陰桐 志那:Ms.Negativity -into instinct
怖かった。逃げまどっていた。痛かった。恐れていた。
息を吸うたびに冷えきった空気が喉を通り、ひしひしと声帯をきしませながら心臓に針を刺してくる。
脚が竦む。だというのに、膝の関節は微動だにもしない。
「畏怖」という釘を「実感」という金槌で背に打ち込まれ、貫通したような胃の中で吐瀉物になるはずのものが蠢いている。
首の骨が悲鳴を上げ、何もかもに諦めが付いた人間の風体を醸して、頭を垂れる他に逃げ道はなかった。
恐怖も、悲哀も、苦痛も、喘鳴も。
まるで度が過ぎたかのように、身体で受