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2019年4月28日、日曜日、東京。

午前7時起床。「今日は有休だったんだった」と思い直して二度寝するが寝付けず。カエルにエサをあげようとエサ用のコオロギの箱を開けると皆死滅していた。土にカビが生えていて、おそらくそれが原因。非常に小さなコオロギなので、虫カゴの網目も抜けてしまいそうだから密閉パックに入れていたのが失敗だった。ホロコースト。全員逆さまになってピクついている。YouTubeで「南原清隆」と鬼検索。

午前9時、ちかわ、ヨネダも起床。ヨネダは「銀座に行きたくねえ」とずっと呻いていた。ヨネダは銀座のギャラリーで「REPRISE」展という展示をしており、この日が最終日。

午前10時、ヨネダが家を出る。チカワも洗濯用洗剤を買いに出る。俺はアルコ&ピースのラジオコーナー「LIFE〜人生の話〜」の2018年下半期特集を聴きながらビールを2本飲む。

午前11時、めんたいが徹夜明けでようやく帰宅。すぐさま3人で家を出る。俺が8mmフィルムで撮った映像作品が渋谷イメージフォーラムとかいう場所で上映される。吉祥寺駅までバスで行こうとしたが、2人が「あんなの乗れない」「あんなのいやぁ」とか言うのでしかたなく歩いていく。

午前12時7分、渋谷駅に着く。俺が参加するCプログラムは12時30分から上映。駅からイメージフォーラムまで徒歩で14分かかるとiPhoneに言われて焦る。日曜日の渋谷を疾走。人混みを掻き分けて3人で疾走。途中「金玉坂」とかいう坂があった。金玉坂。

12時28分でギリギリ到着。受付の知り合いの女性から「出品者は入場料いらないんですよ。」「記念に缶バッジお二つどうぞ。」「作品良かったですよ!」と言われるが汗ダラダラでよくわからなかった。

俺は一番後ろの左端の席で見た。ちかわくんは中央のあたり。めんたいは徹夜明けで眠気で死にかけていたのと前の人の頭がツンツンだったので後ろで立って見ていた。9作品ほど?が並んで、おれは最後から二番目だった。

緊張で死にそうだった。
「頼む、他の奴らの作品はクソであってくれ」と胸を抑えながら見た。おれはおれの作品をまだ見ていないのだ(こんなことってあるかい)。
一作目、なにやらぼんやりとした映像が流れていてダラダラとして安心した。なにより音がついてないことに安堵した。「おれはつけた。音を。音はいい。おれの音楽はいい。よし、安心。よし、よし。」とおれは震えていた。
二作目、タイトルが「光のための習作」と出て、「バカな。」と思った。「「習作」だと?バカな、バカな。おれだってつけたい。「習作」ってつけたい」と悶えた。しかもその作品が死ぬほどいい出来だった。「バカな、バカな。こんなことがあるのか。バカな。」いますぐ殺してくれ、燃えろ。映画館、燃えろ。と思った。
いよいよ私の作品である。内容については、もうよそう。まあでも、音は良かったですから。

全ての作品が終わって、部屋に灯りがつき、おれはスクリーンの前に立たされた。なにを喋ればいいんだろう、と思っていた。おれの前に2人、先に喋った。とても細かく「今回の作品は〜」と説明していて、「ばかな、」と思った。すごい喋ってる。なにを話そう、なにを話そう、と頭を巡らせていた。なにか喋った。

ハヤミに借りたものを返して、少し他にも挨拶をして、外へ出た。空が高い。ヘトヘトだった。「とりあえず飲もう。タバコを吸いまくろう。」金玉坂を下って、立ち飲み屋でハッピーアワー。まだ午後2時だった。

人生に挫折はつきものです。わたしは今回、挫折した。でもこれは、意味のある挫折です。これでフィルムとはどんなものかを知った。現像も編集もどんなものなのか身をもって体感した。光の量がどれくらいで写るのかわかった。カメラの機能も覚えた。わたしは車のヘッドライトが光って、めんたいが頭から血を流しながらうおおと雄叫びをあげる映画を撮ります。必ずリベンジします。まあでも、音楽は良かったですから。

それから銀座へ向かった。遠かった。

午後3時46分、銀座のギャラリーでヨネダと会う。「早く入れ、もう閉まるまであと14分しかないねんから」

展覧会は終わって、作品の搬出、撤去が終わるまでちかわくんとめんたいは銀座シックスの蔦屋へ、おれはストロングゼロが飲みたくてひとり歩行者天国で座って飲んでいた。雑踏が幻聴に聞こえてくる。ああ疲れたなあ、疲れたなあと思った。

午後5時。サンマルクカフェでタバコを吸って時間を潰して、ようやく飲み会となった。沖縄料理屋。
タカシさん、ダイさん、ヨネダ。
おれ、ちかわくん、めんたい。

飲んだ。飲んでも飲んでも、食べても食べても料理が出てくる。いっぱい美味しいものを食べた。泡盛をたくさん飲んだ。鹿児島の展示会に僕も作品を出します、出したいです、と参加することにした。7月の予定が一つ決まった。

午後7時、会計。なにやらヨネダとタカシさん、ダイさんがごにょごにょしだして、おれたちはタダになった。うっひょー!うっっひょー!!と思った。でもみんな3000円ひらひらさせて「そんなそんな!悪いですよ!」とか言ってるのでおれも3000円出して「そんなそんな
!」って真似してたらヨネダにもぎとられた。

「おまえはこの前のリョウくんと飲んだ時の金まだ払ってねえ」

あ?


二次会は「300」とかいう鬼カッケーところ。うるさすぎて大声で叫んで話さなくちゃならないし、それでも耳を近づけなきゃいけないからグンと仲良くなれた。ダイさん。もうダイちゃんとよんでくれよ、そっちのほうが嬉しいから、と言われた。

午後9時、解散。

午後10時、おれ、めんたい、ちかわくん、ヨネダの4名、吉祥寺駅到着。

ここからだ。ここからが書きたいところ。長かった。1日にたくさんありすぎだった。

午後10時、二木(26)、小林(26)、千川(27)、米田(27)の4名が吉祥寺駅に到着。電車を降りると千川が二木にこう言った。「井の頭公園へ行かないか。」

そのとき二木は朝からさんざん飲み倒しており疲弊していて翌日も朝から仕事があったにも関わらず気分が高揚していた為、快諾。帰路とは逆方向の南口から外へ出て、井の頭公園まで3人を案内した。

歩きながら二木は、なぜこんな夜遅くに井の頭公園へ行くのかと聞いた。小林、千川、米田の回答は明瞭であり、曰く「青姦を見たい」ということだった。

二木の証言。
「正直、どうでもいいと思いました。青姦なんて、今時の人はやらないだろうし、それにその夜は気温も低かったですから。本気でそんなファンタジーを信じてるんだろうか、まあ冗談だろう、そんな気分で彼らを公園まで案内しました。」

近くのコンビニで二木は酒を買い、それから二木の知る雰囲気のある場所まで彼らを連れて行った。千川は興奮しており、「おれはネットで調べてきたから確証がある。終電前の井の頭公園は、かつての池袋駅西口並みに青姦の聖地である。それに今夜はゴールデンウイークの日曜日。うかれねえわけはねえ」などと話していた。

二つ目のスポットに入ったとき、二木はあるものを見つけた。三人の男女である。女が二人、男が一人、三つのブランコを占領し喋り合っているのだ。二木はすぐさまそのブランコの向かいのベンチに座れと促し、四人でじっとその男女を観察した。
なにを話しているのかは聞こえない。しかしどうも怪しい。女、男、女の順で、男を挟むようにしてブランコに座っているのだ。二木はそれを見つめながら「これはする、確実に青姦する。」と確信した。「おまえら、張り込みは刑事の基本ですよ。動きがあるまでじっとしてろ」

10分ほど経ったころ、ここで四人の意見が対立する。
小林がまず「つまらない、探しに行こう」と立ち上がった。
米田がそれに乗っかった。
二木は諭す。「待て、これは確実なんだよ。奴らは100パーセント青姦を始める。だからまあ座れよ」
千川はどっちに傾こうか悩んでいる風だった。
二木は皆に言った。「鮎の追い込み漁を知らないのか。網をぶんぶん振ってたってしかたがないんです。網をセットして、こちらは竹で石を叩いてその網に追い込めばいいんです。奴らは鮎です。確実に青姦をします。」

しかし小林は聞き入れなかった。立ち上がり、行こうとする。米田がそれについていく。じゃあおれも、と千川も立ち上がった。二木が提案する。「わかりました。じゃあわたしはここにいますから、15分。15分経ったら戻ってくるように。」
15分というのは何かと言うと、このときこの四人の中で携帯の電源が残っているものは一人しかいなかった。つまり電話で互いに連絡を取り合うことができない。この広い暗闇の中で連絡が取れない状況というのは遭難である。故に15分。ないしは20分。経ったら必ず戻ってくること。その約束だけは守ってくれと二木は提示したのだ。

三人の背中が暗闇に紛れて見えなくなる間際、行動が起こった。3人の男女の会話が二木の耳に届いた。「ピンクローターは?」「じゃあバイブは?」という会話が聞こえた。「何回イクか」「イっちゃうよ」などの猥談が漏れ聞こえてきた。卑猥な話をして笑い合う男女。
「やはり黒だったじゃないか!馬鹿野郎ども。なんでおれを信用しなかったんだっ。バカっ。バカっ!」

「もうそのときは走って米田の肩を掴みに行こうと思いました。距離にして80メートルくらいでしたよ。でもこちらが大きいモーションで動くと怪しまれますから、それに15分でみんな戻ってくる。尾行するのは、青姦を探すのはそれからでも遅くはないと思いました。」

二木の思惑通りそれから5分ほど猥褻な話をしていた3人の男女はようやくブランコから立ち上がり、二木の目の前を通り過ぎて先ほど小林、千川、米田が消えて行った方向へ向かって行った。
「ちくしょう!はやく戻ってこい!はやく!なんであいつらどっか行きやがったんだ!バカ!って思いましたけど、こっちはどうしようもないですからね。こっちだって一人ででも尾行はしたい。でも自分で提案した約束を自分で破ることほど不義理はないですよ。だから僕は待つことしかできなかったんです。友達を優先したんです。」

それから10分、20分。一向に戻ってくる気配のない小林、千川、米田。二木はたまりかねて走ってセブンイレブンまで行って酒をもう1缶買ってきた。それからまた10分、20分...。買った酒はもう飲み干した。タバコを吸う。吸って闇を見るしかすることがない。寒い。冷えてくる。まだか。まだ戻ってこないのか。もう帰ったんじゃないのか?それともさっきコンビニに走っていった間にもどってきてたのか?わからない。待つしかできない。寒い、寒い。膝を組み両腕を折りたたむようにうずくまっている。おれは明日も朝から仕事なのに、こんなところで何をしているんだ。25分、30分...。

およそ40分、50分ほど経ってからようやく小林、千川の二人が現れた。二木は怒鳴った。「おまえら、走れ。並べ。膝をつけッ。ふざけるな。」

ひとしきり激昂したあと二木は「米田はどうした」と聞いた。これに小林と千川はうろたえる。「すいません。見失いました。」

二木、再び激昂。「どうしておまえらはそんなに周りが見えなくなるほどドスケベなのか」を問うた。胸ぐらを掴んで問うた。

米田!米田!と歩きながら闇夜によびかけた。するとヌッと米田は現れた。流石に犬猫とは違う。人間は呼べば現れるのだ、というようなことを二木は考えた。

「ずっと何十分もディープキスを見ていた」と米田は答えた。「小林と千川が離れていくことは気づいたが、絶対にこれはヤると踏んだので、単独で張りこむことにした」
どうしてこいつらはお互いの連絡が取れない状況なのにこんなに楽観的にいられるんだろう?と二木は思った。

・使用済みのコンドームを見つけた(小林、千川班)
・ディープキスをしまくるカップルを見つけた(米田班)
・ドスケベな話をする女2男1の団体を見つけた(二木班)
この日の成果はこれだけだった。しかしたしかに青姦はある。ないことではない、終電間際の井の頭公園はヤバイ、ということが知れた。

次回からは必ず携帯の充電を満タン100パーセントにしてからお互いの連携を取って行動に移ろう、ということだけは約束した。

午後12時就寝。

総括。ここしばらくの活動の成果がいろいろ発揮された一日だった。しかしあまりにもたくさんの出来事があって疲れた。あんなに楽しかった「300」での飲み会も、冷えた夜で待ちくたびれる過酷さに印象が薄まってしまった。あんまり一日でたくさんの出来事をやってもどうなんだろうと思った、そんな日でした。


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