#5 最後の仕上げ
2022年、盛岡市中央公園BeBA TERRACEにオープン予定の〈手紡ぎ・手織りの学校 Looms(ルームス)〉。開校前のプレ・イベント『ホームスパンで自分だけのマフラーをつくる講座』の一部をレポートしています。
▼これまでの工程についてはこちら
#1 ホームスパンとは?
#2 体験! 紡ぎの準備
#3 糸を紡ごう
#4 紡いだ糸で手織りする
前回、織りあがったマフラー。「なんとかできた!」と思いきや、これで完成ではありませんでした。織った後には「縮絨(しゅくじゅう)」が必要であり、これがとても大切。仕上がり具合は手や目で確認するのが大事。講師と一緒に確認することで、そのポイントを体感できます。
さらに、乾かして、アイロンをかけて……と、本当に最初から最後まで膨大な手による仕事の集積。個展や企画展などに並ぶ作品がすべてこの工程を経てできあがったものだと思うと愛おしさが増します。すごいですホームスパン。
それでは最後の大切な仕上げです!
縮絨とは?
「織り」は、体験してみてわかりましたが、経糸と緯糸が交差になっているだけの状態。編み物のように、ループ状に糸が絡んでいるわけではないので、繊維を絡ませ、糸が動かず安定したに「布」の状態にする必要があります。そのための工程が縮絨です。特にホームスパンマフラーは、隙間を空けてゆったりと織るため、糸が動きやすいという特徴もあります(木綿は隙間を開けず、密に織っていくのだそう)。
温度差と手揉みによって、フェルト化が進み、動かなくなると同時に、ふんわりと柔らかさが出てきます。
縮絨の工程
講座では、バケツを使用して縮絨を体験しました。
①漬け込み
50-60度くらいのお湯にモノゲン(ウール用やおしゃれ着洗いの洗剤でもOK。マフラーの重さに対して3-5%)を入れ、その中にマフラーを漬け込みます。
このときの注意点は、できるだけ触らないこと。熱すぎると縮んだりフェルト化してしまうので、温度もとても大切です。この状態で1時間ほど置きます。水量はマフラーがひたひたになるくらい。
マフラーを洗う際も同じ方法。浸しているだけで汚れが落ちます。
②揉み込み
1時間経ったら、揉み込みを行います。このときお湯がぬるくなっていたら、一度マフラーを引き揚げてお湯を足します。
最初は房から。房は、手で撚って結んでいるだけの状態なので、撚りが戻らないように根元からしっかり縮絨します。
マフラーを畳んだら、左手で軽くもち、右の掌の中で、房で団子をつくるようにぎゅうぎゅうと揉み、毛羽立たせます。この毛羽立った繊維が絡み合うことで縮絨が進みます。
房が縮絨できたら、緯糸を織った部分も、横からジャバラにするようにぎゅうぎゅうと圧力をかけていきます。全体が均等に縮絨できるように裏返して織り、揉み込みを繰り返します。
この工程を何度か繰り返したら、整えて畳み、上から平に押してシワを伸ばすようなイメージで圧力をかけます。
どこまで縮絨するかは、作家さんの好みだそうで、この工程も手や目の感覚がとても大事。フェルト化しないか心配になりながら最初は恐る恐る揉み込みましたが、思ったよりも力を加えて、何度も揉み込むことが必要でした。
縮絨が進むと、ふくらみが増して弾力や厚みが出てきます。毛羽が立って、表面がふんわり優しい感じになりました。やってみると、なるほどと思います。このふんわり感がいいなというところで揉み込みを止めます。
③すすぎ
縮絨を終えたら、縮絨したときよりも低い40度くらいのお湯に入れて軽く押し、すすぎます。洗剤を追い出すだけなのでゴシゴシしません。水を変えて最低2回繰り返します。
④脱水
すすぎを終えたら絞って、脱水します。講座では、バスタオルで挟み、水分を取りました。洗濯機の脱水機能でも良いそうです。
⑤乾燥
その後2日ほど干します。
干すまで2時間ほどかかったでしょうか。説明を受けながらということもありましたが、織りの後にこうした作業があることに驚きました。きれいに織れても、縮絨で台無しになってしまうこともあるのだそう。肌触りや見た目の質感にもつながる、とても大切な作業でした。
縮絨の後の仕上げ
① アイロン
干して完成! でもないのです。最後にアイロンをかけます。(ここからは自宅で各自の作業でしたが、やり方を講座内で教えてもらいました)。
2日ほど干し、マフラーが完全に乾いたら、スチームアイロンを使って、プレスします。中温で蒸気を充ててシワを伸ばした後、ドライにして上からプレスします。最初は房から。
この作業をすることで、さらに縮絨が進み、形が整います。
② 房切り、検反物
形が整ったら、すべての房が均等になるように、房の先を切ります。最後の最後に、もう一度織り間違いや、ゴミがないかも確認して、(検反(けんたん)と言うのだそう)完成です!
③ サイズを記録
縮絨でどれくらい縮んだか、長さを測って記録して次回の計画に役立てます。
ホームスパンのファンになる時間
全6回に渡る『ホームスパンで自分だけのマフラーをつくる講座』。時間内にできあがるか不安でしたが、参加者全員、完成させることができました!
紡ぎも織りもはじめてのメンバーでしたが、手取り足取り教えてくれ、実践できる時間も長いので、学びの多い講座です。
なにより、文字で読んだり、映像を見ているだけではわからない、ホームスパンの工程を肌で感じることができます。まさに手仕事。その技術の素晴らしさを体感するとともに、ますます興味を深めてくれる、ホームスパンのファンになる時間でした。
手や指が忘れないうちに、また手紡ぎ・手織りに挑戦したい。Loomsのオープンが待ち遠しいです。
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