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インドで社会学をする。

3月末で1stセメスターが終わった。春休みはたったの1週間半だが、4月2週目から2ndセメスターの初回授業が順番に始まりだした。1セメはまぁまぁな感じの成績だったので、2セメはどのクラスもなるべく上位に食い込めるくらいに気合を入れてがんばりたい。というわけで、1セメの記録だ。


どんなところに所属しているか

今、インドの大学院で社会学を専攻している。School of Social Sciences, Centre for Studies in Society and Development, MA. Sociology になる。2年修士のコースだ。

私は学部時代から人類学anthropologyをやってきた。今も人類学をやっていて、社会学に転向したわけではない。文化/社会人類学をやるためにSchool of Social Scienceにいる。

付け加えておくと、私は奨学金で留学しているため、私の希望とインド国内の公立大学の留学生受け入れ状況との兼ね合いにより大学が決まっている。アーユルヴェーダやヨガ、舞踊、音楽やタブラ、言語、IT分野、開発分野、農業分野ではないが、インドに留学することはできる。

授業中はずっと英語だ。学生同士で話をするときやグループチャットも英語だ。みんながみんなヒンディー語ネイティブなわけではないため、ヒンディー語が授業中盛んに飛び交っていることはない。また、ずっと英語で授業は進むため、英語を学びたい場合、欧米諸国の大学に行かなくてもいいとも言える。弊害としては、大学では英語が主言語なため、ヒンディー語などその他言語を習得するためには気にしていなければ、インド英語のみを習得してしまう。


1st semester (Monsoon 2020-21)の始まり

2020年5月中旬に合格通知がきて、もともとは2020年7月中旬までに大学に来るようにとのことだった。しかし、感染症拡大によりインド大使館は学生ビザの受付を中止した。そのため「留学待機状態」になった。大学も一時的に閉鎖され、授業は始まらなかった。

10月ごろ、オンライン授業開始の通知が大使館を経由して届いた。11月からオンラインでの授業が始まるとのことだったが、タイムテーブルもシラバスも知らされず留学生課に問い合わせるも「待て」との指示しかこなかった。不安しか募らない。

しかし1週目が明けて、ディワリが終わった翌週、一気に授業がはじまりだした。これまで「待て」しか言わなかったのに、ディワリが終わったら突然始まるのかよ、とほほ、、とは思ったが、いかにディワリが起点になっているかもわかった。

ディワリとホーリー、独立記念日にガンディーの誕生日が年末年始より大事だ。大学が休みになる祝日は大学のある州や地域の休みに準じている。日本の祝日のように全都道府県で祝日が同じなわけではない。

この祝日の感覚が1stセメの間はなかなか習得できず、「なんでこんなところで休みなんだよ」「なんで12月30日まで授業なんだよ」とイライラした。12月30日は学生たちのほとんどがボイコットしたため、授業開始数分で参加した数名と年末の挨拶をして終わった。


1st semester (Monsoon 2020-21)授業

期間:2020年11月19日(木)〜 2021年3月26日(金)

中間テスト(Mid semester exam):2021年2月第1週目

期末テスト(Final exam):2021年3月第3週目/最終提出課題3月25-26日〆

平日の授業:毎日3時間〜4時間/土日の授業:補講、個人相談

必修の科目:

Research Methodology-I [RM-1], Classical Sociological Theory [CST], Understanding Indian Society: Caste Structure/System and Change [UIS], Sociology of Gender [SoG], Self-Study Project

1週間のタイムテーブル:

月曜=SoG, UIS/火曜=RM-1, CST, UIS/水曜=SoG, RM-1, UIS/木曜=RM-1, UIS, SoG/金曜=CST, RM-1(Statistics)


各科目の内容

> Research Methodology-I

研究法の授業では3人の教員が担当していた。Theoryは水曜、Methodは火・木曜、Statisticsは金曜だった。3人が別々で授業を展開していくが、期末テストは1つ。テストに加えて、エッセイ課題1つとプレゼンを1回した。

・Theory:「社会科学とは何か」「知識とは」「Realityとは」から始まる基本的な事柄

・Method:研究方法、研究計画の立て方、論文の配置

・Statistics:Consumer Price Index, Correlation/Regression analysis

学部時代から統計を避けてきたため、統計はすごい勉強した。ソフトあるのに手で計算する意味あるんか?と思ったがたくさん計算した。しかし、期末テストで計算問題でなくて悲しかった。加えて、私の英語の筆記体読むの苦手問題が浮き彫りになった。統計の授業で先生が画面にペンで書きながら説明してくれるのだが、その字が読めん。。公共性を高める意味でも、タイピングした資料を何かしらで渡した方がいいと思った。


> Classical Sociological Theory 

・社会学の起源、Comte, Durkheim, Marx, Weber.

フランス革命前後から始まり、封建社会、資本主義の起源を一通り復習してから、コント〜ウェバーまでの主要文献を読む。中間テストは小論文を2つ、提出課題は5~7ページのエッセイを1つ、そして最後に期末テストだった。

社会学の起源やマルクスはあんまり勉強できていなかったため、改めて勉強できてよかった。ちょうどNHKの「100de名著」で『資本論』をやっていたので、それも合間ってマルクスに想いを馳せることができた。また、この辺りの古典的な事柄は日本語の参考書や翻訳書が出ていることもあって、ずいぶん助けられた。登場するたびに悩まされるデュルケムとヴェーバーには今回もまた悩まされた。


> Understanding Indian Society: Caste Structure/System and Change

・Caste Structure / System

・G.S Ghurye, B.R. Ambedkar, Irawati Karve, N.K. Bose, M.N Srinivas, Louis Dumont, S. C. Dube

・インドにおけるヒンドゥー教と仏教の比較、バクティ運動

カースト、ジャーティの話から始まり、インド社会を理解する上でのこれまでの流れを説明する授業。中間テストが小論文2つ、提出課題が1つ、そして期末テストだった。

まさにインド社会学だった。難しかった。古典的な社会学に関することは日本語で山ほど資料がある。他方、こちらは全然翻訳されていないため、配布された論文と文献を必死に読んで授業に挑む他方法はない。それでいいのだが、それが大変だった。日本でも読まれている、アンベードカルやシュリーニヴァース、デュモンは改めて英語で読むことができ、授業内で資料ももらえてよかった。


> Sociology of Gender [SoG]

・Basic concepts in gender studies(Gender roles, Socialization, Gender stereotype, Sex/Gender Debate, Androcentrism, Patriarchy, Multiple Sexualities)

・First wave から Third waveのフェミニズムの展開とそれぞれの批判(John Stuart Mill~Simone de Beauvor~Black Feminism~Judith Butlerくらいまで)

・インドにおけるジェンダーに関する運動とこれまでの経過、現在の課題(Caste, Dalit Women, LGBT movements, Women's Reservation, Disability, Development, Violence, Globalization, インドの家族計画や土地の所有権、ダウリー、サティ、生殖技術の発展による影響など)

中間テストは小論文2つ、提出課題は2つ出した。期末テストはSecond wave以降の内容から出題された。プレゼンをやる予定だったか、全員がオンラインでのプレゼンをすることはハード面で困難だったため、ブックレビューの提出になった。

ベーシックコンセプトは辞典の丸暗記。フェミニズムの展開は日本で勉強したのと同じ感じでバトラーの『ジェンダー・トラブル』は事前準備をして授業内ディスカッションだった。読んできてない人もたくさんいたため、読んでいる人たちだけが盛り上がる感じだった。インド社会でのジェンダーに関する運動と経過はインドの現代社会を知っていないと難しい。キーポイントになっているレイプ事件や女性活動家、団体、トライブの状況などは知っておく必要があった。難しかったのは難しかったが、最終成績が自分でも驚くほどよかったため嬉しかった。


> Self-Study Project

・自分の研究を進めること

・期末課題: "Issues and Concerns of Online Education during COVID-19 period" 7〜10枚のエッセイを提出

自分の研究経過を発表せよ、的なことはなかった。他の授業中に「あなたの研究テーマならこれはどうなる?」とか、研究法の授業で「あなたの研究だと何が必要?」と言われるくらいだった。おそらく今後次の展開があるのだろう。


1st semester 感想と覚書

毎日授業があるのは学部時代以来だ。突然休校になって拍子抜けしていたら、エッセイの提出期限が知らせされ大慌てで取り掛かることになったり。学生らしいといえば学生らしい。

前半の授業は10時〜13時、後半の授業は14時15分〜18時15分までだった。時差は3時間半だから、前半の授業は13時半からの開始。後半の授業は17時45分〜最長で22時までだ。授業時間が後半の日は、朝から夕方までバイトに行き、帰宅後授業を受けていた。

時差があってよかったことは、体感時間として提出期限の時間が3時間半伸びることだ。こんなことよくないが、25日締め切りの場合、日本時間で26日朝3時半締め切りになるため、ややみんなより長い時間があるような感じがする。しかし、1日24時間なのは変わらないから、意味はないし、早く取り掛かれば「あぁあと3時間あるんだ」と思わず済む。

時差があってミスをしてしまったのはテストの時間だ。いつもの授業時間と同じ時間ではなく、テストはテストのスケジュールで行われる。そのため中間テストで30分の勘違いをしてしまった。上手く回答が書けてはないが提出しなければならず、提出後、何があったのか?と教員から直接電話がかかってきた。心配してくれてありがたかった。

教員も学生もよくNetwork Issueに悩まされた。声が途切れ途切れになったり、画像が止まったり。そのため、ネット環境のいい学生や教員は顔も見えるし、音声も届く。他方で、ネット環境がよくない学生や教員は各々試行錯誤の日々だったろう。こんなこともあり、各自で資料を作成してプレゼンということは叶わなかった。せめて、教員には強いWi-Fiやネット環境を大学側からどうかならないのか、と思った。

また、自分用PCを持っておらず、スマホで受けている学生もいた。大学院生にもなってパソコンがないのはきついだろうなと思うが、彼らは彼らなりに対処しているようだった。


以上が1セメのことだ。オンラインで十分できていることもあれば、フィールドワークやインターンシップ、プレゼンの科目はできないでいる。2セメはとりあえず始まった。インド大使館の学生ビザの受付も再開されたのだが、感染症は再び深刻化しており、いつインドに行けるのかがまたわからなくなった。そして、このコースを修了した後、私はどうするのかそろそろ決めないといけない段階にやってきた。いつのときもお先は眩いほどには明るくないが、どうにかなるだろうし、どうにかしなきゃなとも思う。

そんなこんなで、今日もこれから授業がある。落ち込まず、調子に乗らずまたがんばろう。


*授業の参考文献リストやシラバスが気になる方はご連絡ください。*加筆修正をする場合があります。

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