<文章の書き方>Vol.2 お手紙de“書く”練習編①「伝えたいことを書き出し、整理し、型に入れる」
このnoteでは、私自身がライターとして仕事をする中で教わってきたことや気づき、「私はこんなことを大切にしています」ということを書き綴っていきます。
「文章を書くことに苦手意識があるけれど、気持ちや思いをじっくりと伝えるために、好きになれたらいいなぁ」「自分が出会った素敵な人や場所、出来事について、文章で誰かと共有できるようになれたらいいなぁ」と思っている方にとって、少しでも何かご参考になれば嬉しいです。
前回は「『1対1』最少単位の“書く”コミュニケーションツール『お手紙』」と題し、1人、誰かのことを思って、そのたった1人に伝えるために書く、お手紙を書いてみませんかと提案しました。伝えたい、具体的な1人を思い浮かべることによって、伝わりやすい文章が書けると考えているからです。
今回から数回に分けて、「お手紙de“書く”コミュニケーションの練習」についてお話ししていきます。「お手紙の書き方」ではなく、お手紙を書くことを通して文章を書く練習をしましょうという内容です。
練習編①は「伝えたいことを書き出し、整理し、型に入れる」です。
いきなり書き始めない
早速ですが、今からお手紙を書いてみましょう。お手紙を書く相手、1人のことを思い浮かべながら、どうぞ自由に書いてみてください。
・・・と言われて、すぐに書き始めることができた方は、書き慣れておられるのだと思います。「自由に=自分の好きなように」と言われても、なかなか書き出しにくくはありませんか? 「何を?」「どこから?」と書き出しや構成などが見えず、混乱してしまうんだと思います。
また、「こんなことを伝えたい」「それと、あのことも」と思い浮かんでいることはあっても、ペンを持って、いざ便せんに書き出そうとした途端に、何も書き出せなくなることはありませんか?
便せんを前にすると「文字やお手紙という形にまとめなければならない」という意識に囚われ、自分の中に広がっていた気持ちや思いが委縮してしまうように感じます。
マラソン前に準備体操をするように。文章を書く前にも準備しておくと、書き出してからもスムーズなんです。
今回は、書く前の準備体操として、
(1)伝えたい相手を思い浮かべる
(2)伝えたいことを書き出す
(3)伝えたいことを1つに絞る
(4)伝えたい目的を明確にする
(5)伝えるための要素を書き出す
という作業をしてから、お手紙を書き始めましょう。
それでは、各項目について例も交えながらお話ししていきます。
(1)伝えたい相手を思い浮かべる
お手紙を書く相手を1人決めましょう。
“書く”コミュニケーションの練習ですから、日頃からコミュニケーションがとれている、気軽にやりとりができる相手のほうが学びになるかもしれません。かしこまり過ぎず、気軽に書いて送ることができるでしょうし、後日さりげなく自分が伝えたかったことが伝わったのかの確認もできます。
(2)伝えたいことを書き出す
どうして、その人にお手紙を書きたいと思いましたか? その相手に伝えたいことは何ですか? 3つ以上書き出してみましょう。
この項目では「3つ以上」と言いながら、次の項目「(3)」では伝えたいことを1つに絞ってくださいと言います。結局1つに絞るのなら、最初から1つだけ書き出すほうがいいのではないかと思われるかもしれません。
ですが、頭の中だけで考えて、最初から1つに絞り込もうとするより、自分の中にあるもの(=情報、内容)をとりあえず書き出すことで、選択肢が増えます。最初は「このことを伝えたいんだ」と思っていても、書き出しながら「あのことのほうが大切かもしれない」「このことの根本には、こんな思いがあったんだ」と気づくきっかけになることもあるでしょう。書き出して、あとで取捨選択すればいいんです。
また、最初から「1つに絞らなきゃ」と思ってしまうと、完璧な1つを挙げなければならないプレッシャーで出にくくなることもあるでしょうし、よく考えずに挙げた1つゆえに書きながら「あれ、これを伝えたかったんだっけ?」「なんで、これ?」と迷いが生じやすくもなると思います。
ここはリラックス! どんなにしょうもないと思えることでも何でもいいですから、とにかく思い浮かんだものを「これはあり」「これはなし」とジャッジせずに、どんどん書き出してみてください。
たとえば、「何となく話しやすそう」「顔が浮かんだ」など、特に理由がなさそうに思えることでも、よ~く考えると「何となく話しやすそう=近況をしゃべりたいし、聞きたい・学生時代、よくしゃべっていた」「顔が浮かんだ=最近、元気にしているのかどうか、気になっていた・この前、よく一緒に出掛けた懐かしい場所に行ったばかり」などの理由が見えてくるかもしれません。
ほかにもつながりのある人たちはいるのに、どうしてその人の顔が思い浮かんだのでしょうか。そこには、きっと理由があるはずです。じっくりと、考える時間としてください。
伝えたい内容をいくつか思い浮かべました。ここで書き出した内容に少し言葉を足しながらつなげるだけでも、文章は出来上がります。
いかがですか? なんとなく、文章になっている感じがしますね。お手紙の場合は、これはこれで楽しくていいと思います。ですが、文章としてはいろんな内容が入り過ぎていて、最終的に「これ!」というものは残らなかったのではないでしょうか。
内容がてんこ盛り過ぎる!
実はこれ、私自身がライターの仕事で過去に何度か受けたことのある指摘、「あれもこれも書き過ぎていて、結局何が言いたいのかがわからない!!」なんです。
欲張ってしまうんです。あんなことやこんなことがある! あれもこれも、どれも書きたい! しかし、文字数は限られています。あれもこれも書いてしまうと、一つひとつのことに書ける文字数が少なくなってしまうんですね。読み手としても、覚えていられることに限りがありますから、「何の話だったっけ?」となる可能性が高まります。
結果、どれについても内容が薄く、何も印象に残りにくい文章になってしまうんです。
ライターの先輩に教えていただいたことは、「伝えたいことはタイトルの20文字程度に込める。そのたった20文字程度のことを伝えるための、本文2000文字やねん」。こうして今書いている文章も、タイトルの「伝えたいことを書き出し、整理し、型に入れる」を伝えたいがためのものなんです。
「これを伝えたいんだ」ということ、たった1つ、20文字程度のことだけを伝えるために、すべてを捧ぐ!! そんなイメージなんです。
(3)伝えたいことを1つに絞る
先ほど書き出した「(2)」の伝えたいことの中でも、今回1番伝えたいことはどれですか?
(4)伝えたい目的を明確にする
「(3)」で選んだ伝えたいことについて、どうしてそのことを伝えたいと思いましたか?
この内容は、相手にストレートには伝えず、そっとハートに秘めておく部分となります。軸です。書き進めながら、「そうだ! 私はこのことを伝えたいんだ」と何度も、ここに戻って確かめます。
(5)伝えるための要素を書き出す
「(4)」の目的を実現するために、伝えたいことを裏付ける・補強する、気持ち、思い、取り組み、エピソードを、書き出してみてください。これも思いつく限り、書き出して、あとで取捨選択するのがいいと思います。
書き慣れるまでは「型」を有効活用
ここまでの作業で、準備はばっちりです。
それでは、書き始めましょう。ここでも「自由に=自分の好きなように」と言われても、書き慣れるまでは難しいと思いますので、「文章の型(文章構成のパターン)」の活用をおすすめします。子どもの頃に「起承転結」など、国語の授業で習ったことはありませんか? たとえば、イベントを紹介する記事なら「イベント名+開催日時+会場+詳細+参加者の声+連絡先」といった定番の型があるんです。
もしかしたら、「いかにも型通りの文章というのはつまらない」と思うかもしれません。私も昔はそう思っていました。が! 一般的に伝わりやすいから、そういう型が普及しているんだと思います。また、最近読んだ本には、「型を覚えるからこそ、型を崩せる」と書いてありました。型を有効活用して、まずは書くことに慣れましょう、親しみましょう。そこを崩しながら自分らしい文章を書けるようになったらいいのではないでしょうか。
シンプルなお手紙の型として、
(A)はじめに
=導入、挨拶文
(B)本文
=伝えたいこと(宣言)
+伝えたいことを裏付け・補強する内容
+伝えたいこと(再確認)
(C)おわりに
=締めくくり
を提案します。
それでは、各項目について例も交えながらお話ししていきます。
いかがでしょうか? 「チエさんの手仕事は自己満足なんかじゃない!! 1人の人間に気づきや変化をもたらしている=チエさんへのエール」は伝わったでしょうか? 1つに絞ることで、その伝えたいことに文字数をさくことができて、より深く伝えられるものだと思います。
「伝えたいこと=ゴール」を明確に
今回は「伝えたいことを書き出し、整理し、型に入れる」ということをしました。
一度、頭の中にあるものを書き出して、外に出す。欲張らず、1人に1つのことを伝えることにすべてを捧ぐ!! そのために、伝えることを1つに絞り、書き出した内容からそれに合うものを取捨選択する。どうしたらそのことが伝わるのかを考え、文章の順番(=文書構成・型)を決める。それに沿って書く。
準備をすることが大切なんです。
私もライターになりたての頃、いや、それから10年ほどは“いきなり書き出す派”でした。言葉をつないでいたら“文章”という形にはなるから、「書けた」と勘違いしてしまうんですね。いや、「書けた」は「書けた」なんですけど、伝わらないものに仕上がっていました。それを先輩方に修正指示を入れてもらって、なんとか仕事として成立する原稿となっていたのです。
今から思えば、その原稿を通して何を伝えたいのかという目的も、その目的を実現するための道筋も見通せないまま、ただただ集めた情報や内容を書いていただけだったので、「え? 結局、何が言いたかったん?」「あれもこれも言いっぱなしで終わってるやん」という原稿になっていたんだと反省します。
10年経ってようやく、準備してから書き出すようになったら、根本から覆されるような修正が入ることは少なくなりました。自分自身の感覚としても書きやすくなったんですよね。準備の大切さを実感したのは、2000文字越えの原稿をよく書くようになったからだったでしょうか。それだけの文字数を書こうとすると、「あそこがゴールだ!」というものを見据えていないと、読んでくれる相手を迷わせないように道案内できないんだと思います。
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次回は練習編②「つっこんで、内容を深める」についてお話しする予定です。
「これでいいのかな」「大丈夫かな?」と不安いっぱいで、ドキドキしながら、書き綴っています。だから、リアクションやサポートをしていただけると、とても嬉しく! 舞い上がります。励みになります。