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エイリアンパニック「静寂」

目が覚めたとき、保健室で休んでいたことを忘れていた。一瞬、ここが自分の部屋だと思った。あれからしばらく眠っていたようだった。眠ってしまえば、恐怖から解放される。今日だけでなく、いつもあの喧騒がやってくると逃れるために寝ようとする。が、すぐには眠れずに大抵朝まで起きていることが多い。今、目が覚めたのは、嫌いなカラスの大きな鳴き声がすごく近くからして、驚いたからだった。保健室のカーテンの隙間から光が漏れていてすごく眩しかった。なんだかずいぶんと疲れていた。どうやら掃除の時間が始まったようで、保健室の掃除担当の生徒が話をしている声が聞こえてきた。もうすぐホームルームが終わって放課後になるのだ。誰とも話したくない。自分がいることを知られたくない。まだ静かに横になっていた。先生と生徒が話す、その声がとてもうるさく感じる。きっとそんなに大きな声ではないのだろうけど、今の自分は外界の音に敏感になっていて、話しているのが誰であっても不快に思ってしまうのだろう。はやく掃除の時間が終わってしまって家に帰りたかった。そして、誰にも保健室にいることを知られたくなかった。息を殺して、なるべく動かないようにして掛け布団の音がしないようにしていた。いつもは具合が悪くなると保健室の隣の部屋にいることが多いのだが、そこは遮光カーテンになっており防音効果もあって、とても静かなので過ごしやすい。隣の部屋へ行きたかった。

放課後になり、家に帰る。3年生の教室の掃除をしてから、もう一度教室に戻ることなく、家に帰った。鞄は夕陽が保健室に持ってきてくれていた。保健室に連れてきてくれた後に教室に鞄を取りに行ってくれたのだろう。きっともう、彼女は部活に行ってしまった。以前、放課後にひとりで家に帰っているときいつも乗るバスではないバスに乗ってしまって、慌てて降り、降りたところが何処なのか分からなくて困ったことや、身に覚えのない食べ物と飲み物を片手に下げていたりして驚いたことがある。バスを間違えたときにはなんとなく帰る方向がわかったので近くのバス停を目指して歩き、いつも乗るバスに乗る事ができた。よくわからない食べ物と飲み物を持っていたときには袋の中にレシートが入っていて、時刻を見ると少し前のことだったが、学校付近にはないコンビニのレシートだった。これは、流石にショックだった。自分の脳は何かに支配されていてコントロールができないのだと思った。またあのときのようなことは起きて欲しくはない。

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