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#4 紡いだ糸で手織りする

2022年、盛岡市中央公園BeBA TERRACEにオープン予定の〈手紡ぎ・手織りの学校 Looms(ルームス)〉。開校前のプレ・イベント『ホームスパンで自分だけのマフラーをつくる講座』の一部をレポートしています。

▼これまでの工程についてはこちら
#1 ホームスパンとは?
#2 体験! 紡ぎの準備
#3 糸を紡ごう


前回の講座までに自分たちで手紡ぎした糸。この糸を緯糸(よこいと)に使用し、いよいよマフラーを織っていきます。

織りの種類

今回の講座で挑戦するのは「平織(ひらおり)」。織りには種類がありますが、ホームスパン の基本は「平織」と「綾織(あやおり)」で作品がつくられています。

「平織」とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が、1本1本交互に重なっていく織り方。左右対象で、均一の模様が出来上がります。伸縮性には欠けますが、頑丈なため、着物地や帆布など、昔から日本で織られている方法なのだそう。

「綾織」とは、経糸と緯糸を、1本1本ではなく、2本づつ交互に重ねたり、経糸と緯糸の重ねる本数を変えて左右非対称な模様を織り出す方法。経糸と緯糸が交差する点が減るため、柔らかさが増します。マフラーや、伸縮性が求められるジーンズなどに採用されているのだそう。

講師の原さんによる「平織」の見本。

糸の組み合わせは「組織」と呼ばれています。経糸と横糸をどう組み合わせるか、どんな色の糸を使うかで、いろんな模様が生まれるのだそう。いつかいろんな模様を織れるようになりたいも、平織をもっと上手に織れるようになりたい、織りのための均一な糸を紡ぎたいと、一連の工程を終えて思うようになりました。


織ってみよう!

織りの説明ののちは、実践です!

講座では、前回までに手紡ぎした糸を、講師が撚り止めをしてきてくれました。この糸を「緯糸」として使用します。

手前にあるのが、緯糸を織る際に使用する「板杼(いたひ)」。

使用する機(はた)は、コンパクトな卓上織機です。

今回の講座では、講師が機に経糸をかけた状態に用意し、受講生は、緯糸を経糸の間に織り込んでいく工程を体験します。

経糸には、ウール100%のシェットランド単糸を使用。本来ホームスパンは、経糸も手紡ぎした糸のことを指しますが、切れやすく、初めての紡ぎでは太さも均一にならないため、紡績(機械織)の糸を経糸に使用します。

機に並行に立っているのが「筬綜絖(おさぞうこう)」と呼ばれる、糸を織目に押し込む道具。
経糸を通すスリットと穴があります。

① 板杼(いたひ)に緯糸を巻く

「板杼」と呼ばれる道具の凹みに引っ掛けるように、緯糸を巻いていきます。緯糸の準備はこれで完了です。

② 機を動かす

織り始める前に、機の動かし方を習います。リジット機では、「筬綜絖」を置ける凹みが、上、中央、下の3カ所あり、筬綜絖を上の凹みと下の凹みに入れることで経糸が移動し、経糸と経糸の間に隙間ができます。その隙間に緯糸を通すことで、経糸と緯糸を交差させ織っていきます。

③緯糸を重ねていく

板杼から、マフラーの幅より少し多めに糸を出して、板杼を道しるべに、緯糸を経糸と経糸の間に通します。通したら、トントンと、筬綜絖を前にひきます。このとき、真っ直ぐ並行に動かすことがポイントです。

緯糸を入れた付け根を指で押さえながら、山を描くように糸を配置すると、
端(「みみ」と呼ばれます)が出過ぎず、きれいに仕上がります。

「みみ」が出ないようにと内側に引っ張り過ぎても、経糸が内側に引っ張られ、細いマフラーになってしまうので注意。おかしいなと思ったら、戻って織り直します。緯糸の引き具合や、トントンと押し込む強さも、手と目の感覚で覚えていくものでした。

織り始める前に、ワラを織り込んだのがおもしろい工程でした。
機と経糸の結び目部分は隙間が大きく開いているため、均等な隙間の部分から織り始めるための
措置。ワラを4本ほど織ると、均一な隙間ができました。そこから緯糸を入れ始めます。

あとは織って、巻き込んでの繰り返しで、マフラーが織り上がっていきます!


整経の実演

経糸の長さを測り、機にかける「整経」の工程は、今回講師が行ってくれましたが、その方法を少し実演してくれました。

これが、難しい……。

この工程も経て、やっと織り始められるという理解のためにも、今回つくるマフラーの長さを例に、少しだけ紹介します。

整経台。糸を欠ける杭のようなものがたくさん見えます。

① 経糸に必要な長さを測る

今回の講座でつくるマフラーは、できあがりの長さ(房を除く)を、「縦120cm、幅16cm」で想定していますが、織る際には、「縦140cm、幅18cm」と、長さ2割増、幅1割増程度に織り上げます。

織っている間に経糸が緩んでくる「織り縮み」という現象と、仕上げる際に必要な「縮絨(しゅくじゅう)」の工程で、縮むためです。

この140cmに、緯糸を交差させない房と、機に結ぶための糸の長さの余裕を持たせ、1本185cmの経糸を、幅18cmに必要な72本(1cmに4本の糸が入る機のため)用意します。

(数字が出てくると混乱しますが、要するに、今回のマフラーには、185cmの経糸が72本必要です)

まずは、タコ糸を用意して、185cmのところに印をつけます。

整形台の杭にタコ糸を掛け、片道または1周で185 cmになる杭を探してセッティングします。巻きつける方法には、片道で185cmになるマルベと、1周で185cmになるチギリベがあります。

② 実際に使用する経糸を、整経台に巻きつける

小枠に巻きつけた糸を、タコ糸に這わせて、整経台に巻きつけていきます。

このとき、糸が絡まらないようにするのが、「あやとり」です。185cm這わせたところで、手をくるっと回して交差させることで、巻きつけた糸の順番がわかるようにします。糸の順番は、どんな模様にするかの「組織」によって変わるため、この工程はとても大切。ここで順番が変わってしまうと、模様が崩れてしまいます。

(難しい……。織るためにも多くの準備が必要だと実感します。)

★リジット機の場合
上記の方法は、卓上ではない、高機(たかはた)にかける前に行われている工程。今回講座で使用しているリジット機は、直接機にかけながら長さを計算していきます。
片方の端を機にセットしたら、そこから185cmになる場所にペグをつけて糸をかけ、ペグと機を往復しながらスリットに2本ずつ糸を通していきます。横幅分のスリットに入り終わったら、糸を巻き取り、スリットに入っている2本のうち1本を隣の穴に入れて完成です。これもひとりでセッティングするには大変な工程!
今回の講座では、講師が経糸をセッティングしてくれたので、緯糸を重ねて織ることに集中することができました。織物作品をつくるためには、いずれはできるようになりたい(ならなければならない)工程です。

織り上がりの仕上げ

① 房づくり

約2回分の講座の時間を使って、140cmのマフラーが織り上がりました!
織り終えたら、房の部分を残して織り終わりの経糸をハサミで切ります。

織り始めの結び目を外したら、織る作業はここで終了です!
織りながら、機に巻き込んでいくので、機から外してみると、
こんなに織っていたんだ! と驚きました。

機から外したら、房の撚りをつくります。

経糸が72本と、3で割り切れる数なので、右手で3本、左手で3本、親指と人差し指の根、元で挟み、右手を押し出し左手を引くことで撚りをかけます。縄ないの方法です。

ある程度撚りがかかったら、右の3本と左の3本の先端を合わせて、手のひらで逆方向に撚りをかけます。単糸を双糸にする方法です。

これも、撚り具合は手の感覚で覚える作業。できないときは三つ編みでも良いとのことでしたが、覚えると楽しい工程でした。

双糸にしたら、解けないように、先端を結びます(結び目は縮絨後、長さを揃えて切り落とします)。

②手直し

最後は縮絨前のチェック。飛び出している糸を切ったり、「みみ」を整えてあげたり、目を飛ばして織ってしまったところがあれば、針で直していきます。織った後に、文字通り「手直し」ができるというところも驚きでした。

この状態が「織り上がり」です。

縮絨前の「織り上がり」のサイズも記録し、今後の制作に生かします。

講座計2回分の時間をかけて、なんとか、受講生全員、織り上げることができました。ここで完成! と言いたいのですが、残りは仕上げの「縮絨」です。この縮絨も、ホームスパンではとても大切な作業で、手の感覚が必要なものでした。

次回、いよいよマフラーが完成します。



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