【LTRインタビュー:佐藤允彦(さとう・まさひこ)】その1
(初投稿2023/10/6、最終改稿2023/10/6)
今日10月6日は日本を代表する世界的な音楽家:ピアニストであり作編曲家、佐藤允彦さんの82回めの誕生日です。おめでとうございます! 今年(2023年)9月におこなったインタビューより、何回かに分けてご紹介していきたく思っています。佐藤さんはとりわけジャズの世界で巨匠として知られていますが、お話を伺っていくなかで、ご自身をジャズ・ピアニストというよりは「インプロヴァイザー」(即興演奏者)として定義されていることが理解できました。
第1回では、この夏に発表された最新のCDアルバム『スペシャリィ・テイラード』をご紹介いたします。代官山(東京都渋谷区)のジャズ・バー LEZARD(レザール)の30周年記念作品として制作されたもの。録音もお客さんをいれない状態で今年の1月にここでおこなわれています。
さて9月のインタビューのなかで、数百枚におよぶ佐藤さんの作品のなかで特に聴いてほしいものはありますか?と伺ったところ、「アルバムは作ったとたんに、もう次に目がいってしまう。いやになってしまう」とのこと…満足してしまったらそこで終わりで、気になったところこそが次作品へのきっかけ/活力になるというお話がありました。ですからリスナーとしては、そのときそのときに佐藤さんが力をこめて制作された、一番新しい音楽を聴かなければならないのです。
店のお客さんから届いた70曲以上のなかから、リクエストした人数が多い曲を優先的に選び、昨年末から今年の正月にかけて“いたずら心”も入れてアレンジ。ジャズ・スタンダードとしてよく知られた曲が大半ですが、「Otaru Canal 小樽運河」(Disc 2-10)など意表をつかれるものもあります。2枚組で計22曲を収録。「ふたつの読み物になるように」工夫して佐藤さんが曲順を決定されたそうです。
付属ブックレットには1曲ごとに佐藤さんが凝らした仕掛けが4名のかたによる座談会形式で明かされており楽しめます。解説者の小川隆夫氏は、フランク・シナトラによる1965年の歌唱でヒットした「イット・ウォズ・ア・ヴェリー・グッド・イヤー」(Disc 2-08)をリクエストされたとか。ここでは(歌はありませんが)歌詞中、主人公の年齢が上がっていくのにあわせてキーが上がりリズムが変わるというアレンジが施されています。
個人的に印象に残った曲を挙げるのをゆるしていただくと、
Disc 1-05 メロディが美しく紡がれる「プレリュード・トゥ・ア・キッス」
Disc 1-11 セロニアス・モンクの「イン・ウォークト・バド」から始まるチック・コリア作「バド・パウエル」
Disc 2-04 ピーター・ポール&マリーで有名な「The Cruel War 悲惨な戦争」の佐藤允彦版
Disc 2-07 佐藤さん曰く「マイルス・デイビスのソロをコピーしてピアノで弾いてんだよ」という「死刑台のエレベーター」
以上に加えて、1970年代のオリジナル作品「試供品-B」(Disc 2-06)の佐藤節に痺れました。
*CDリリース・インフォメーションから
【佐藤 允彦 プロフィール】
ピアニスト・作・編曲家・インプロヴァイザー
1941年 東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。1966~68年 米国バークリー音楽院で作編曲を学ぶ。初リーダー・アルバム『Palladium』でスイングジャーナル誌「日本ジャズ賞」。ビッグバンドのための『四つのジャズコンポジション』(1970年)、『邪馬台賦』(1972年)で芸術祭優秀賞。1981~2020年 ミュージックカレッジ MESAR HAUS主幹講師。1997年『BAJ Records』創設。1993年 自由即興ワークショップ 【RANDOOGA】開始。2009~2011年 東京藝術大学に講座【Non-idiomatic Improvisation】を開く。
最新アルバム
『スペシャリィ・テイラード』佐藤 允彦 & 加藤 真一
“Specially Tailored” Masahiko Satoh & Shinichi Kato
piano : 佐藤 允彦 Masahiko SATOH
bass : 加藤 真一 Shinichi KATO
all tunes arranged, sound design by 佐藤 允彦
KK-004, 005 3,520円(税込) 発売中
【収録曲名と作曲者】
Disc 1
01. All The Things You Are [Jerome Kern]
02. Stars Fell on Alabama [Frank Perkins]
03. Someday My Prince Will Come [Frank Churchill]
04. On Green Dolphin Street [Bronislaw Kaper]
05. Prelude to a Kiss [Duke Ellington]
06. The Wind [Russ Freeman-Jerry Gladstone]
07. You're My Everything [Harry Warren]
08. Bye Bye Blackbird [Ray Henderson]
09. Stella By Starlight [Victor Young]
10. In The Wee Small Hours of The Morning [David Mann]
11. Bud Powell [Chick Corea]
Disc 2
01. Ode to Sundown [佐藤 允彦]
02. Osmanthus Fragrance [佐藤 允彦]
03. You Are There [Johnny Mandel]
04. The Cruel War [Traditional]
05. Night And Day [Cole Porter]
06. 試供品-B [佐藤 允彦]
07. Ascenceur Pour L'échafaud [Miles Davis]
08. It Was a Very Good Year [Ervin Drake]
09. I've Grown Accustomed To Her Face [Frederick Loewe]
10. Otaru Canal [Tetsuya Gen]
11. Shall We Dance [Richard Rodgers]
(J)(Headline photo ©2023 J@TokyoJapan)