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【韓国】企画展「隅田川 - 江戸時代の都市風景」:ソウル歴史博物館

先日、ソウル歴史博物館の企画展「隅田川 - 江戸時代の都市風景」に行ってきた。この日はソウル歴史博物館の常設展示とこの企画展にも行った。企画展が1階で3階に常設展示がある。常設展示については前回のnoteに書いた。

基本情報

場所:韓国、ソウル歴史博物館
   1階企画展示室
期日:2022年9月7日〜10月23日
アクセス:光化門駅7番出口、西大門4番出口

開館時間:9時〜18時(最終入場時間17:30)
休館日:祝日を除く毎週月曜日
入館料:無料


隅田川 - 江戸時代の都市風景

企画展示「隅田川 - 江戸時代の都市風景」はソウル歴史博物館と江戸東京博物館がタッグを組んだ展示会だ。東京の博物館から日本画や浮世絵がソウルにやってきていた。

展示会に向けた挨拶文や解説は日本語と韓国語と英語で書かれていた。
文字に関して面白かったことは、隅田川の四季の様子を描く浮世絵とともに正岡子規や与謝蕪村などの俳句がハングルで書かれていたところだ。

日本語の和歌や俳句、短歌を英語で読んだことがあるだろうか。
英語で読むとやや雰囲気が違ったり、その翻訳の完成度に驚いたりする。ハングルで書かれている場合も同じだ。日本語の俳句もただハングルで書いてあるだけで匂いが違うような、国際色を帯び豊かさの幅が広がったような気がした。

“어두운 천지에 울리는 불꽃놀이” 正岡子規
(くらがりの 天地にひゞく 花火哉) 

シンボルの橋

隅田川にはいくつもの橋がかかっている。

隅田川の風景は「川」と「橋」と「船」、そして「人々」で構成されており、特に「橋」と「船」は多くの日本画や浮世絵にも描かれてきた。そのふたつが画家やそこで生活する人々にとって重要なものだったのだろう、と解説されていた。

ソウル歴史博物館の「常設展示:ソウルの600年を描く」では、「門」が印象的に配置されていた。大きな門が描かれた壁の前を通り過ぎたり、門をくぐったり、ランドマークとして「門」があった。

ここでの私の気づきとしては、江戸(現在の東京)では「橋」が、漢陽(現在のソウル)では「門」が人々の生活には欠かせない建造物であったことだ。

おそらくこれがヨーロッパに行けば「教会」になるだろう。
たいていの場合、ヨーロッパの街の中心には「教会」がある。教会を中心に放射線状に街が広がっている。

脱線するが、これはインドだとどうなるのだろうか。ヒンドゥー教寺院だろうか?モスクだろうか?山だろうか?モニュメントだろうか?はたまた、市場だろうか?地域やそこで構成されているメンバーによって違うだろうが、東京やソウル、ヨーロッパとはまた異なるランドマークがそこにはあるのだろう。

「門」と「橋」について考えたい

「門」と「橋」で共通する事柄といえば何か。
まずは「区分け」ではないだろうか。
町と町、住人と住人、行政組織を分ける「区分け」だ。

単純に考えると、このような場所には「関所」のようなものができる。門番やお役人が橋や門の前に立っていて、通り抜けようとする人に通行許可を与えたり、通行許可証を提示させたり、通行料を請求したりする。「門」と「橋」はどちらもランドマークになっており、どちらも同じ役割を果たしていることが想像できる。

それでは、町のランドマークになるための条件とはなんなんだろうか?
古くからランドマークになっていたところはお役所仕事があるところなのだろうか?何かしらのシンボルなのだろうか?どうしてそこが町のシンボルになりえたのだろうか?ランドマークになったところと、なっていないところではどんな違いがあるんだろうか?
条件のひとつに「人が通ること」があるだろう。
以上のことがらは今後考えることとしよう。

ひとつのヒントとして、私のためにも私の好きな本のURLを貼り付けておこう。
マルク・オジェ『非‐場所:スーパーモダニティの人類学に向けて』だ。

企画展示の話に戻ろう。

光が示す展示の方法

最近の展示方法の流行りは光を巧みに使ったものなのだろう。

隅田川を描いた日本画の展示の中にはもちろん細長い巻物が広げて展示されているものもあった。巻物を広げて、下から照明を照らす。その照明は太陽が登った昼の時間と夜の時間を演出しているような照らし方で、照明が真っ暗になると点々で照明がてらされ、星のようにパッと光る。

最初、突然電気が消えてしまって、間違えてどこか押しちゃったかなと思ったが、時間で切り替わるようだった。壊れてなくてよかったと安心したと同時に、こんな照らし方するんだなと思った。

もうひとつ印象的だったのは、大きな壁に写されたプロジェクションマッピングのような展示だ。隅田川とその近辺の地図の日本画が映し出されており、壁をタッチすると解説が出てくる。例えば、映し出されている地図の「日本橋」のところをタッチすると、日本橋の解説が浮かび上がってくる仕組みになっている。

こういうタッチパネルの解説は最近よくあるが、何がびっくりしたかというと、このサイズだ。大きな壁一面でこれをやっている。
単純にタッチして大きな絵が動くのは楽しい。
一方で大きな壁であるために、タッチしたら一歩下がらないと全貌を見るのはやや難しい。タッチしたら二、三歩下がって、解説を読んだり絵を見て、また壁をタッチして画面を切り替えるとより楽しめるようになっている。

ちなみに、この大きな壁に映像を映し出して壁(絵)をタッチすることで解説を表示したりさせる展示は常設展示の中にもあった。

おわりに

韓国に来てまさか日本画や浮世絵を見るとは思わなかった。常設展示とは異なり企画展だけあって、平日の夕方にも関わらず人は結構入っていた。

韓国の人たちが日本から持ち込まれた作品を見てくれているだけでも嬉しい気持ちになるし、人のいないすっからかんの展示室ではなく割と人が入っているのは自慢げな気持ちにもなる。

展示自体も楽しく、ソウルで江戸時代の隅田川周辺の歴史を勉強することができた。いい展示会だった。企画展示室の前に企画展示のアンケートボックスがあり、アンケートに答えたらお土産がもらえるようだったんだけど、アンケートの答案を書けるほどの韓国語能力がないため諦めた。やや惜しいことをした。おわり。

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