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台湾映画〈孤味〉:四姉妹物語のひとつとして

〈ストーリー・オブ・マイライフ(以下、若草物語)〉、〈海街diary〉を見て、次は台湾の女性たちの物語を見た。台湾映画〈孤味〉(英題:Little Big Women、邦題:弱くて強い女たち)。父の葬儀を機に集まった女性たちが過去を振り返りながら、現在を強く生きていこうとする話。

はなしの始まり

主人公の1人、林秀英は台南で有名なレストランのオーナーだ。彼女は夫が家出をした後もひとりで海老揚げ春巻きを看板料理に屋台を切り盛りし、女手一つで3人の娘を育てながら店も大きくした。

そんな彼女の70歳の誕生会の日に、音信不通だった夫が病院で亡くなったとの知らせが届く。病院に駆けつけたのは末娘の宛佳であり、父の伯昌の最期を看取ったのは愛人の美林だった。秀英は勝手に出て行った夫のことを許せず、離婚届も記入することなく保管していた。葬儀までの数日間、家族や夫の愛人らと過ごすことで秀英と3人の娘たちに心の変化が現れる。


林秀英(母)と陈伯昌(父)の四人娘と父の愛人

長女陈宛青は国際的なダンサー。強気で奔放な正確だが、姉妹想いの人だ。父親の葬儀の知らせとともに、自身の乳がんが再発してしまう。

次女の陈宛瑜は整形外科医だ。堅実な性格で、医者になったのも収入や賞賛のためだけではなく、離れ離れになった父親に会えるかもしれないと期待がある。自身の娘にはアメリカ留学をしてほしいと躍起になっている。

左:宛青(長女)/中央:宛瑜(次女)/右:宛佳(四女)

三女の何晴眉は幼い頃に養子に出された。実の父と母を叔父叔母と呼び、妊娠中ではあったが実の父の葬儀には参列した。本編では葬儀参列時の部分でしか出てこない。

左:宛青(長女)/中央:何晴眉(三女)/右:母

四女で末娘の陈宛佳は母、林秀英の店の経営を任されている。父親が入院した際には唯一お見舞いに行き、父親の愛人蔡美林とも交流がある。

左:母/右:宛佳(四女)

四姉妹の父親陈伯昌の愛人の蔡美林は伯昌をとても大切に想っていた。伯昌が秀英の元から家出した後から亡くなるまで献身的なサポートをしていた。秀英には恨まれるが最後には心を通わせることができる。

左:愛人の蔡美林/右:宛佳(四女)

感想

孤独の「孤」に味覚の「味」で、「孤独のグルメ」のような話の中での女性たちの奮闘物語かと思いきや、全く違った。また、台湾映画や中国映画をあまり見てなかったからか、字幕を読むのに忙しい瞬間が度々あった。カタカナで表記されている人の名前と音声として聞こえる人の名前がなんとなく一致せず、「この名前、誰だったけ?」と混乱してしまった。話の内容はそこまで込み入ってはないため、少々わからなくても大体は大丈夫だった。

私はビビアン・スー(徐若瑄)が日本のテレビに出ていた時代を知らないため、この映画で初めて彼女を見た。アイドルやタレント俳優のような雰囲気はなく、本格的に俳優だ。これが本来の彼女の仕事なんだろうな。娘を留学させようと一生懸命で、夫の浮気を案ずるも優しい姉であり母の役でピッタリだった。


四姉妹物語

〈孤味〉は〈若草物語〉や〈海街diary〉のように、服装で姉妹たちのキャラクターを鮮明に表すというよりは、各人の職業で個性を出していた。
ダンサーというと自由奔放な感じ、医者というと堅実なイメージ、親の仕事を受け継いだというと家族に忠実な感じ、というようにそれぞれの職業の印象が彼女らのキャラクターの印象となっていた。

〈海街diary〉と同様に〈孤味〉も映像がとても美しく、今すぐにでも台湾に行きたい気持ちになった。赤い提灯や照明が綺麗な台湾料理店や台湾ならでは祭壇、お葬式の様子など映画館で見たら台湾にいる気持ちになれたのかもしれない。春巻きを上げるシーンはとても美味しそうだった。

さてここまで、〈若草物語〉から始まり、日本代表として〈海街diary〉、台湾代表として〈孤味〉を観てみた。四姉妹物語の起源を『若草物語』だと考えて観れば、映画〈若草物語〉や本『若草物語』もとても偉大な作品に思う。「全ての基本ここにあり」というか。他の国にも多分それぞれ”四姉妹物語”的なものはあるだろう。また見つけたら観てみることにする。おわり。

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