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インドで社会学をする:第2セメスター

9月から第3セメスター(以下3セメ)が始まった。夏休みはインドの独立記念日/日本の終戦の日から9月1週目までの3週間弱だった。

第2セメスター(以下2セメ)が終わる頃に、大学当局から「3セメはハイブリッド授業になるから、インドに行く準備をせよ」との通知が届いた。しかしながら、「大学構内/学生寮に入るためには最低1回以上のコロナのワクチン接種済みであること」が要件だった。私はその時分に、ワクチンの接種はおろか、予約も始まってなかった。準備をせよ!の号令がかかっても、行けない。ワクチンを接種せずに行くのはあまりに危険だし、オンラインで授業もすることだし引き続き日本で授業を受けている。

さて、2セメが終わったので授業の記録だ。


2nd semester

2セメの序盤は教員・学生ともに体調不良での欠席が相次いだ。

4月2週目からオンラインで授業は始まったのだが、5月上旬までは突然休講の連絡が来たり、他の授業でコロナになった教員の状況が伝えられ「先生たちの回復を待ってくれ」と言われる事態だった。教員の家族が体調不良になってしまって、授業ができないこともあった。先生たちは何も悪くないが、先生たちから「授業が止まってしまって申し訳ない」とメッセージが届くこともしばしばあった。

「春休み期間中はどうだったか?」と先生が授業最初に聞くと、「コロナになったよ」と伝える学生がいた。インドでワクチン接種が開始すると、副反応で休む学生もいた。

期末試験の日程とシラバスは決まっているから、授業が再開してからは大忙しだった。土曜日にも追加の講義をしたり、1日の授業時間を延長したりした。そのため、最初に設定されていたタイムテーブルは最後にはほとんど変わっていた。

誰も悪くない。世界中がこんな状況なんだろうなと思った。1セメからドロップアウトした学生もいて、2セメの人数は最初期の約半分になった。


授業概要

▷ 期間:2021年4月6日(火)〜 2021年8月13日(金)

▷ 中間テスト(Mid semester exam):エッセイorレポート提出

▷ 期末テスト(Final exam):2021年8月第2週目/最終提出課題8月19日〆

▷ 平日の授業:毎日3時間〜4時間/土日の授業:補講(個人相談)

▷ 必修の科目:Research Methodology-2, Modern Sociological Theory, Introduction to Human Rights, Rural Society, Self-Study Project


各授業の内容

▷ Research Methodology-2

【テスト・課題】期末テスト、Research Proposalの提出、Research reportの提出

・Theory:質的調査/量的調査の概要、質的調査の各種調査方法(Case study, Focus group discussion, Content Analysis, Document Analysis, Survey Method, In-depth Interview,  Oral History, Participant Observation)

・Method:研究計画書の書き方、研究の進め方

・Statistics:量的調査の各種概念(Variable, Hypothesis, Validity, Reliability, Generalizability)と調査方法、SPSS

SPSSの使い方とそこで使われている計算方法を習った。これはなかなかいいなと思った。もっと練習して、自分の研究に使えればいいのだが、私の調査で輝けるときが来るかは不明だ。全体的には1セメの続きだった。

私のこれまでの研究計画は現地調査が前提のものだったから、この機会に対象を変えず、現地調査を伴わない計画でリサーチプロポーザルを書いた。少しだけそれをやってみて、調査報告書を書いて提出した。短期間で作った割には悪くなかったと思っている。

▷ Modern Sociological Theory

【テスト・課題】中間提出課題、期末テスト

・Structural-Functionalism, Conflict-Critical Theory, Symbolic Interactionism, Phenomenological Sociology, Theories of Rational Choice, Practice Theory, Post Structuralism,,,

タルコット・パーソンズとロバート・マートンからミシェル・フーコまでだ。グラムシやアルトゥザー(アルチュセール)、シュッツ、ハーマンは名前を知ってるだけで詳しいことを知らなかったからちょうどよかったが、まぁ難しかった。他にも初見の人が出てきた。

なんでこんなに自分はできないのか、と思わされるくらいにテストはボロカスだった。授業点しか頼りにできないが、授業点は全体の10%だけだから、ほとんどダメだ。理解してると思ってたんだけど、勘違いだった。

▷ Introduction to Human Rights

【テスト・課題】中間提出課題、期末テスト

・Human Rights - Concepts, Theories of Human Rights, International Human Rights System, Human Rights and Duties in India

人権に関する全体的な概念を確認してから、各種理論(Natural Rights Theory, Positivist/Legal Theory, Marxian Theory, Utilitarian Approach, Sociological Theory of Rights)、国際機関の役割、人権に関する条約、インドにおけるHuman Rights の歴史と現在的な状況を網羅する授業だった。

今回初めてきちんと「Human Rights / 人権」の勉強をした。当たり前なんだが、「人権」と「道徳」は違う。自分を棚に上げていうことでもないが、日本はほとんど人権教育はできていない。小学生の時に「人権ポスター」とか書いたよな。。。あれは「人権教育」でもなんでもないぞ。道徳の授業の作業だ。。。日本は日本国憲法があるため、国連などの人権に関する国際的な条約には大変消極的だ。授業中に「日本はHuman Rightsに関してはいい国でしょ?」と言われるたびに居た堪れない気持ちになった。日本に人権なんてないよ、とも言えないし、どうしたものか日本政府、というところだ。

▷ Rural Society

【テスト・課題】期末テスト、プレゼンテーション、映画分析の提出

・Village Studies in India, Agriculture & Social Structure, Politics and Power Structure, Rural Development

農村部のインドに関する歴史と現在の状況に関する授業だった。欠かせないポイントとしては、Green Revolutionとマルキシズム的な農村社会の理解だった。レーニンや毛沢東を特に読んだ。インドにおけるPeasantsのClassificationやCaste、Class structureとPower structureなどインド農村社会を理解する上で必須事項となることを勉強した。

映画分析は《Mother India》でやった。ペアの学生と一緒に話し合いながら、レビューするものだった。ペアの学生には、映像の中で私が理解できなかった部分を教えてもらって、大変助けてもらった。

▷ Self-Study Project

・自分の研究を進めること

・期末課題: "COVID-19 and neighborhood relations" に関して8〜10枚のエッセイを提出

自分の研究報告は研究法の授業でやった。課題のテーマに沿ったエッセイを書いて提出した。日本の現状を述べることとプレ・コロナとコロナ禍における "Social rekations"/ "Social interactions"の変化の有無とそれぞれのの概念そのものを考え直すことに関することを書いた。


感想と覚書

とりあえず2セメは終わった。全体的に成績は悪いだろう。良くできたテストもあったが、ボロカスなものもあった。最近、Netflixでインドドラマ「コタ・ファクトリー」を見たのだが、この私の勉強量では受験戦争を乗り越えてきたインド人学生らの相手にもならないなと思った。どんなに授業を頑張っても、期末テストがダメだったらダメなのだ。嫌なシステムだが仕方ない。

3月26日に1セメが終わって、2セメが4月6日に始まったから、春休みは10日だ。今後もおそらくこの程度の長期休暇なのだろう。

プレゼンテーションを授業でやったが、あまりいい時間ではなかった。問題は何よりもネット環境だ。学生たちの発表はよくできている人たちのはよかったが、ネット環境が悪い人たちは音声が途切れ途切れで何を話しているのかわからないくらいだった。フリーズしたのに気が付かず、話を進めてしまって、聞こえなかったから元に戻る、それの繰り返しだった。そのため設定時間を大幅に超えて発表する学生もいた。お互いによくない。

学生の発表もそうだが、資料も配布されず、カメラもオフで声だけで授業が進んでいく先生の授業も苦痛だった。先生は準備した資料を音読しているため、途中で話をブチギって「〜〜の部分がわかりません」とは言えない。言おうとした時にはその話は随分前に終わっている。もちろん私の英語力にも問題があるが、どうもその先生の授業のやり方には私はついていけなかった。お互いに準備不足か。

3セメはハイブリッド型の授業形態になるようだが、今のところ、オンラインでやっている。インド人学生の中にも、「ハイブリッドでやるなら、実家でオンラインでやるよ」という学生もいる。そういう学生たちが口にするのは「寮で感染しそう」問題だ。というのも、大学の寮でのクラスター発生は前回の第1波・第2波でインドも経験済みだからだ。インドは広い。遠路はるばる大学を目指す人ばかりであるから、寮でクラスターが発生して、寮が閉鎖されたら、突然行き場がなくなる。そんなことを考えると、大学に行くのも慎重になる。

今インドは第3波の入り口と言われている。第2波のようにひどくなる可能性もある。どうなるかはわからない。神のみぞ知る、か。。。いろんな神がいるがどの神が知ってるのか。。。

あと2つのセメスター、つまり1年でインド留学を終えることになる。修了するまでにはインドには行けるだろう。インドに出かければ世界観変わる!人生変わる!何か見つかる!というのは嘘なので、準備を整えてインド生活に臨みたい。その後のことも心を決めて、各方面と連絡を取り合うことを3セメのうちにやろう。学会費も払わなきゃだな。論文も書かなきゃだな。


▷1セメの話


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