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2022年2月の記事一覧

[詩] すべて消滅する恋愛のために

[詩] すべて消滅する恋愛のために

恋愛は消滅する。誰も気付いていないか、気づかないふりをしている。それは悲しいことでもないが、うれしくもない。閉じられた恋愛たちを供養する人はいない。挽歌はうたわれず、通夜もない。岬の灯台の下のフェンスに結ばれた南京錠は、ふたりの名を刻んだまま。時と風とが午後を均していった。

恋愛は消滅する。けれども人は、恋愛を求める。漁火のごと、夜の海にこうこうとあかるく。海の暗みに、夥しい無数の手の波。それは

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