西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと…

西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと風景画集です。

最近の記事

ある地名の風景

”油面地蔵通り”に、雨 aburamen-2 ここは油面の地蔵通り。 絵の左にあるお堂が”高地蔵”と呼ばれるお地蔵様です。 子育てにご利益があると昔から親しまれているそうです。 ところで”油面”の油は、燃料や食料の油でしょうか。 これは偶然なのですが、 藤沢に”地蔵面”という古い地名があることを知っています。 これは、お地蔵さまに花や菓子、水を供えたり 定期的に掃除したり、お堂の修繕をしたりという 維持管理に必要な経費を賄うため、 年貢を免除された田んぼのことだ

    • ある地名の風景

      油面公園のすべり台 aburamen 今年の梅雨入りは遅れそうですが、 昼は真夏全開! でも朝晩は、まだ涼しい風がカーテンを揺らしています。 三軒茶屋で用事をすませ、バスで目黒に向かったのですが その途中、面白い停留所に気が付きました。 面白いといっても停留所の姿形ではなく、 もちろんその名称。 「次は油面公園・・」 ”あぶらめん”? あれ、こんな所にそんな地名があるのか・・。 バスからの景色は普通の住宅街です。 近くにそういう名前の公園があるのでしょうが、

      • ある地名の風景

        塔ノ山の三重塔 tonoyama 先日、中野区の地下鉄中野坂上駅から 徒歩で山手通りを東中野方面へ向かう途中、 ”塔ノ山町会”という掲示板を目にしました。 中野区に”塔ノ山”なんて町名あった?? 疑問に思いつつ、後から地図を広げてみると 私が歩いたあたりは中野区中央という町名です。 しかしよく見ると 塔山小学校とか塔の山ハイツなどを発見。 どういう事?地名探偵の血が騒ぎます(笑) 町内会があるからには そこの地名を名乗っているはずです。 今の住居表示ではな

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          駅へと続く名もなき坂道-大塚 otsuka-2 タイトルにある駅とは山手線の大塚駅ではなく、 地下鉄丸ノ内線の”新大塚駅”のことです。 そう、ここも紛れもなく”大塚”。 文京区大塚・・ 山手線の”大塚”という駅名は いったいどこから取ったのか。 その南北には北大塚・南大塚の町名があるものの、 ただの”大塚”という地名は 昔からこのあたりにはなかったようです。 いろいろ調べて この駅名の元は2キロも南にある 文京区の大塚だったことが分かりました。 つまりここが本

        ある地名の風景

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          都電が行き交う初夏の午後-大塚 otsuka ここは東京豊島区にある山手線大塚の駅前。 コーヒーを片手に駅ビルの窓から眺めています。 ゆっくり走る都電の姿はまるでオモチャのよう。 以前から気になっていたのですが、 ”大塚”というからには どこかに塚がある、あるいはあったのでしょうか。 ”塚”の付く地名は珍しくありません。 大塚をはじめ小塚、犬塚、塚原、塚本、塚田・・・ ”塚”とはそもそも物を埋めた場所を言い、 古墳や墓も塚です。 そこで思い出すのが、平将門の

          ある地名の風景

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          午後は雨、骨通りの白猫 kotsudori-2 最近、ずいぶん風の強い日が多いと感じます。 雨よりマシという人もいますが 私は雨の方が好き。 そういえば、沖縄はもう梅雨入りとか・・ 私も今年初めてカエルの声を聞きました。 ところで”骨通り”の謂れとはどんなものでしょう。 いろいろな説があるのですが、 荒川区の説明では「小塚原の略称を冠して骨通りという」とあります。 「こつかはら」「こづかっぱら」を略して 「こつ」と呼んでいたから 「こつどおり」になったという解釈

          ある地名の風景

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          ”骨通り”という街角 kotsudori その昔、江戸には鈴ヶ森、小塚原という 二つの刑場がありました。 鈴ヶ森は今の品川区南大井、小塚原は荒川区南千住。 現在はどちらも史跡となり、お寺の敷地です。 時代劇で聞くくらいで どちらも行ったことはなかったのですが、 ちょっと前に知人から 「南千住に”骨通り”(こつどおり)という道がある」 そんなことを聞きました。 歴史が歴史だけに、いかにもという地名。 聞き流すわけにはいきません。 そして初めて訪れた南千住。 何

          ある地名の風景

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          小豆沢の崖に咲く躑躅 azusawa-3 ずっと小豆の話ばかりでしたが 小豆と言えば、妖怪”あずき洗い”を思わずにいられません。 徳島生まれの友人。 子供のころに帰りが遅くなると 「”あずき洗い”に連れていかれる」と親に言われたそう。 それから小豆といえば ”あずきバー”で有名な井村屋。 実は井村屋のホームページに、小豆の語源について こんな記事がありました。 「「あず」「あづ」は崩れやすい意味で、 煮崩れしやすいことから「あずき」となった・・・」 ちょっと

          ある地名の風景

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          新緑の参道ー小豆沢神社 azusawa-2 連休だっていうのに地名の話~?辛気臭ー そんな声が聞こえてきそう。 まぁ、その気持ちもわかりますが(笑) 前回お話しした「小豆が流れ出た」という ”小豆沢”についての説話ですが、 その他にもいくつか地名の起こりを伝える話があります。 ・飢饉の年に小豆が流れ着き村名とした。 ・洪水の時に米が流れ着き、村人は腐らないうちに 小豆を入れて赤飯にして食べてしまった。 これを聞いた米の持ち主が訴えたものの 村人の勝利となり、村の

          ある地名の風景

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          小豆沢の昼下がり azusawa ここは東京の板橋区と北区の境界を流れる新河岸川の河畔。 とても天気が良く、日差しはちょっと強いのですが 乾いた風が心地よい日です。 対岸が北区、こちら側は板橋区。 そして私が立っているのは”小豆沢”という町名です。 ”小豆”と書いて「あずき」ですが 町名は”小豆沢”と書いて「あずさわ」です。 新河岸川は荒川の支流として江戸時代からあったらしいのですが、 大正から昭和にかけて本格的に整備されたようです。 荒川には古くから大小の入

          ある地名の風景

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          桜散る、おとめ山の緋鯉 otomeyama 神奈川の箱根に”乙女峠”という地名があります。 昔、バイク乗りの友人が、週末になると 「乙女峠をせめる」なんて話していました。 ”乙女”が付く地名は全国にあります。 栃木の小山市・大分の宇佐市に”乙女”、 滋賀の高島市に”乙女ヶ浜”、山梨の牧丘町に”乙女高原”、 奈良の河合町に”乙女山古墳”・・・ 若い女の子を連想しがちですが この”乙女”いった何でしょう? 前回の”落合”周辺をうろついていて見つけたのですが 実は都内

          ある地名の風景

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          落合の夜桜 ochiai ここは妙正寺川流れる 西武新宿線下落合駅の近く。 ちょっと前に 新宿区の中井の回で”落合”に触れました。 落合という地名は特に珍しくもなく全国にあります。 川や道の合流点につく地名ですが 新宿の落合は神田川と妙正寺川が落ち合っています。 知ってはいたのですが どこで合流するのか実際に見たことがなく、 今回確かめてみました。 しかしなんと、現在の合流点は 下落合の隣の街、高田3丁目ではありませんか! 下落合の駅からだと1.5キロ近く離

          ある地名の風景

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          雪谷の円長寺に紅い花 yukigaya-2 もうすっかり春だというのに 雪の話で申し訳ありません(笑) 大田区の”雪谷”といい、鎌倉の”雪の下”といい なんとも情緒あふれるきれいな地名です。 語源や由来がどうであろうと これはこれで、地名の魅力だと思うのです。 もちろん文字のきれいな地名ばかりではありませんが どうしても漢字の持つ意味が その土地を印象づけてしまいます。 昨年でしたか、岡山の大学が お寺に伝わる「人魚のミイラ」を科学的に調べた結果、 精巧な作り

          ある地名の風景

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          池上線に揺られながら今日も帰る私なの-雪谷 yukigaya もうずいぶん前、「池上線」という歌がありました。 タイトルはその一節。 5~6年前、これを歌う西島三重子さんが 「小室等の新・音楽夜話」に出演されていて 久しぶりに聴きました。 まぁ、分かる人には分かる、懐かしい人には懐かしい(笑) ここは池上線雪が谷大塚駅のあたり。 小田急線や京王線などと違い池上線は3両編成。 なんだかとてもかわいらしい電車です。 前回、前々回の久が原を訪ねて もう一つ気になった

          ある地名の風景

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          久が原の道、色・ホワイトブレンド kugahara-2 絵はポップだし タイトルもどこかで聞いたよーな・・まぁ、春ですから(笑) この道は久が原の住宅街です。 碁盤の目状の街区で、こんな真っすぐな道が特徴的です。 散歩するにはちょっと単調ですね。 あまりキョロキョロすると不審者ですし(笑) 明治初期に作られた地図を見ると 直線道路が交差する久が原の中央部は ほとんどが畑だったようです。 どうりで・・ 久が原は、 昔は「久河原」「久川原」などとも書かれたようです

          ある地名の風景

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          久が原に春風舞う kugahara ここは大田区久が原の小さな公園。 心地よい風とちょっと眩しい日差しはもうすっかり春。 平日のせいか、 走り過ぎる池上線のほかは何とも静かな午後です。 井の頭線が走る杉並区には”久我山”という地名がありますが ここは似ているようでちょっと違う”久が原”です。 私はしばらく”ひさがはら”だと勝手に思っていましたが ”くがはら”だと知り俄然来てみたくなりました。 杉並の久我山と比べてみたいと思ってのことですが 来てみたところで何も

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