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delyを卒業しました。

こんにちは。long(@kametaro)です。私ごとで恐縮ですが、この度dely株式会社を卒業しました。考えてみれば2年半という短い期間だったのですが、素晴らしい仲間たちと一緒に「クラシル」をひたすらよくすることだけに集中することができて、本当に充実した日々を過ごせました。関わって頂いた方々にはこの場を借りて改めてお礼申し上げます。

クラシル

クラシルは凄まじい勢いで成長を続けてて、ぼくの貢献などまったく微力に過ぎないのですが、この在籍した2年半を自分なりに振り返ってみることで、もしかしたら、これから機械学習エンジニアやデータサイエンティスト、データエンジニアなどを目指されている人に、ほんの少しでもお役に立てばと思っています。

一人目の機械学習エンジニアとしてジョイン

正直なところ、ぼくはdelyにジョインするまで、delyのことをまったく知りませんでした。転職の直前は、心が折れそうになることが多くて、当時担当していたサービスに明るい兆しを見出せないでいました。そんな折に、ちょっと前に登録してた転職エージェントからたまたま連絡があって、ちょうどオフィスが近かったから話だけ聞きに行ってみたところ、あれよあれよという間にdelyにジョインすることが決まりました。

ぼく自身は、機械学習がずっと本業じゃなくて、サーバサイドとかWEBプロダクトのエンジニアでした。機械学習やデータサイエンスのスキルは、こちらの講座で独習したのと、そのあと、それを実際に前職のデータ分析で活用した程度でした。

なので転職するにしても、ポジションとしては、その時はサーバサイドかインフラをメインにしたいと考えていました。機械学習については、まぁ最近流行ってるしチャンスがあればちょっとやってもいいかなというくらいのぬるい感じでした。強いていえば、個人的に数学が趣味なので、数式を傍らに仕事ができたらいいなーくらいの、そういう漠然とした期待がちょっとありました。

delyに面談に行った日は、ちょうど数学セミナー2017年8月号が朝届いていて、オフィスのソファで呼ばれるのを待ちながらそれを読んでいました。そのとき面談に対応してくれたのがCTOの大竹さんで、経緯は全然覚えていませんが、早速フェルマーの最終定理の話をしたことだけよく覚えています。(ちなみに、数学セミナー2017年8月号の特集は「分野を語る10の定理」で、読み返してみると確かにフェルマーの最終定理についてもほんの少し言及がありました。これで話したんだっけ・・・)

その後大竹さんは、クラシルを通してユーザさんたちに届けたい未来を熱く語ってくれました。その話を聞いていく中で、自分がいまサービスに対して漠然と足りないと感じていたものがここにはある気がしました。ぼくはそのときクラシルがめちゃくちゃ伸びているサービスだと知らなかったので、単純にこのサービスの未来は明るい、ここでなら貢献できることがたくさんありそうという期待に胸が躍りました。それで課題を受けることにしました。

ただその時点で、delyには機械学習エンジニアやデータサイエンティストというポジションはなかったので、自分が1から作っていく必要がありました。ほとんど素人みたいな自分にそんな役目が果たせるのか不安もありましたが、それ以上に期待の方が大きく、課題もどうにかクリアして、一人目の機械学習エンジニアとしてジョインすることができました。

AWS Summit Tokyo 2018の基調講演

ジョインして最初に思ったことは、これだけユーザ数を抱えているサービスでありながら、ユーザ行動ログもコンテンツのデータも構造化されて整っているのはスゴイ、という点でした。当時までのクラシルのデータ分析基盤の歴史がこちらに詳しく書かれています。そして、いまはさらなる進化を遂げています。

事業会社ではよくある話だと思うんですが、ユーザの行動ログなどはあまり重要視されないので、利用しようってなってから「そろそろ考えなきゃ」とか、もし仮にデータはあったとしても、「やれ、キーがないから使えない」とか「欠損が多すぎる」とかいった問題が色々出てきちゃって、根性でなんとか頑張ってかき集めてきたデータを、コツコツ前処理を頑張ってようやく構造化データに加工するというが一般的です。

ところが、クラシルではサービスをリリースして間もない頃からユーザの行動ログを取得していて、レシピに関するデータもそのほとんどが構造化されていました。これって、ある意味ではKaggleで提供されるデータセットより断然扱いやすい状態だと思います。これは、クラシルがUGCのサービスでなく、レシピコンテンツを自社で制作し運営しているサービスだからこそできる話で、他社でこれほど扱いやすいデータを揃えることは、まず難しいと思います。

と、ジョインしてしばらくは、いきなりモデルをゴリゴリ作りはじめたわけではなくて、その整然とした素晴らしいデータがあるにもかかわらず、どうやって使っていくかわからないという状態を打破すべく、分析の枠組みを整備しつつ、同時にいま行われている施策に対する分析などをしていました。

そんな中、AWSの担当SAさんの方からAWS Summit Tokyo 2018の基調講演に大竹さんにぜひ登壇して欲しいという話があり、そこで機械学習の取り組みについて話して欲しいというオーダーが舞い込んできました。正直、ぼくにとっては寝耳に水でしたし、まだその時点では何一つ準備している段階ではありませんでした。

ただ、脳裏にはほんの少しだけ、SageMakerを使えばもしかしていけるんじゃね?と頭に浮かんでいました。

で、そこからどうにかこうにか、AWSのSAさんのアドバイスを受けながら、レコメンドシステムの構築に関してはほぼ未経験のぼくが、1人で1.5ヶ月という期間でリリースに漕ぎ着くことができました。SageMakerがなかったら無理でしたね。(大竹さんキーノートに登壇する姿は、社内みんなでオンラインで見守ってたんですけど、いやードキドキしましたね、本人は涼しい顔してましたが。。)

データ基盤の活用

さて、機械学習に限った話ではなく、クラシルの開発全般において、データは非常に重要な役割を担っていました。新しい施策を考える際には、ユーザさんの行動からヒントをもらうことも本当に多いです。データだけでなく、ユーザさんの生の声を聞いたりもしていて、改善に対して本当に熱心な会社なんです。みんなクラシルが大好きです。ぼくも大好きです。

ちなみに、これが最近のお気に入りです。うちでは、ナツメとクコの実を入れてます。

あとdelyの開発部は、こまめにtech blogをみんなで書く素晴らしい習慣があるので、具体的な取り組みに興味がある方は是非読んでみてください。

開発部のテックブログ

おっくーさんの記事。改善プロセスが詳しく書かれています。

ぼくが前に書いたやつです。

でも、ぼくからみて一番何がすごいかって、社内の非エンジニアの中でも、マーケター、営業、フードプランナー、料理人など、職種を超えてSQLを書いて分析する人たちがいるという点です。

「この場合はどうやってWHERE句書けばいいんですかー?」そんな質問をする料理人さんってすごくないですか?

EDA・サーベイチャレンジ

ー昨年には、データサイエンスチームが発足しました。ただ、チームといっても当初は、ぼくと検索担当エンジニアsakuraさんの2人だけで、EDA(探索的データ解析)の進め方や、論文を定期的に読んで有用な情報をクラシルに還元する方法(サーベイチャレンジ)など、全部手探りではじめました。

EDAではクラシルを中心として、ユーザ行動とレシピ素性の両方の深堀を行いました。これにより、いろんな指標に基づく良いレシピを定量化して再現できないか検討したり、レシピの素性に基づいてユーザの行動を分析することでユーザのクラスタリングを行ったりしました。

サーベイチャレンジでは、mendelyを用いてチームで論文を共有して、サーベイが終わったら定期的に報告する会を開催していました。

sakuraさんの記事です。

途中からもう一人心強い仲間、待望の機械学習エンジニアが加わり、これからもっとやっていこうという感じだったのですが、ちょっと体制の変更などもあって、データサイエンスチームは残念ながら解体することになりました・・

新たに加わった機械学習エンジニアの@_ikki02の記事です。

delyでの取り組みをAWSさんのブログとして寄稿させてもらいました。日本語、英語版、ありがとうございました。

EDAの取り組みについては、ヒューマンコミュニケーション基礎研究会 (HCS)さんに事案を発表させてもらいました。

筑波大学の加藤誠先生とご一緒させてもらって、マルチリービングというランキング・アルゴリズムを使った自動最適化の取り組みにチャレンジしました。加藤先生、ありがとうございました。

改めて思い返すと、結構いろいろとやってきました。

データエンジニアにジョブチェン

そんな感じでいろいろとありましたが、様々な部署でのデータ活用が増えたことや、それぞれの課題に対して少数精鋭でコミットいく体制へと移行していく中で、ぼくたちはデータエンジニアリングに注力するために、昨年末からデータエンジニアにジョブチェンしました。とはいえ、分析は相変わらず続けていたので、中身はあんまり変わってなかったんですけどね。データエンジニアリングというのは、いわゆるデータレイクにあるビッグなデータを必要な人(分析する人やSQLを書く人など)に必要な分を届けたり、自らもデータを使って機械学習サービスを構築したりする仕事です。アプリの開発に比べると裏方の地味な印象のある人も多いと思うんですが、データはこれからますます重要になってくるし、個人的にはとてもやりがいある仕事だと思います。

そういえば、こんな記事を前に書きました。

delyで学んだこと/これから

delyで本当にたくさんのことを学びました。その中でぼくにとって一番大きかったのは、やはりプロダクトに対する愛着の重要さです。作ってる側がプロダクトに愛着がないと、そりゃあいい物なんてできっこないです。

こんな当たり前のことなんですけど、プロダクト開発も、営業も、マーケも、それからデータ活用や機械学習なんかも全部、関わること全てがプロダクトをよくすることに集約していて、そして、それを通じて利用者に素晴らしい価値が届けられ、会社にも利益が育まれる。ただ、目の前の仕事に没頭していると、ついついそのことを忘れ自分の作業にだけ集中してしまいがちです。

そのことを、delyで働くみんなのクラシルへの愛着をみて、その重要さを常に再認識させてもらっていました。このサービスの未来は明るい、そんなふうに面接のとき大竹さんの話を聞いて感じたのは、データうんぬんや分析うんぬんということではなくて、実はそういうdelyの文化に対してだったんだなと改めて感じています。

delyを卒業後、ぼくはニューリテールの分野に進んでいきます。今の自分にしかできないことってなんだろう、まだ実現されてない様々な価値を届けていきたい、そしてそこで得た経験は再びdelyに還元できることもあるんじゃないだろうか、そんなことを色々と妄想した結果、delyを去るのは悲しいことでしたが卒業する選択をしました。

このサービスの未来は明るい、そんなふうに自分でも思えるサービスを、新しい仲間たちと共にこれからも頑張って作っていきたいと思います。

まとめ

というわけで、delyを卒業するにあたって、在籍中の2年半を振り返ってみました。大した話もないんですが、ぼくは一応量的に評価する視点は持ち合わせていると思ってて、それと同時に、

人が運営するサービスの価値は利用する人との価値の共感にある

そう思っています。量的、質的はどっちが正しいではなくて、両方の視点を持っていることが重要なんじゃないかなと個人的に思うんですよね。

delyのみんな本当ありがとうございました。これからも頑張って!

そして、delyのチャレンジは続く。クラシルリテールプラットフォーム!

そんなdelyでチャレンジしたい、もっと成長したいというエンジニア、デザイナーの方にとって、delyは本当に活躍できる会社だと思います。ご興味のある方は是非一度お話ししてみてはいかがでしょうか?


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