水晶体に映るきみ
おいしい、とパスタを頬張る
瞬きをした
フォークを使って麺を上手に絡ませ
そのまま口の中へ押し入れ
きみは時々顔を持ち上げて真っ直ぐを見つめる
水晶体に映るきみの目はなだらか
つくられた曲線
唇はあの夏に感じた甘い練炭を誘っているよう
この顔が意味することを知っている
自転軸のせいできみと出会った時の風景と匂いと場所は遠くへ流されていったからビデオカメラを朝起きてから夜寝るまで1日も欠かさず回していよう
自転軸に流されないようにと記録を撮り続けて
わたしはいつ目を覚ますのだろう
ビデオカメラを撮るわたしの風景はただ回っていくばかり
太陽が窓から部屋に侵入する朝の天井だって
月の光に照らされた枕元の闇だって
レコード
大丈夫だよ記録しているからこれでいつでも見れるよ
きみに見てもらうのきみと出会ってから今までの記録
きみが手に取るビデオカメラにわたしは映ってないでしょう
わたしが目にしたきみはいつも一人だった
「きみはいないね」
まわる
まわる
まわるそらの欠片が落ちてくる気配がして
わたしはベッドの上で回転してみる
天井が下にある
床が上にある
あの夏の日に貰った匂いの蓋が開き中を散乱させる
ミルキーウェイ
天井が下にある
床が上にある
わたしは回転してなどいなかった
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