【随想】短編アニメ『ある1日のはじまり』アマンダ・フォービス&ウェンディ・ティルビー
1999年制作
アマンダ・フォービス&ウェンディ・ティルビー監督の「ある1日のはじまり(When the Day Breaks)」を視聴。
9分半の短編アニメーション。
鶏の男性の優雅な朝食。
トースターで焼いた食パンをかじりながら、
魚、レモン、スープ、ビスケット…
これから何を買いに行こうかと考えている。
鶏の男性は、ハットをかぶって買い物へと出かける。
別の家では、豚の女性がこちらも朝食の準備をしている。
陽気に歌を口ずさみながら、ジャガイモの皮をむいている。
最後の仕上げの牛乳が腐っていたため、仕方なく買い物へと出かける。
スーパーの入り口で豚の女性は、
ちょうど店から出てきた先ほどの鶏の男性とぶつかる。
鶏の男性が抱えていた紙袋から、レモンが一つ転がり落ちる。
レモンは、排水溝の穴へ落ちていった。
鶏の男性は、豚の女性を一瞥して
何も言わずに去っていった。
豚の女性が牛乳を買っていると、
外で車の急ブレーキの音がする。
道路にはレモンが散らばっている。
先ほどの鶏の男性が倒れている。
鶏の男性の人生に思いを馳せ、
焦燥に駆られた豚の女性は、駆け足で家路につく。
窓の帳をおろし、お湯を沸かすためコンセントにプラグを挿す。
物思いにふける豚の女性。
思考はプラグを通り、街の電線を駆け巡る。
知らない誰かがかけているアイロン、知らない誰かが話している電話、知らない誰かが見ているテレビ、知らない誰かが聞いているラジオ…
すべて繋がっている。
水道管を流れる水も、巡り巡って
あの鶏の男性の自宅と繋がっているのだ。
鶏の男性が不在の部屋。
食べかけの食パン。
沢山の人が運ばれていく都会の電車。
沢山の見知らぬ人の人生が交わることなく存在している。
お湯が沸き、豚の女性はプラグを抜く。
買ってきた牛乳をジャガイモの皮にかけ朝食にありつく。
窓の帳を開けた。
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