見出し画像

【随想】漫画『レベルE』冨樫義博

『レベルE』を読んだ。
冨樫好きを自負しているにも関わらず、恥ずかしながら未読であった作品。
集英社文庫上下巻で読む。
なかなかの情報密度。
文庫版だと確かに文字は読みづらいかもしれない。
それにしても、上質な短編連作集だった。
後の『HUNTER×HUNTER』を彷彿とさせるシーンが随所に散見され、非常に興味深かった。
この『レベルE』を読んで、冨樫さんの癖として「物語がピーク(佳境)を迎える瞬間に梯子を外すようなことをする」があるんじゃないかと思った。
それは「そんなマジになるなよ」といった一種の「照れ」なのか、それとも読者を裏切り驚かせるための「話法」なのかは分からない。
『HUNTER×HUNTER』でもそういったシーンがよく表れる。
ハンター試験では一番盛り上がるはずの最終試験を描かなかったり、キメラアント編におけるメルエムのラストも想像していたものとは大きく違った。
パリストンの選挙編における行動、アルカ編のそもそものルール(前提)を覆すような展開、クロロとヒソカのタイマンのお預けなど、そのほかにも上げればキリがないが、とにかく物語に没入し、登場人物たちに共感して一喜一憂する、そんな読者に冷や水を浴びせかけるようなことを平気でしてくるのが冨樫義博という天才漫画家である。
物語終盤で読者をいきなり突き放すこのどこか冷めたメタ視点と、物語中盤までの圧倒的なディテールによる卓越した盛り上がりの作り方が、冨樫作品の醍醐味であることを再認識した。


この記事が参加している募集

#好きな漫画家

1,802件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?