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【解説】文字起こしばりぐっどくんが、始まった裏側

 本日は、ばりぐっどくんがAIになったストーリーについて、少しずつまとめてみたいと思います。ばりぐっどくんがAIになった最初の子は「文字起こしばりぐっどくん」です。この記事を書いている時点で287,000人を超えるユーザー様がおられ、いまでも毎日全国から大量の文字起こし依頼を捌いている優秀な子です。

 今日はそんな文字起こしばりぐっどくんが、なぜ西海市で生まれたのか、という部分を少し解説させていただきたいと思います。

⚪️"文字起こしばりぐっどくんは、はじめから自治体職員のために作られた"

 文字起こしばりぐっどくんは、そもそもが自治体職員向けに開発されたAIです。

 それは2018年の冬のある日。朝から市役所にきて私は、市の今後の地方創生戦略について、さまざま職員さんたちと議論していました。

 そしてその時は「こんな事業を、こんなふうに推進していけば、西海市はもっと楽しいまちになりそうだ」という非常にポジティブでクリエイティブなミーティングが行われました。

⚪️"会議の文字起こしと議事録の作成をしています"

 その会議が終わった後、会議室から出てふと職員さんたちの机の方を見ると、別の1人の職員さんが、仕切りに紙を睨めっこしながらしきりパソコン画面にタイピングをしている方がいました。時々イヤホンをしたりもしていて、『音楽聴きながら仕事してるのかな』と思って、あの方は何をしているのですが?とさっきまで会議をしていた方に聞くと、「彼女は、会議の文字起こしをしています。今日は午後いっぱいはかかるのではないでしょうか」というような会話を、しました。少なくともそれが"文字起こしばりぐっどくん"のアイデアのスタートです。

⚪️人口減少に困っているまちの職員に"退屈な仕事を"やらせてはいけない

 未来的で、クリエイティブで、ワクワクする政策を作る方がいる一方で、人によっては、今すぐにでも機械にやらせた方がいい仕事をされている方もいる。

 もちろんそういう退屈な仕事があるのは分かりますし、僕自身今でも、事務作業で大量の時間を使うことはありますが、「それが当たり前」ではいけないなと思ったのが、全てのスタートです。

 なぜなら私たちは「人口が減って困っている」のに「あなたがやらなくてもよさそうな退屈な仕事」に時間と労力を割いてしまっていて、それが「当たり前」の環境では、どんな政策も、どんな事業も、絶対に成功できないと感じました。

 僕は一応、2018年から半年間G's Academy 福岡校(これは深い体験だったのでまた後述します)というところで、プログラミングを勉強してきたわけなので、「この設計ならいけそう」というのを考えて、土日で作ってLINEで動かして、月曜に職員さんに使ってみてもらいました。(もちろん業務でLINEは使えないですが、あくまでデモとして使ってもらいました)。

 そうしたら、「めちゃくちゃ便利じゃん!」ということで、地域内で口コミが広がり、最初の日は300人くらいまで広がりました。僕は「うわ!ユーザーが300人もいる!!あと100倍で西海市の人口超えるな!」という話をした記憶があります。本当にこの時は、たった一人の職員さんのために、作りました。この人は間違いなく喜ぶだろうな、という感覚を持って、土日でガーッと作って、月曜に見せた。

 こういうアクションが、僕たちばりぐっど大学のコミュニティでは、いまもものすごく大切にしているつもりです。

 その後、SNSでアップしてみたところ、さらにユーザー数が増加し、300 => 30000人超。サーバーは処理が追いつかず停止。というのが次の3日間くらいで起こりました。

⚪️バズったときは、もちろん嬉しい。でもほとんどの時間は怖い。 

 この時ははじめて自分で作ったサービスがバズったので、みんなは「おめでと〜」と、喜んでくれるのですが、その時チームの開発者は私一人。誰にも相談せず作ったし、しかもプログラミングの経験は半年。

 なぜサーバーが止まっているのかもわからないし、そもそもユーザーのみなさまがツイッターで「ばりぐっどくん便利らしくて使ってみたんだけど、ダウンしてる!!」と拡散してくれるので、なおさらピンチ。(ここで会社として、はじめてちゃんとお金を準備して、G's のメンターのIさんや知り合いの大学のO先生にお願いしたり、学生エンジニア(ここで兵頭さんという、いまのばりぐっど大学の最高技術責任者に出会うのでこれはまた別途)にお願いしまくって、その時は難を逃れました。

⚪️地域のデジタル化は、"枯れた技術の応用で十分じゃない?"。
  文字起こしばりぐっどくんの技術的な部分でいえば、GoogleのAPIを叩いて、それをLINEのUIで返しているだけの、技術的には枯れた技術です。というか僕にはそれしかつくれなかったですし。

 ですが、これが「人が減っても大丈夫な社会づくりに、デジタルをどう使えばいいのだろう」という一つの疑問に対する、一つの仮説のようなものができた経験になったのは事実です。

 僕自身は、日本の地域で最先端技術の事業を推進してる人、というふうに光栄にも見ていただくことはありますが、実際は僕自身は、

・APIがすでに公開されているか / 要はAIを自分で作らなくて借りてこれるか
・それが顧客や市民にとって喜ばれるか、ちゃんと使われるか

を考えており、最新のAIの開発自体は、私ではなくチームの技術チームのみんなが開発してくれたり、リサーチをしてくれている、というのが今も変わらない裏側だったりします。



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