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マギーズ東京・センター長 秋山正子さんインタビュー 〜チャリティと居心地のよい場の作り方について〜

2020年9月6日にkudan houseで開催された「NI-WA×Loidutsによる共感を広げるクリエイティブな9日間。」内で行われたトークセッション「秋山さんに聞く!居心地のよい場のつくり方と寄付のその後」を元に記事にしました。

ロイダッツチャリティショップの利益はマギーズ東京に寄付しています。がんに影響を受けるすべての人を支援しているマギーズ東京のセンター長・秋山正子さんに、お話を伺いました。

秋山 正子
(認定NPO法人マギーズ東京 センター長・共同代表理事/訪問看護師)
1950年、秋田市土崎港生まれ。県立秋田高校、聖路加看護大学卒業。産婦人科病棟にて臨床経験後、大阪・京都で看護教育に従事。実姉の看取りを経験後、91年大阪・淀川キリスト教病院訪問看護室で研修および勤務、92年より東京・新宿区で訪問看護に携わる。2001年、ケアーズ 白十字訪問看護ステーション設立。2011年暮らしの保健室開室。2016年マギーズ東京開設に関わりセンター長就任。2019年5月に「第47回フローレンス・ナイチンゲール記章」を受章。
山崎 亮
(株式会社studio-L 代表/ロイダッツ総合ディレクター)
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。社会福祉士。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメント、瀬戸内国際芸術祭コミュニティアートプロジェクトなど、さまざまなプロジェクトを手がける。

当日の配信は、こちらからもご覧いただけます。

ロイダッツとマギーズ東京

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山崎)チャリティショップの利益は社会的な活動に使っていただくというのが基本的な考え方で、ロイダッツでは利益をマギーズ東京に寄付をしています。

日本では2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるといわれています。日本でがんに関わるさまざまな取り組みがあるといいなと思っていたのと、イギリスで始まったマギーズセンターという取り組みが、僕は建築デザインの側面からも気になっていて日本に紹介したいと思っていました。そのときに、マギーズの活動を日本でも展開しようと思われていたのが秋山正子さんです。

ロイダッツで販売して得た利益をどこに寄付をするかと考えたときに、マギーズ東京で使っていただけたらと思い、ロイダッツが始まった時にマギーズ東京さんへお声がけしました。今日は、よろしくお願いいたします。

秋山さん)よろしくお願いします。

秋山さんがマギーズ東京を作った経緯

山崎)秋山さんは、どのような経緯でマギーズセンターを作られたのでしょうか。

秋山さん)私自身は看護師ですが、仲の良かった姉ががんで若くして亡くなった経験から、家で最期を過ごすという選択をした人の支えになるような看護をしたいと思い、20年近く訪問看護をしてきました。訪問看護をしているとギリギリ最期で私たちが登場してお手伝いすることが多く、もう少し早めからいろんな形で相談支援ができる場所があるといいなと思っていたところ、既に1996年にイギリスのスコットランドで始まっていたマギーズセンターに出会ったんです。

山崎)マギーズセンターを日本にということで活動を開始されたのですね。

秋山さん)2008年のあたりから活動を開始しましたが、建物を建てたり、そこに見合った人を集めたりというのはなかなか難しいものでした。24歳で乳がんになった鈴木美穂さんという元日本テレビの記者の方と2014年に出会い、私は看護師、鈴木さんは当事者の立場からマギーズセンターを日本にという流れが加速しました。その運動がNPOとして発展し、英国に視察・研修へ。そして2016年10月にマギーズ東京に豊洲にオープンすることができました。

マギーズセンターのはじまり・世界のマギーズセンター

山崎)こちらはマギーズのロゴですね。

秋山さん)オレンジ色の家のロゴは、マギーズセンターの国際ネットワークの一員として認められて使わせていただいています。

山崎)マギーズセンターは、どのような経緯で作られたものなのでしょうか。

秋山さん)マギーズセンターは、マギー・ジェンクスさんの体験を元に作られた施設です。マギーさんは47歳の時に乳がんになりました。5年間は経過が良かったのですが、5年後に再発・転移を告げられます。お医者さんに「あと余命はどのくらいですか?」と訊くと「あと3-4ヶ月です」とあっさりと言われた。さらに、頭が真っ白になり言葉が出ないという時にもかかわらず「次の患者が待っているから廊下に出ましょう」と言われ、非常にショックを受けたそうです。

ジェンクスさんはこの経験から、病気であっても患者ではなく一人の人間として生きられる、病院と家庭の中間である第2の我が家であり第3の居場所をぜひ作りたいと当事者として思うようになり、マギーさんの夫であり世界的な建築評論家であるチャールズ・ジェンクスさんや受け持ちの看護師であるローラさん(現在のマギーズCEOの方)に相談し、マギーズセンターが実現する運びになります。

山崎)マギーズセンターは世界中にあるんですよね。

秋山さん)現在マギーズ国際ネットワークは、英国内に22箇所とオンラインセンターがあり、その他に香港・東京・バルセロナ・オンラインセンターとだんだん広がっています。

マギーズセンターの建築と環境にはマギーさんの願いが非常に込められています。建築デザインは非常に自由で、22箇所のマギーズセンターの建物はそれぞれがとてもユニークですが、中はとても落ち着いています。

マギーズセンターと建築

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山崎)マギーズセンターは、世界各国の著名な建築家が設計を担当されています。それはマギーさんの旦那さんが「チャールズ・ジェンクス」という有名な建築評論家で、世界に建築家の友達がいたからなんです。日本にも何人も仲の良い建築家がいて、黒川紀章さんが設計したマギーズセンターもあります。

建築の設計は自由だけど方針は決まっているんですよね。建築家が自分の自己表現として作りたい内容と、マギーズという取り組みについてしっかり理解した上で設計していく仕様のバランスをとって表現されているので、同じ建築家が他に建ててきたものとだいぶテイストが違う空間になっていることが多いんです。

そこが僕は建築のデザインに興味があった人間として、建築家の良心が、マギーズの仕組みによって建物に現れているなという印象があります。

秋山さん)ホームページで「マギーズの”希望をもたらす建築”」という冊子を販売していますので、気になる方はぜひみていただければと思います。

マギーズ東京について

山崎)マギーズ東京についてお教えください。

秋山さん)マギーズ東京の建物には木をたくさん使っています。本館のテーブルは樹齢300年のアフリカンチェリーの一枚板を使用しています。奥には、障子を使った和のテイストが入っている個室があります。障子を締め切ることはあまりなく、オープンな状態でお話を伺っています。アネックス館にも日本の木がたくさん使われています。

山崎)マギーズ東京はどんな方がご利用されていますか?

秋山さん)マギーズ東京には、がんと共に歩むご本人だけではなく、ご家族や友人・同僚やご遺族といった方々、また医療者や専門職の方にもいらしていただいています。新型コロナウイルス感染症が流行する前は毎月500人くらいの方にご利用いただいていましたが、今は少し減っています。ちなみに2016年の設立から4年間で累計約2万2,000人の方が来訪しました。

山崎)利用料はかかるのでしょうか?

秋山さん)がんの治療に伴い支出が増えて、収入が減る方が多いですので、マギーズセンターの基本方針として相談やプログラムは無料で行っています。がんに限らず、より良い社会を作るためにはチャリティが必要と思い、なんとかここまで活動を継続しています。

マギーズのスタッフは10人ほどですがそのほかにたくさんのボランティアの方に支えられています。様々なグッズを作って販売したり、寄付を募って活動を継続しています。

山崎)相談の時に大事にされていることは、どんなことですか。

秋山さん)相談時には「自分らしさをエンパワメントする」ということを大事にしています。こちらが全て答えを出すのではなく、相談に来られた方自身が自分の力に気づいてまた歩めるようにというスタイルです。

専門職のスタッフは、利用者さんとの対等な立場である対話を非常に大事にしています。利用者さんが「ありのままの自分」を出せる場所になるよう心がけています。

山崎)マギーズ東京は、どのようにすれば利用できますか?

秋山さん)予約なしでのご来館というのが原則でしたが、現在は新型コロナウイルス感染症予防対策のため事前連絡をいただいています。そのほかに電話やメール、オンラインでもマギーズ東京の看護師や心理士と話ができますので、お気軽に連絡いただければと思います。また、オンラインでのグループプログラムも開催しています。

山崎)英国のマギーズセンターのプログラムでおもしろいなと思ったのは、奥さんががんになって亡くなられると、旦那さんは子育ても含めて料理から何から家事を全てやらなければならなくなるので、男性のための料理教室などをやっているということです。この話をきいて、すごく行き届いているなと思いました。

秋山さん)マギーズ東京では、男性のみのプログラム(チャールズクラブ)を月1回行なっています。

山崎)がんにまつわることを考えるといろいろな要素がでてきますから、困ってる方々がいるならグループプログラムでも支援をしていくわけですね。活動を展開していくためには、資金がある程度必要になってきますね。

マギーズセンターの寄付について

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山崎)マギーズ東京に寄付をしたい場合にはどうすればいいですか?

秋山さん)お電話いただくか、ホームページを見ていただければと思います。

ロイダッツのように、マギーズセンターのことを思ってチャリティをしていただいて、その収益を寄付いただくスタイルは本当にありがたいです。大掛かりではなくても、例えばバースデイドネーションで集めたものを届けにきてくださる方もいます。バースデイドネーションは、お誕生会の時に「プレゼントではなく寄付をしたいのでそのつもりで来てね」という形で友人を誘って、ちょっとしたカフェ風のパーティを開くものです。

山崎)いい誕生日の祝い方ですね。皆さんの中でマギーズを応援したいなと思われた方は、小さな自分ができる範囲でぜひ活動を起こして、マギーズ東京と関係を持っていただけたらありがたいなと思っています。

秋山さん)もう一つ事例を紹介させてください。この間、がんで亡くなられたある方からマギーズ東京に遺産の一部を寄付いただいたんです。

資産は、相続するのではなく社会に還元したいと考え、がんに関係する寄付を受け付ける団体をいろいろ調べていたそうなんです。その際にマギーズの資料を見て「こういうところが増えてきたらいいわね」と言って、亡くなる前の段階で弁護士さんと相談して、遺言書にマギーズ東京に遺産の一部を寄付する旨を書いてくださったそうなんです。亡くなられて、弁護士さんから連絡が来たのですが、そういう使い道も爽やかでおしゃれで、すごいなと思いました。

相談支援の場所を居心地よくするために

山崎)最後に、すでにある相談支援の場所を、少しでも居心地よくするための工夫があれば教えていただけますか。

秋山さん)窓があって、自然光が採れるところがある方が望ましいと思います。それがもしなかったら、密閉された閉鎖空間ではなくて、少し小さな絵を飾るとか、お花を置くとか、それだけでも随分と変わるかなと思います。多分、相談をしに来た人だけじゃなくて、受ける側も気持ちが柔らかくならないと、相談者は話そうと思わないと思うんですよね。

山崎)相談支援がうまく進まないですもんね。

秋山さん)それと、机と椅子の位置を、四角四面ではなくて、ちょっと斜めにしてみたり、クッションをカラフルなものにしてみるとよくなると思います。

山崎)マギーズ東京には色んなヒントがあるのではないかと思うので、東京に行く機会があればぜひ見に行っていただければと思います。


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二人の間に飾られた色鮮やかなお花は、トークセッションの当日にマギーズ東京で秋山さんが摘んできてくださったものです。地域の方々と一緒に花畑をつくって育てられたお花は、マギーズ東京を訪れる方の気持ちを安らげてくれることでしょう。

秋山さん、この度は貴重なお話をありがとうございました。

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