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『ノンセクが26年間を振り返ってみた話』⑫手を離すタイミング

    デートのとき、Tくんは手をつなごうとしてくれていた。「手つないでいい?」って聞かれたり、無言で手を差し出してきたり…基本的に私は「いいよ」って言って手を差し出していた。
    よくあるカップルの光景。だけど、私は握った直後から「これはいつ離したらいいのか」を考えてしまっていた。

    説明が難しいのだが、手をつなぐことそのものが無理ではない。だけど安心感や嬉しいという気持ちが持続しない。ずっとつないでいたり、相手が離す気配がないと、そこから伝わってくる相手の気持ちに我慢できなくなってしまう。ただすぐに離したり拒否するのは失礼だから、離すタイミングをぐるぐると考える。何かと物を出す機会をつくって離したり、気分が乗らないときはわざと彼の側で荷物を持ったりしていた。

    この時期でも、そして今でも、カップルや夫婦が手をつないでいるのを見ると微笑ましく、羨ましくなる。仲睦まじい象徴として受け止めていた。なのに、いざ自分の番になると短時間でいい(周りからカップルに見られたいという欲はあった)、もう離してくれと思う。「自分、わがままだな」と思ってた。    Tくんは優しい人だったから、無理強いはしなかったし、多分手をつなぐだけでもこんなんだったから、その他のスキンシップも抑えてくれていたと思う。


    結局、喧嘩はなく表面的には順調を取り繕っていたけど、お互い言いたいことを言わなかったので色々と不満が溜まり、私の不機嫌MAXなデートを機にお別れをした。半年弱のお付き合いで、ハグは1回、キスはなかった。

    ちなみに別れ話の最中に「何を考えているのかよく分からなかった」と言われた。
    そりゃ彼女なのに「好き」が伝わってこないようじゃ、Tくんも不安だし不満だったよなと今となっては思う。付き合ってるのに付き合ってないような感覚だったかもしれない。普通の恋愛がしたくてマッチングアプリを使ってたTくんのことを思うと、やりとりを始めてかれこれ9ヶ月、もったいないことをさせてしまったなという気持ちである。その後は連絡を取っていないし、私も遠方に転勤したから会うことはないだろう。優しい彼には幸せになってほしい。