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狂おしいキッチン【エッセイ】

我が家のキッチンは、狭いうえに仕舞いきれないカップなどで調理スペースがごちゃついている。なので、料理をするときは片付けながら、コンロに皿を置いたり食器の水切りの上にカットした野菜のボウルを載せたりと、やりくりが大変。

ある晩、夫が、「お好み焼き作りたい」と宣った。
それを聞いて、一気にダル~くなる。

「旦那さんが料理してくれるなんて羨ましい」
「いいご主人じゃない。もっとありがたがりなさいよ」

そんな声が聞こえてきそうだが、私はダルいを通り越してキレそうになる。


夫は麺類が好きな男で、いまの仕事を辞めたら蕎麦屋をやるとかうそぶいている。蕎麦打ち職人になるといいながら蕎麦を打ったことはなく、才能は未知数。ふだんは、スーパーで買ってきたパスタ以外のあらゆる麺類を茹でている。

湯が沸騰する鍋から一本取り出してちゅるっとすすり、よし!と頷く。ざるに麺を上げて蛇口全開。これでもかと流水でガシガシ洗う。ぬめりをしっかり取って、喉ごしを良くするのだそうだ。さらには大量の氷をそこへ投入し、麺を引き締める。皿に盛り、私を呼びつけテーブルへ置けと命令。
先生、お次は何を?

お相伴にあずかりながらも、目の端に映る荒らされたキッチンが、私を憂鬱にさせる。
流し台はざるとボウルに占領され、コンロには白濁した湯の残る鍋がドーン。調理スペースには切ったあとはじかれた薬味が散乱。まな板と包丁は出しっぱなし。おろし金や皮むき器もすったもののカスがこびりついたままだ。

食べ終えたあと、それをブーブー言いながら……疲れているときは無言で、洗って片付けるわたくし。
ソイヤッ!(ノ`Д´)ノ彡┻━┻

で、今度はお好み焼き作るんだってさ!😉👍

惨劇のキッチン、新章に突入!

案の定、お好み焼きの生地でベタベタになったボウルが流しにボーン。菜箸やしゃもじにも生地がこびりつき、なぜかまな板にもベッタリ。千切りキャベツ散乱。

自分のお好み焼きは自分で焼きましょうということになった。まずは先生。サイズが絶妙に合わない先代のフライパンの蓋を現役のフライパンに被せて蒸し焼きにしている。
おー、すごいねー。ある道具は何でも使うねー。
私はいかに少ない道具と手数で片付けながら料理できるかに血道を上げているというのに、彼は重複しようが次々と新しい調理道具を出してきてダイナミッククッキングを展開

先生に倣い、というか置く場所に困り果て、結局私も自分の分を作る際、あの不一致の蓋をフライパンに被せる。
そろそろひっくり返す頃合いかしら?と蓋に手を掛けた瞬間、ボワンと熱々の湯気が手にクリティカルヒット!慌てて冷凍庫から保冷剤を取り出す。

料理は楽しい(こともある)。ときにストレス発散にもなる。
私の場合、整頓術を身につけてキッチンがスッキリ広々使えるようになれば、もっと幸福感が増すかもしれない。
いまは作りながら洗い物を平行して行い、スペース確保するのがやっとだが、そもそも、料理は片付けるまでが料理と考えている。流し台の排水溝とその奥まで磨けた日は心も軽やかになる。

作ることは尊い。だから、夫がキッチンに立って何かを作ってくれるのはうれしい。けれども、そのあとの惨劇を想像し、戦々恐々となる。

最近では、夫の調理後、どうしても疲れて私が食器や道具を洗わないでいると、翌朝洗ってくれたりもするので少しは良くなった。


さて……夫が蕎麦打ちを始めていよいよ店出すぞーとか言い出したら、その厨房の長はヤツになる。
そうなると頭に浮かぶのは、こだわりの蕎麦を打って茹でるというハイライトだけをやり
「天婦羅そば二丁あがり!違う!鬼おろしそばは8番さんだろ!ほら、お客さま待ってるんだからあっちのテーブル消毒してこい!」
と私をこき使い叱り飛ばす大将(夫)。もちろん、洗い物やごみ捨てなどの片付けはすべてわたくしが請け負うはめに。

(ノ`Д´)ノ彡┻━┻  ワカリハジメタ マイレボリューション!


最後に……
料理は楽しい部分だけをするままごとではないのだー!
と、ちゃんとした人っぼいことを述べ、本文を締めさせていただきます。



長めの愚痴エッセイにおつき合いいただき、ありがとうございました😊🍀

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