エイリアンパニック「虫が飛ぶ」

眠るまえ、虫が飛ぶ。顔目掛けて頬や顎、耳の辺りをスーっと飛んでくる。スマホの画面が明るいから暗闇でもその虫が顔の周りを飛んでいるのがよく分かる。たまに手の甲や手首や指に止まっているような気がして、手を触ったり叩いたり、痒くなったりしてくる。なんの虫なのか分からない小さな1ミリくらいの羽根を持った虫。暗闇の中ベットから起き上がり部屋の電気をつけて虫の存在を確認するが、全然見つけられないのでまた電気を消して、布団の間に身体を挟み込み、これは幻覚だと気づいた。でもなんか気になる。さらには右耳に虫が入ってきたような気さえしてきて、本当に鬱陶しい。布団の上で長くなり、短くなりを繰り返しながら、そして今度は左耳の耳鳴りが始まり寝れない。身体が寝ることを許してくれなかったのだと思う。

人間は人生の3分の1が睡眠時間となることを小学校高学年の頃に知った私は、健康的な睡眠を取り、長生きしたいと思い続けて、意識的にしっかりと8時間は眠るようにいつも早寝していた。それなのに、夜間に暗闇で見る携帯のブルーライトのためだけでは無い何かのせいで意図せず寿命を縮めているのである。長生きしたいなと思いながも眠れない身、夜は老けて窓ガラスの向こうが今日も徐々に明るくなっていき、朝がやってくる。脳や心臓は活発に動き休むことなく脈を打っていることがわかる。たまにもう、この時間は寝ることを許してくれない何かへの復讐や残虐行為や事件に発展するような恐ろしい妄想と現実とを絡めながら夢ではない夢を作り、やがて1時間ほどだが寝ることに成功するのだ。このまま眠ってしまって恐ろしい悪夢を見続け、眠り続けることが出来たらなどと思う。眠れない日が何日も何日も続くと今度は1日中眠り、夕方やもしくは夜になってから私を引っ張っていく

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