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【随想】小説『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』鴨崎暖炉

密室黄金時代の殺人
雪の館と六つのトリック
を読んだ。

作者は、とかく密室が好きなんだなぁ。
密室のためなら、他の何を犠牲にしてもいい、といった潔さを感じる。
時代設定も、舞台設定も、人物設定も、犯行動機も、アリバイ工作も、日常会話も、心理描写も、
密室に比べたら、取るに足らないと言わんばかり。

そして、密室は作り上げるのがとても大変であることがわかる。
400ページをかけて全部で6つの密室を作り上げるが、
どれも違った密室にするため、数々の条件が必要となる。

扉の下に隙間があるのかないのか、
絨毯の毛足は何センチなのか、
防犯カメラの映像は一週間ほどで上書きされるとか、
マスターキーが使えるのは西棟だけとか、
トランプの真贋を判定するスマホアプリがあるとか、
各棟を移動するには、必ず中央棟のロビーを通過しなければならないとか・・・・

それら膨大な条件説明に、400ページかかったんじゃないかとも思えてくる。

読者とのフェアプレイを作中でも登場人物に語らせてしまっているため、
ここをおろそかにするわけにはいかない、といった気概がなんとも涙ぐましい。
情報整理が大変だろう。

さらに、
密室探偵、密室使い、密室鑑定業者、密室代行業者、
広義の密室、不完全密室、完全密室なるものも出てきて、
頭の中が密室で埋め尽くされる。
読みながら密室中毒になるかと思った。

事件がひと段落してからの、
「こっからが本番だ」みたいな展開は、
エンタメしていて、とても楽しかったです。

しかし、
埼玉イエティの件は、いったいどうなったのだ…。


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