とりあえず、脱出できない
付き添いで出かける。
転職活動中の身。
待ち時間も業界やその関連情報を得るべく…
得るべく……得るべく……
……。
まあ、合間に読んでいた本も、なんらか血肉になっているはずだ。
そろそろ時間と外に出ると、街の書店が目に入る。
どうせ待ちだし、ちらっとのぞくことにする。
♪~
『おわった。どこにいるの?』
あれ、15分たっている。
「ごめん、すぐそっちに行く」
歩きがてら、駅の反対側でなんだかいい感じの本屋を見つけたことを報告。
『いい感じならちょっと見てみたい』
「いいけど、すぐ帰るよ」
『はい』
小説の棚の前をウロウロ。
サイン本あるな~!
このタイトル気になる!!
え、この作家さんってどんな感じ??
やばい… すぐ帰るんだった……
店内を見回す。
新書の棚の前にいる。
「帰る…… ん? なにそれ? おもしろい?」
『うん』
「え、コレもおもしろそうじゃない!?」
『コレも気になる…』
新書トラップにかかっているうちに、激しい雨音が聞こえてくる。
『もお、早く帰らないからっ』
「とりあえず、弱まるまで出られないし…。うわ、50分後まで止まないって。仕方ない、もう少し見て行こう」
一般書の棚、雑誌の棚、漫画の棚……
そして、再びの小説の棚。
海外、時代……ジャンル別トラップにもくまなく引っかかる。
『雨、止んでる』
「ああ、ほんとだ。出ないと」
出口付近。
もちろんここは入り口でもあるわけで、、、
「あっ!」『あっ!』
当然のようにおすすめ・新刊トラップに再度引っかかる……
本屋からは永遠に脱出できない。
とりあえず、お店を出て電車に乗る。
一緒にいるのにほぼ会話はない。
それぞれ本に顔を埋める…
本屋を出れたように見えて、本からは脱出していない……
そんなわけで、とりあえず、永遠に脱出できそうにない。
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