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【随想】小説『夜行観覧車』湊 かなえ

夜行観覧車
再び湊かなえ。
2010年、今から13年前の作品。
作者にとっては5作品目。
導入から、目が離せなくなる語り口は、さすがである。
ひばりヶ丘は、どこがモデルだろう。
坂の上、坂の下。
格差を描く所を見ると、
『パラサイト 半地下の家族』を思い出す。
いや、坂が印象的な映画と言えば、
ナホンジンの『チェイサー』か。
ストーリーは、読み始めた時と、読み終わった時とで、
だいぶ想像とは、異なっていた。
やっぱり湊さんは不思議な蛇行をするな。
文章を情念で紡いでいるのではなかろうか。
事件の真相究明に収束していくベクトルかと思いきや、新しいベクトル=ご近所さんのエピソードが、同分量、いやそれ以上の筆致で描かれていく。
事件究明のベクトルと、事件発生のベクトルが両輪となって、
坂道をゴロゴロと(角を痛めながら)転がっていくのだ。
ドラマではオリジナルのエンディングが追加されているようだ。
転がり落ちた先に、一回転した先の景色が、描かれたのだろうか。


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