が緑によく映えて美しかった。平和を取り戻した新市でも、ジェハたちやボム族の皆んなが、手を取り合って生きていることを願う。