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「トイレ訴訟」とひとつ前の記事

前回の記事(2023年7月10日投稿)で歌舞伎町タワーの「ジェンダーレストイレ」のことを書いた。どうやらちょっとタイムリーな感じだったようで、今日は「トイレ訴訟」の判決が出た。なんとなく続きを書くことを求められているような気が勝手にして、日記を更新している。

「トランスジェンダー職員 女性用トイレの使用制限は違法」

経済産業省にお勤めのトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレを使用することを制限されていた。原告はこれを不当であるとし国を相手に裁判をしていて、今回、最高裁は国の対応は違法だと判決をくだした。

詳しい内容は以下のリンクから見ていただければいい。
争点は「トイレの使用制限は問題ないと判断した人事院の判定が違法かどうか」であり、「性同一性障害と診断され、女性として社会生活を送っている経済産業省の50代の職員は、執務室があるフロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用が認められず」にいたという話だ。

私の見解を先に述べておくと、この判決は妥当だと私も思う。
今後この原告の方が職場内でトイレの行き場所に困らなくなればいいなと思う。

「ジェンダーレストイレ」と「トイレ訴訟」の違いは何か

前回の記事で「歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレが怖い」って言っていたやつが、この判決には妥当だと思うって変じゃないか?と思われるかもしれない。

これらふたつの事例で私が気にしているのは、そこがどんな場所であるか、ということだ。
<周囲は全くの他人だらけで、居酒屋スタイルの飲食店で飲酒も伴う食事をしている場所> と <周囲の人はすでによく知っている同僚らであり、仕事をする場所である職場> とではその場所性は全く異なる。

前回の記事の最後は、「まずは治安を良くすることからでは?」ということを書いたが、居酒屋が治安が悪いということを言っているわけではなくて、職場であってもレイプや盗撮、セクハラが横行するような職場では、このような判決は下らなかっただろうと思う。
その意味でこの判決の個別性の部分はとても重要な部分だろう。

Twitterの引用リツイート

このニュースの引用リツイートやリプライを見ていると「心が女だって言えば男も女性用トイレに来るようになる。地獄だ。」みたいな感想があり、この争点とは違うお門違いな反応だなと思った。

ここの争点はそこではない。
長年一緒に同じ場所で働いている同僚への信頼もあるだろうし、だからこそこの事例の個別性が大事なのに。

しかし同時になんでこんな発想になるのか?とも思った。
こういう発想になるのは、つまり、これまでの女性への痴漢やセクハラ、レイプが適切に罰せられてこなかったところに問題があるのではないだろうか。

女性ジャーナリストレイプ事件

2015年に元TBS報道局記者の山口敬之がフリージャーナリストの伊藤詩織さんにレイプをした。この男性は準強姦罪で訴えられたものの、2016年に嫌疑不十分で不起訴処分となった。その後Metoo運動やいろいろがあり、2022年7月の判決でこの男性が同意なく性行為に及んだことが認定され、この男性の賠償が確定した。

元自衛官の性被害事件

最近のニュースで言うと、元自衛官の五ノ井さんの性被害事件だ。
彼女は自衛官時代に性被害を受け、強制わいせつ罪で訴えた。しかしながら、当の訴えられた側は「笑いを取るためだった」とあろうことか無罪を主張した。

修学旅行中の盗撮事件

大人になってからの被害だけではもちろんない。
修学旅行中の露天風呂で、女子生徒らが男子生徒らに盗撮された事件もあった。

この3つの事件からも分かるように、女性たちがいろんなところで性被害に遭っている。それでいて、明らかに悪い男性が自ら反省したり法によって罰せられたりするに至るには時間がだいぶかかる。

今後のトイレの目指すところは

最近の女性の性被害事件の話題になったものを見てきたが、こういう事件がきちんと処されないことの積み重ねが「トランスジェンダーの人に襲われてしまう」みたいな妄想を生んでしまうのではないだろうか。
前回同様、まずは治安を良くすること、とも言えるか。

LGBTQの話をすると、「トイレはどうする?」「温泉はどうする?」とかを一番最初に問題として取り上げる人がいるが、その話とLGBTQの人びとを含むどんな性別を持つ人でも生きやすい社会を目指すという話は全くもって次元も路線も違う話だ。

今回の「トイレ訴訟」の場合「トランスジェンダーの人はトイレ使用禁止!」って会社(ここでは経済産業省であるが)が一個人のトイレ使用を制限するのではなくて、「誰でも使えるトイレを作りましょう!」とするのが対応の仕方として正解だったのではないだろうか。

本記事の二つ目のNHKのニュース記事の後半に「オルタナティブ・トイレ」という新種のトイレが登場するのだが、これが進むのはいいと思う。
他方で、こういう時になんで男性用トイレが多くて、女性用トイレの数が男性用トイレより少なくなるのか?誰でも使える用のトイレが女性用トイレの方になんとなく組み込まれているのはなんなのか?よくわからない。全部同じ数・同じ割合を目指してほしい。

今後のトイレは「女性用」「男性用」「誰でも使える用」を同じ数・同じ割合で作ること、それを目指すことをここでは提言して本noteはおわりとする。おわり。

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