[読録]九段理江「Schoolgirl」

 読んだのは『文學界』2021.12所収のもの。環境問題に「目覚め」た我が子と、小説を読み耽った青春時代を持つ母親。母娘の間の分断が、思わぬ補助線によって溶かされ―。所謂Z世代の偏重姿勢がやや誇張的だが、「女生徒」がちょうど母娘の中間に位置すると考える構造がおもしろい。母と娘という関係を自己と他者に遡及させるところが良かった。

 この作品は芥川賞候補作でもあり、その選評が一部ネットでも見られるようになっている。そこでこの作品を高く評価しているのは、オジサン三人で、小川洋子、山田詠美、川上弘美は否定的であることに注目したい。小川洋子の評が特に興味深いので以下に引く。

『Schoolgirl』の娘と母は、対立することさえできない異なる座標に立っている。その不気味さが、底なしに深く掘り下げられてゆくさまを読みたかった。

選評,小川洋子

「対立することさえできない」という指摘が眼を惹く。本来対立を繰り返して成立してゆく家族、親子というものが、もはや分断でしかありえない形で、並行してゆく印象は確かにあった。

 結末部において、やっとスタート地点に立つような印象はぬぐえない。それでも新しく、面白い試みが小説の中にあったのも確かだろう。