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ブラックフライデー商戦は事前告知が重要だった?2021年傾向分析

今年も日本で多くの企業がブラックフライデーを開催し話題を集めました。電子チラシサービス「Shufoo!」による 「ブラックフライデー」に関する意識調査によると、2018年以降、ブラックフライデーの国内認知度は3年連続で75%超となるなど、来年以降も定着が期待されます。

ブラックフライデーの期間中、Amazonや楽天などECモールの広告を見かけたという方は多いと思いますが、実際にソーシャルメディア上ではどの企業の話題が多かったのでしょうか? 今回はTwitter上の小売各社のクチコミ量を比較分析し、今年のブラックフライデー商戦を振り返ります。


ブラックフライデーのクチコミはどれくらいあった?

本記事では、ソーシャルメディア上の“生活者の声”を収集・分析する「ソーシャルリスニング」を活用し、Twitterを対象にブラックフライデーに関するクチコミの比較分析を行います。

【クチコミデータの収集条件】
●対象メディア:Twitter
●使用ツール:Brandwatch
●収集条件:「ブラックフライデー」「#ブラックフライデー」「#BlackFirday」「#blackfiday2021」などを含むツイート
●収集期間:2021年11月1日〜2021年12月3日

「ブラックフライデー」を含むツイート件数・推移

まず、ブラックフライデーに関するTwitter上のクチコミはどれくらいあったのでしょうか。下のグラフは「ブラックフライデー」を含むツイート件数の日次推移を示したものです。

期間中、約137万件*のツイートが確認でき、ブラックフライデー当日にあたる11月26日を頂点としてツイート件数の増加/減少が見られました。ツイート件数は11月16日までは5,072件/日程度で推移し、その後11月17日から増加を見せ、11月26日は一日で34万件を超えるほど急増しています。

*本記事のツイート件数は、ツイート全量のうちサンプリングして取得したツイート件数を、サンプリング率(55%)で按分し算出


ブラックフライデーに関する各社のクチコミ量は?

ここからは期間中の小売各社のクチコミ量を比較分析していきます。本記事では下記条件に当てはまる企業を対象とし、前項で取得したブラックフライデーに関するクチコミにおける各社のクチコミ量と推移を見ます。

【分析対象となる企業の抽出条件】
下記の売上高ランキング各上位30企業のうち、ブラックフライデーの実施が確認できた企業*。

▼売上高ランキングの出典
・日本経済新聞「小売業売上高ランキング」2021年10月18日公開**
・通販新聞社「ネット販売白書」2021年10月5日公開
(グループ企業については、最も売上高の高い事業から1社を選定)

*企業のWebサイトやSNSアカウントの告知を目視で確認。
**上場企業を対象とした小売業売上高ランキング。

上記条件で企業を抽出すると、下記の32社になりました。

※小売業・ネット販売実施企業の売上高ランキングから抽出

Amazonや楽天、ZOZOといったECモールの他に、イオンやイトーヨーカ堂といった総合スーパー、ノジマやヨドバシカメラといった家電量販店など、リアル店舗を自社で展開する多くの企業がブラックフライデーを実施していることが確認できました。

また、DELLやアイリスオーヤマといった電気機器メーカーのように、自社のリアル店舗を多く持たず、他社店舗やECモールでの販売を主にしている企業もブラックフライデーを実施しています。


企業別のツイート件数の総量を比較

期間中の「ブラックフライデー」を含むツイートのうち、対象となる企業名を含むツイートを分類すると、ツイート件数は以下のようになりました。

※期間中のツイート件数が200件以下の企業は「その他」に集約

Amazonのツイート件数が突出しており、期間中に38万件以上のツイートが確認できました。次いで楽天の86,813件、イオンの44,682件、DELLの15,502件、アイリスオーヤマの1,144件の順で多くなっています。

Amazonに関してはもともとの認知度に加え、ブラックフライデーに際し、ライフハックにあたる利用者のツイートが多くのRTを獲得した他、クリエイターを起用したプロモーションツイート、Amazonに出店する多くの企業の告知ツイートが重なり、ツイート件数が増加したことが考えられます。これは、同じECモールである楽天にも当てはまります。

リアル店舗が主であるイオンについては、店舗限定商品や、店頭で見つけたお買い得商品に関するクチコミがRTを獲得し、ツイート件数増加の要因となりました。企業アカウントの告知ツイートの頻度も多く、Twitter上での認知度向上につながったことが推測できます。

※全体に対して割合が1%件以下の企業は「その他」に集約

期間中の「ブラックフライデー」と各企業名を含むツイートのうち、各社のツイート件数の割合を見ると上記の円グラフのようになりました。Amazonに関するツイート件数がいかに高いかが分かります。


企業別のツイート件数を時系列で比較

次に、期間中の各社のツイート件数を時系列で見てみます。

※期間中のツイート件数が200件以上の企業のみ抽出(分析対象の32社中、14社)

ブラックフライデー当日である11月26日にAmazonのツイート件数が急増しているのが顕著です。11月23日までは他社のほうがツイート件数が上回ってる日がありますが、11月24日以降はAmazonのツイート件数が増加し、他を圧倒していることが分かります。

Amazon以外の各社のツイート件数を時系列でもう少し詳しく見るために、Amazonを除外したグラフも下に用意しました。

※期間中のツイート件数が200件以上の企業のみ抽出(分析対象の32社中、13社)

各社のツイート件数を見ると、11月15日まではイオンが特に多く(=紺の折れ線)、11月16日以降は楽天が増加(=赤)しているのが分かります。また11月18日ごろからDELLが増加し始め(=黄)、26日には楽天に接近するほど急増しているのが分かります。


企業別のツイート件数の割合を比較(Share of Voice)

企業別ツイート件数の推移からは、企業によってツイート増加時期が異なることが分かりました。この違いを分かりやすく把握するために、各社のツイート件数の割合をシェア・オブ・ボイス(SOV=Share of Voice)としてまとめると下記のようになります。

※期間中のツイート件数が400件以上の企業のみ抽出(分析対象の32社中、9社)

日次の推移を見ると、時期によって各社の割合が異なることが分かります。ツイート件数の割合を「Twitter上でどれだけ話題を占めているか」の目安として考えると、11月頭と24日以降はAmazonの話題が大きく占めています。

Amazon以外のツイート件数の推移をもう少し詳しく見るために、Amazonを除外したSOVも下に用意しました。

※期間中のツイート件数が200件以上の企業のみ抽出(分析対象の32社中、8社)

ツイート件数の割合を見ると、先ほどの折れ線グラフでも見て取れたように11月15日まではイオン(=紺)、11月16日以降は楽天(=赤)の話題が大きく占めていることが分かります。また11月26日からDELLがイオンを上回る(=黄)ようになり、楽天とDELLの2社が多くの割合を占めています。

その他には、11月1日・2日にイトーヨーカ堂(ベージュ)が、11月25日以降にヨドバシカメラ(黄緑)とアイリスオーヤマ(濃緑)が、前述の企業と比べると割合は高くないもののツイート件数の割合が高くなっていることが分かります。


まとめ

これらのクチコミ分析から、今年のブラックフライデー商戦の傾向として以下のことが分かりました。

キャンペーン開始前のツイート件数の増加が、キャンペーン期間中のクチコミ獲得につながっている

SOVの日次推移を見ると、時期によって各社のツイート件数の割合が異なることが分かりました。特に11月中旬まではリアル店舗が主であるイオンが占める割合が高まり、11月下旬以降も多くの日で1,000件以上のツイートが確認できました。これは、キャンペーン期間前の入念な事前告知が、期間中のツイート件数増加に影響を与えていることが考えられます。

各社のブラックフライデーの開催期間と「ブラックフライデー」を含むツイート件数
※期間中のツイート件数が400件以上の企業のみ抽出(分析対象の32社中、9社)

上の表は各社のブラックフライデーのキャンペーン期間と、「ブラックフライデー」を含む平均ツイート件数/日を期間別に集計したものです。

イオンの期間中の平均ツイート件数/日は1,971件、開始前日まで10日間の平均ツイート件数/日は2,035件と、キャンペーン前後で平均2,000件前後/日のツイート件数があることが分かります。これに対し、楽天は期間中の平均ツイート件数は2番目に多いものの、開始前日まで10日間の平均ツイート件数/日は313と、キャンペーン前後で大きな差が生まれています(イオン以外の8社は、キャンペーン開始前までのツイート件数のほうが少くなりました)。

イオンはブラックフライデー当日(11月26日)の1週間前から店頭キャンペーンなどを開始しており、その10日ほど前からTwitter公式アカウントでプレゼントキャンペーンセールの概要紹介などのツイートを実施するなど、それらがユーザーのRTで拡散される形でツイート件数が増加していました。キャンペーン開始時期の前倒しに加え、競合他社のクチコミがまだ少ない時期にTwitter上での認知度向上に注力=クチコミを誘導していたことがキャンペーン前後のツイート件数増加の要因といえるのではないでしょうか。

また、上の記事によると、今年のアメリカのブラックフライデーではECの販売がわずかに減少した一方で、店舗への客足は1.5倍に増加したといいます。総合スーパーのようなリアル店舗の場合、定期的に店舗へ足を運ぶユーザーにとっては「インプレッション」が来店の度に発生する形となります。Twitter上での施策に加え、店頭でキャンペーンの存在に触れる機会が増えれば、その分、クチコミは生まれやすくなるといえます。


このように時系列でのSOV把握・競合比較といったソーシャルリスニングの活用は、ソーシャルメディア上での認知度向上の施策時期・内容の検討に役立てることができます。

ループス・コミュニケーションズでは、Twitterをはじめ、ソーシャルリスニングの戦略立案から導入、運用サポートまで、ソーシャルリスニングのビジネス活用支援を行っています。まずはお気軽にお問い合わせください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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