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Bo'ness and Kinneil Railway探訪記

 今回、機会あってスコットランドのBo’ness and Kinniel Railway(ボーネス・アンド・キニール・レイルウェイ)を訪れました。

 イギリスといえば保存鉄道が盛んですが、こちらの鉄道はエディンバラやグラスゴーといった都市からも1時間弱でアクセスでき、且つ併設されたスコットランド鉄道博物館も内容が充実していることから、手軽で満足度も高くぜひ多くの人に訪れていただきたいスポットです。

 この記事を読んで訪れる方がいることを願って。

1.はじめに

1-1.Bo'ness and Kinneil Railwayとは

 Bo'ness and Kinneil Railway (ボーネスアンドキニール鉄道)はスコットランドのmidland地方に位置する保存鉄道です。
 かつて港町Bo'nessと本線と接続するMannuel junctionを結び、港への鉱石輸送を担ったSlamannan and Borrowstounness Railway(スラマナン・アンド・ボロウズタウンネス鉄道)の路線を引き継いで観光列車を走らせており、蒸気機関車以外にも歴史的価値の高いディーゼル機関車等も多数保有しておりその懐の深さがうかがえます。
 また駅に併設されたMuseum of Scottish railwayでは蒸気機関車だけに限らず、現役を退いたばかりのIntercity225気動車など時代を問わず多くの車両を収集・保存・整備しています。

1-2.乗車まで

SLの予約は公式ウェブサイトから行います。↓↓

運行日は4月~10月の火曜・土曜・日曜・その他学校休日。

コンパートメント以外のチケットは終日どの便でも有効のようですが、定員管理の為、一応乗車列車を指定する仕組み。
特定日の午後便では車内でアフタヌーンティーを楽しめたり、月1~2回のペースで名探偵のショーやトーマスを模した機関車の運転したりするなどレトロな車両を活かした、ありとあらゆるイベントが行われています。

カードで精算が済むと登録したアドレスにバーコードが送られてくるのでそれを持って現地に向かいます。
自身は現地でESIMを使用していましたがBo'nessの街ではところどころ電波状況が悪い場所があったためスクショしておくと無難。

ちなみに最寄り駅までの鉄道はScot Railのアプリで予約しました。
イギリスでは当日中の往復料金≒片道料金という独特の運賃体系のため往復でのチケット購入が断然おススメです。
open returnを選択すると帰りは好きな時間の電車に飛び乗れるので寄り道しても安心。

今回複数人のチケットをまとめて買っていたのですが、自動改札の通過は1人ずつの為、1人ずつバーコードを読み取らせて後ろに携帯をパスする……というなんだか非効率的なことをやっていました。各々購入するのが良いかと。

1-3.今回の行程

今回の行程は以下の通り。

●10:15 Glasgow queen street station
↓  Scot Rail Edinburgh Waverley行き
●10:45 Linlithgow station
↓ 徒歩
●11:25 The cross bus stop
↓ F49 バス
●11:51 TESCO bus stop
↓ 徒歩
●12:30 Bo'ness station
↓ SL乗車
●13:40 Bo'ness station
↓ 博物館見学
●16:31 TESCO bus stop
↓ F49 バス
●17:00 station road bus stop
↓徒歩
●17:08 Linlithgow station
↓ Scot Rail Glasgow Queen street行き
●17:39 Glasgow Queen street station

Glasgow発ですがEdinburghからの方が近いので宿泊場所に合わせて適宜予定を組んでいただけましたら。
最寄りのLinlithgow駅からはF49もしくはF45系統のバスが出ており、運航会社が違うため等間隔ではありませんが概ね1本/hくらいの頻度です。

2.Bo'ness and Kinneil Railway乗車記

2-1.Bo'nessまで

当日はGlasgow queens street駅を10:00に出るScot railのEdinburgh行き急行に乗車。
この区間はスコットランド2大都市を結んでいることもあり8両編成のclass385が2本/hで運転していますが夏祭りの期間ということもあり立ち席も出る混み具合。
途中のLinlithgowまではきっかり30分の道のりです。

Glasgow Queen streetは市内中心部に位置するサブターミナル。
主にスコットランド各地へ向かう列車がひっきりなしに出入りします。
手前がこれから乗るclass385。

Linlithgowは宮殿が街を見下ろす田舎町。
車窓からは宮殿に付随する巨大な教会のモニュメントが目を惹きます。
せっかくなのでバスまで30分程時間があったので宮殿を眺めに行きました。
湖を見渡す丘に立つ廃墟の宮殿というあまりにもそそられる風景。

メアリーステュアート生誕の地、リンリスゴー宮殿。
教会の特徴的な尖塔は遠方からもかなり目立つこの街のシンボル。

街の中心にあるThe crossの横にあるバス停から乗車。
バス停には名前も時刻表もないので本当に来るのか…と不安になっていましたが
10:25に通りの向こう側からベンツ製のミニバスがやってきました。
乗車時にドライバーに行き先を告げると料金と交換にレシートを発行してくれ、それがチケットがわりになります。カード決済可。

小さいバスだからか地面の段差が直にお尻に伝わってくるややワイルドな乗り心地。

バスは街を出て郊外の丘陵地帯を抜けます。
途中海沿いのBlackness castleで我々以外の乗客は降りて行きました。

遠くにフォース鉄道橋が霞む。

そこからひた走ること10分、Bo’nessの街中にあるスーパーマーケットの前でバスが止まります。
ドライバーの方が親切に駅への行き方を教えてくれました。

2-2.乗車!

入口で看板がお出迎え。
敷地入り口からすでに多くの保存車が見えてテンション爆上げです。
特に手前の歩道橋と信号所は幾度となく機関車トーマスで見た風景そのまま…。

看板と奥に見えるのは現役の信号所。
腕木式信号機も現役。

のぼりの案内に従って駅舎に入ります。
お土産屋さんやカフェを横目にホームに入ると左手に往時の改札を使用したと思われる受付窓口があります。
予約時にメールで届くバーコードを見せるとレトロな硬券を発券してくれました。

おいでませボーネス&キニール鉄道
改札内には秤や台車とトランクが置かれており旅行へ出発する気分を盛り上げてくれる。
チケットオフィスでバーコードと引き換えに乗車券をゲット。
終点のMANUEL JUNCTIONまでの往復乗車が基本。

受付を済ませたらいよいよ乗車の編成とご対面。
今回の牽引機は紛れもないトーマス…塗装となった55189号機関車。
1902年に製造され主に炭鉱や造船所で使用された産業用機関車でかなり好み。

小ぶりな前照灯がチャームポイント。
イベント時にはここに顔をつけて走らせるよう。
機関士の精悍な顔つき。

客車は4両編成。割り当てられた5028客車は4人掛けのボックスシートが並びます。

小ぶりな機関車がけん引するのは堂々とした1等車を含む4両編成の客車たち。
普通車の車内。たまに窓が開いていて煙の香りが舞い込んでくる。


2-3.いよいよ出発!

12:30、列車はゆっくりとBo'ness駅を離れます。
車内は平日にもかかわらず普通車の殆どのボックスが埋まっており、鉄道ファンのグループや親子連れで大賑わい。
また、車掌・駅員・機関士もキャリアを積んだ運営スタッフが揃っているようで指差呼称などかなり絵になります。

ゆっくりとホームを滑り出す。
手前のホーム上屋はHay market駅から移築されたものとのこと。

もともとBo’ness stationがフォース湾に沿った場所にあることもあり進行方向右手には海、左手に街を見ながら進んでいきます。
速度はかなりゆっくり。

どこまでも続く草原に煙をたなびかせながら走っていく。


西に進んでいた列車は緩やかなカーブを描きながら南に進路を取り、徐々に街が途切れて雑木林を抜けると雄大な牧草地帯へ。
途中ハイキングコースと交差するあたりがKinneil station。
交換設備があるくらいで駅の周囲には人家はありませんがトレッキングの出発点にもなっているようです。

我々は進行方向左側のボックスに乗車しましたが、なんとなく右側の方が海が見えたり牧草地域も広がっていたりダイナミックな印象でした。(隣の芝生かもしれませんが…)
しばらく走ると2つ目の停車駅Birkhill station。
途中駅では唯一しっかりとした駅舎や跨線橋がある駅です。
ただし現役当時にここに駅はなく観光用に作られたもので、駅舎も移築されてきたものとのこと。ホームには鉱山で使用されたトロッコが置かれています。

BIRKHILL駅ではスタッフの方が掃除をしていた。希望すれば下車できるんだろうか?
ポツンとホームに置かれたトロッコ。

再び草原を南下してきた列車は20分ほどで、先ほどLinlithgowまで乗ってきたGlasgow-Edinburgh lineの線路と直角に出会い、西に急カーブを切る形で本線と寄り添い終点のManuel junctionに到着。
あたり一面草原で本線側にもホームはないため、実質SLの機回しの為だけの設備です。

到着後、折り返しまでホームに出て機関車を見に行く人々。
スコットランドの草原の中、しばし止まる機関車。
よく見たら出発の時におでこについていた前照灯が取り外されている…?

往時はこのまま本線に乗り入れてGlasgow方面に延びるルートと、先ほどのカーブで曲がらずに南下を続け、鉱山で栄えたSlamannan方面に延びるルートに分かれる結節点だったそう。

先頭でけん引してきた機関車はここで連結を切り離し客車の後ろへ。
その間乗客は客車から降りて思い思いに列車を撮影したり機回しの様子を見物します。

機関車は解結後、前進。ポイントの切り替えは手作業の様子。
左側に見える複線が現役の本線で奥がGlasgow方面。
左の機回し線を使用し機関車はBo'ness方の林の中に一度消えていく。
右手に直進していく線路は本線との連絡線。

機回しの間、駅の脇のGlasgow-Edinburgh lineは都市間急行が高速で通過して行きます。こちらののんびりしたSLとの差よ。

入れ替え中、轟音を立ててGlasgow Queen street行きの急行列車が通過。

しばらくすると機関車が客車の後ろにつき、出発準備が完了。折り返してもと来た道を戻っていきます。

ターンテーブルがないため復路はこの形で出発。

車内では各ボックスにテーブルが備え付けられているからか、各々持ち込んだランチを楽しんでいます。残念ながら我々はその発想がなかったためこのあとランチで苦しむことになるのは別の話。

また車内では車掌が検札で回ってきて先ほどの切符にはさみを入れてくれました。

日本でも見かけなくなった鋏。
シンプルな丸い穴が開く。

復路の車内では編成の中も散策。
Bo'ness側の1両は個室のファーストクラスでした。

コンパートメントの扉を開くと…
6人掛けの個室が。シートは1人ずつ分かれており座り心地がよさそう。

列車は1時間10分で出発駅のBo'nessにふたたび到着。
短い時間ですが古き良きスコットランドの汽車旅を楽しむことができました。惜しむらくは駅前のスーパーでお昼を買って汽車に揺られながら食べられなかったこと。。。。

2-4.休憩!

時間は13時過ぎ。
併設の博物館も見に行きたいところですが、さすがに空腹は抑えきれずBo'nessの街へ繰り出すことに。
駅の南西に広がる街の中心部にもいくつかレストランがあるとGoogle mapには記載があったのですが残念ながら行く店行く店閉店済み。駅前のスーパーマーケットに行けば食べ物自体は手に入るのですが、折角の旅行先なのに路上で買い食いするのも味気ない…ということでお店を探してぐんぐん歩いていきます。

Bo'nessの街並み。都市近郊の住宅街ということもあり、平日昼間の人通りは少なめ。

しばらく歩いて見つけたのがClover's coffee cornerというお店。
↓instagram
https://www.instagram.com/cloverscoffeecorner/


2024年に開店したばかりの新しいお店。店内もきれい。
アップルケーキとアイスカフェラテを注文。
あまーいお菓子が多い英国において砂糖控えめでほっとする味。

美味しいケーキとカフェラテを頂きました。
セレクトショップやヨガ教室を併設する街のカルチャー施設的立ち位置でファンシーな内装やメニューではありますがカフェでラップトップに向き合う男性もおり、住民にも広く使われているようです。

2-5.スコットランド鉄道博物館

休憩も挟んだところで2つ目の目玉、スコットランド鉄道博物館に向かいます。先ほど敷地の入り口にあった跨線橋を渡り駅の北側に広がる建屋がその本館。
ここからは構内に無数に置かれた車両に興奮して無言で撮影しまくっていたので連続で。

博物館への道すがら保存機が入れ替え中。派手なトーマス塗装と対照的にシックな黒の塗装。
跨線橋を渡ると広いヤードに大量の車両が留置中。
整備待ちとのことで本邦の大井川鉄道大代川側線を思い出す。
SLに注目しがちではあるものの歴史的なDLも大量に保存・整備されている様子。
奥に停車しているのは装甲列車…のようにも見える除雪車。
チケットを見せて館内に入場。Intercity225と49号機関車が並ぶハイライト。
グラスゴー地下鉄55号車。
時代を感じさせる細部の作りと日本では見かけない断面のアンマッチが魅力的。
建屋は南北に並んでおり2号館でも大量に車両が保存されている。
左手の郵便車は車内を見学することも可能。
Mechanical horseと呼ばれた3輪トレーラの先頭部。
1941年生まれの古典的なディーゼル機関車
42号機関車。美しいカーキ色と腰の据わったフォルムが好み。
ぎっしりと貴重な車両が詰まっていて来歴を読んでいるだけで時間が過ぎていく。
鉄道車両本体だけでなく関連設備の収集にも力を入れているのが嬉しいところ。
スコットランドの鉄道の歴史を学べるパネル展示もあり勉強になる。
屋外に設置されていた腕木式信号機の操作体験。
やっぱり重い。
敷地東側はディーゼル機関車が多く屯している。
半屋外ではあるがこちらにもディーゼル機を中心とした保管庫が。
内部の様子。やや雑然としているがところどころに車両のプロフィールを説明するパネルが並ぶ。
一通り観覧を終えると外は夕立。
先ほど乗ってきたトーマスが一日の運転を終え待機位置に戻るところ。
小型のタンク機関車とはいえ、雨の中煙を巻き上げて車庫へ帰る様子は迫力満点。

…といったところでちょうどバスの時間。
観覧中に降ってきた雨も上がり、また30分かけて揺れるバスにおしりを痛めながらLinlithgowへ帰ったのでした。

2-6.(おまけ)周辺の鉄道等いろいろ

今回Linlithgowまでのアクセスでお世話になったScot Railのclass385電車。
HITACHI製のA-trainシリーズであり東武電車や阪急電車の新型車のイギリスのいとこ的存在。
ただし鯉の口のように大きく突き出した貫通路は運転の時に視界を奪わないのだろうか…。
Edinburghの空港と市街地、港を結ぶトラム。
さぞ歴史ある鉄道かと思いきや今走っている路線は2014年に新規開業したもの。
全長42mでかなり長い。
打って変わってGlasgowの市街地を循環する地下鉄。
新型は丸い断面の縁にライトがある未来的なデザインで独特の乗車体験を味わえる。
車内。狭いのはLondon地下鉄でも同じだが、こちらは貫通路もあり車内も明るく比較的解放感がある。
Kelvingrove Art Gallery and Museumに展示していたGeorge Bennle作のrallplaneという乗り物。
飛行機と鉄道のいいとこどりをしようとした乗り物であり、円錐形の車体後部のプロペラで進む。
実際に試験線まで作られたのだとか。人間の想像力は無限大。
GlasgowでもEdinburghでも市内交通の主役はやっぱり2階建てバス。
かなり電気バスも走っておりさすが欧州といったところか。
のんびり走るのかと思いきやGlasgow airportへのアクセス路線では
市内で客を集めると高速道路をぶっ飛ばして空港まで結んでおりかなりの迫力だった。


3.最後に

今回縁あって長年気になっていたイギリスの保存鉄道を体験することができました。
日本語の情報も少ない中で何とかたどり着けたのは英語堪能な同行者の功績によるところが大きいのでここに御礼を申し上げます。
……とはいうものの、多くの人に怖気ず訪問してほしいため今回旅行記の形にまとめさせていただきました。
現地のスタッフの方もかなり親切なのでぜひ訪れてほしいものです。

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