【随想】三体Ⅰ・Ⅱ

三体Ⅰ・Ⅱ読了
ずっと暗黒森林と思っていたが、黒暗森林だった

時間のスケール、空間のスケールが大きくなると、
歴史の教科書を読んでいるみたいに登場人物たちに感情移入することが難しくなる

感情移入ができない文字列は、情報の要素が高まるため、
自分なりの接合点を見つけないと、なかなかページをめくる手が進まない

しかし、この三体は、適度にキャッチーな接合点を用意してくれるため読みやすく
例えば、科学、歴史、偉人、文明、進化、社会、宗教、環境、時事、文学、芸術など、盛りだくさんに詰め込まれている
物すごい情報量と巨大な想像力で、見たことのない地平まで連れていってくれる

読んでいて思い出したのは、
カルヴィーノ「レ・コスミコミ」
ブルトン「ナジャ」
奥浩哉「GANTZ」

SF小説は未来に対する壮大な思考実験装置である
特異な状況に置かれた時に人々がどう考え、どう行動するのか
浮世離れした設定を通し、複数の視点、時間、空間から現実を多面的に観察することで、現代の哲学や倫理に迫っていく

読んでいて鳥肌が立つシーンがあったので忘れないために書き残しておく

一つは、葉文潔が三体協会のリーダーとして現れた瞬間
一つは、三体人が露骨に敵意をむき出しにした瞬間
一つは、絶体絶命の大ピンチに史強が放った一言

逆に残念だったことは
葉文潔が時空を超えて復活し神となるマドマギ展開を予測しワクワクしたが、それは思い過ごしであったこと
それと、面壁者という設定が心理描写を可能にする小説ならではの設定だと思ってこちらもワクワクしたが、そういう演出はほぼなく面壁者は読者にも面壁しながら進んでいった、という2点である

現実の出来事は、すべて三体という物語世界に鏡として映し出されている
その世界内に自分自身が生きた時、どのように考え、どのように行動するのか思考実験しながら読むとさらに面白いかもしれない

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