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♯2 体験! 紡ぎの準備

2022年、盛岡市中央公園BeBA TERRACEにオープン予定の〈手紡ぎ・手織りの学校 Looms(ルームス)〉。開校前のプレ・イベント『ホームスパンで自分だけのマフラーをつくる講座』の一部をレポートしています。

▼前回記事はこちら
#1 ホームスパンとは?



「ホームスパンとは何か」を学んだ後は、いよいよ実践です!

まずは、「糸を紡ぐための準備」の体験から。

「がんばるぞというよりも、楽しもうという気軽な、やわらかい気持ちでやってみましょう」という講師の小山さんの呼びかけで始まりました。

生徒4名に対し先生2名が、手取り足取り指導してくれる贅沢な時間。とても安心感があります。

美しい手仕事に憧れはあるものの、不器用なため専ら買う側の私。洋裁も編み物も苦手なので、織りもできないかもしれない……。それでも糸は紡いでみたいと惹かれるものがありました。羊毛から糸ができるなんてなんだか魔法みたいじゃないですか。


体験① カーディング

オリジナルの色をつくるおもしろさ

紡ぎの準備、最初の体験は、「カーディング」です。

カーディングは、羊毛の繊維の向きを揃えたり、異なる色の羊毛を混ぜていく作業。

講座では、好きな色の羊毛を選び、「ハンドカーダー」でミックスする工程を体験しました。

染色されたさまざまな色の羊毛から、混ぜたい色の羊毛を選び、必要量を引き出します。引き出す際、ギュッと握ってしまうと、繊維が固まってしまって引き出せないため、少し離れたところを持ち、すっと引き出してあげるのがポイント。そうするとふわりと離れます。数色足して、1グラムくらいになる量が目安。


「羊毛を混ぜて、自分だけの好きな色をつくれるのがホームスパンのおもしろいところです」と話してくれたのは講師の原さん。

ホームスパン作品が、光の状態や見る角度によって、立体的に、いくつもの色が混じり合ったように見えるのはこのミックスによるもの。同じ色でも濃淡を変えた羊毛を混ぜることで変化を見せることができます。

「アイボリーのような色をつくりたくて、白と、黄色と、くすんだ緑を混ぜるとこの色になりました」と見せてくれたサンプル。どの色の羊毛をどの割合で混ぜるとどんな色の羊毛ができるかを一覧にしたミックス見本です。「卵色がほしいとなったら卵色を染めようではなくて、黄色と白を混ぜて卵色をつくります」と原さん。同じ色の羊毛を組み合わせても、割合を変えると違う色をつくることができます。


オリジナルの色づくり、わくわくします。

羊毛を選んだら、カーディング体験です。

それぞれの色の羊毛の繊維を事前にほぐし(毛ほぐし)、左手に握ったハンドカーダーの針の上に、羊毛をのせていきます。

右手にもハンドカーダーをもち、左から右に羊毛を引っ掛けて移していきます。手首でカーブを描くように、繊維を伸ばしながら移していくのがポイント。右と左を持ち替えて、同じことを繰り返します。

回数を重ねるごとに色は混ざっていくので、混ぜすぎたくないときはあまりカードをかけずに、完全に混ぜたいときは納得できるところまでカードをかけます。組み合わせは無限。その人の感性でいろんな糸ができあがるのが魅力です。
生徒4人、それぞれ好きな羊毛を混ぜ、三者三様の色が完成。この羊毛は糸にすることもできれば、フェルトボールにすることもできます。


「混ぜ切らないのもおもしろいですよ」(原さん)

「大きなカード機ではきれいなカードはかかるけど、しっかり混ざってしまうので平坦な感じになってしまって、難点だと話す方もいます」(小山さん)

「きれいすぎるとつまらないと感じる人もいるんですよね」(原さん)

カーディングの体験はここまで。時間を要するので、今回マフラーを織るために紡ぐ糸は、カーディング済の羊毛を使用します。


体験② 毛玉とり

最初が肝心。工程はすべてつながっている

紡ぐ前の準備として、「毛玉とり」も大切な仕事。

カーディングの前に行う作業ですが、カーディングをしながら毛玉の粒ができたりゴミが見つかったときも取り除きます。

羊毛を少し広げ光に透かしてみると、小さな粒が見えます。粒をとるときは、繊維を引き出さないよう、根本をギュッと持ち、粒だけを取り除くことがポイントです。


「毛ほぐしや毛玉とりをきれいにやったかどうかの違いは、カードをかけた時に出てくるし、カードをきれいにかけた成果は糸紡ぎ、紡ぎの成果は織に出てきます」(小山さん)

「最初の準備をちゃんとやらないと、結局うまくいかなくなっちゃうんです」(原さん)

すべて大切で、すべてつながっている。羊毛を洗う作業から織までの長い準備が、ホームスパンの要なのだと思わされます。


体験③  紡毛糸づくりの準備

それぞれの体に合わせたものづくり

カーディングされ、毛玉をとった羊毛ができたら、いよいよ紡ぎです。

まず、紡ぐ前の準備として、より羊毛の繊維が引き出されやすいように「ロール」をつくりました。

緑、オレンジ、グレーと、生徒4人、実際にマフラーとして織る緯(よこ)糸をつくるための羊毛を選び、ロールをつくります。

「スライバー」と呼ぶ長い毛の塊から羊毛を引き出す。今回は約15cm。
羊毛を四角く広げ、棒を使用しくるくると丸めていきます。講座では編み棒を使用しました。白木だと毛が引っかかり、プラスチックだとツルツしてすべりやすいため、編み棒はちょうどいいのだそう。棒が細いほど芯になる部分が細くなるので、細い糸を紡ぎたいときは細い棒、ふんわり紡ぎたいときは太めがおすすめ。
くるくると丸め、棒を引き抜いたらロールの完成です。


棒で丸める際、ふわっとさせたり広げすぎると繊維が出やすくちぎれやすくなり、反対にぎゅうぎゅうに巻くと繊維が出にくくなると、加減が難しい。

ただし紡ぎやすい紡毛糸の長さや緩さは人それぞれのため、試しながら自分に合った形を見つけていくのだそう。

ホームスパンにはどの工程にも正解がない。糸の柔らかさも、太さも、色も、織り方も、その人の体や感覚に合わせて作品が生み出されているのだと感じます。

工房や作家が生み出す作品は、その場所・その人でなければできないもの。そう思いながら作品ひとつひとつを手にすると、また違う楽しみを見つけられそうです。

紡ぐ準備の体験はここまで。

次回は「糸を紡ぐ」体験をレポートします!



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